目が覚めたらクレイジーサイコレズの吸血鬼が同衾していました。

ゆっこ!

文字の大きさ
9 / 9

第九話 始まる狩猟

しおりを挟む
 新たな形の狩猟の始まり。

 それは自動人形である薄雲の強襲から開始された。
 我先へと屋内から外へ飛び出した一団に、薄雲は高速移動しつつ横合いから強襲を仕掛ける。

 その方法とは、高速移動しつつ火炎弾を一団の中心部に打ち込むことである。
 牽制弾であるため、それは別に正確である必要はない。
 ただ一瞬、目標を驚かせて、その動きと足を止められたならそれで良いのだ。

 「うわっ!」

 「ひぃっ!」

 「なんっ!?」

 「がぁあっ!?」

 轟!と怪音を発し、撃ち出された火炎弾が炸裂する。その火炎弾が地面に直撃し盛大に弾ける。
 事態に驚き、何事かと動きを止める蛇頭のチンピラたち。
 そこにすかさず勢いを付けた薄雲が接近、その御美足でミドルキックを放つ。
 横っ腹に強打を受け、たまらず蛇頭の一人が倒れ込み、もう一人も回し蹴りを喰らい吹き飛んだ。

 「こっ、こいつ!?」

 事態に気付いた一人が、吹き飛び倒れ込んだ仲間を無視し、ナイフを抜いて薄雲へと襲い掛かった。
 中々勇敢。
 だが無謀だった。

 轟!

 「ぎゃっ!?ああああっ!」

 次の瞬間、頭部に小さな火炎弾を喰らい男が悲鳴を上げて軽く吹き飛んだ。
 頭を吹き飛ばすほどではないが、顔面と双眸を焼き焦がすには十分な威力の攻撃だ。
 薄雲が近距離から放ったその火炎弾(少)を受けて、男は地面に倒れ込み転げ回る。

 「目がぁ~!目があぁ~!?」

 その悲鳴通りだろう。顔面に火炎弾を喰らって失明しないはずがない。
 もうこの男は、健常者としてはどうしようもない状況である。
 だが、私が狩って首筋に牙を突き立てる獲物としては、最高の状態だった。
 両目が見えず、もう地面を這いずって触覚に頼ってしか行動できないのだから。
 これで苦も無く私はこの男を狩れることだろう。
 さながらメインデッシュの下拵えを薄雲がした状態といったところか?

 「メイド?人形?なっ、何なんだこいつは!?」

 二人を一瞬で戦闘不能に追い込んだ薄雲の姿を見て、一団から少し離れた距離にいた男は、何とか事態を把握しようと努めた。
 とにかく状況が解らず、何が起きているのか把握できない。

 その一方、直近の危機から我が身を守るために懐から銃を取り出す。
 しかし、それを向けられるよりも早く、俊敏な薄雲は大地を蹴って西棟へと向かい、疾走する。

 「逃げるぞ!?」

 「逃がすな!」

 「追え!」

 「オウッ!」

 薄雲がその場を離れた理由は、逃げたのではなく囮になっただけなのだが、それが理解できない蛇頭の構成員たちは、そちらに向けて一斉に銃口を揃えた。

 フワリ。

 その時、東棟へと背中を向けた蛇頭構成員たちの背後に、吸血鬼少女の姿を取った私が人知れずに舞い降りた。

 シャッ!

 そう間を置かずに、私の両手袋上の付け爪が十方向へと伸び、狙い違わず男たちの太腿を貫いた。
 対象が薄雲に意識を集中させていたため、私の攻撃に誰も気付かなかったのだ。

 だが、そうやすやすと得物を殺しはしない。
 やはり吸血は生きている相手からが一番楽しめる。
 その獲物の絶望。恐怖。無駄な抵抗。諦め。
 すべての事態の推移、獲物の意識の変化を味わいつつ、その喉元から血液を吸い出していく。
 それが一番、血液を美味と感じる瞬間なのだから。

 そうして、私の伸びた爪は指先部分から分離。男たちの片方の太腿を貫いたままとなる。

 「があっ!?」

 「?…あ?」

 「何!?」

 「痛えぇぇえ!痛えよぅっ!」

 「何…何なんだ一体!?これはっ!」

 「チクショウ………チクショウ………」

 「くそがぁ!」

 「何なんだっ!」

 「こいつっ!必ず殺し………?」

 「………えっ!?」

 十人の蛇頭構成員たちが、悲鳴を上げつつ私がいる東棟側へと振り返る。
 そして、幼女姿の私と目が合い、またも、どうしてよいのか理解が追い付かず、呆然とする。
 そんな、理解が追い付かないが故の沈黙の時間が生じ、その中で蛇頭構成員たちの恐怖のみが募った。

 (ああ楽しい)

 そのようにして呆然とした者たちに、私はにこりと微笑みかける。
 そして瞳の色素を蒼から真紅へと変化させ、その口の内部にあった牙を晒した。
 吸血鬼が得物に見せる死の宣告。
 人間狩りの狩人にとって、もっとも楽しい瞬間の一幕である。

 !?

 (きゅっ!吸血鬼!?)

 (まっ、まさか!)

 (そんな………吸血鬼という化け物が実在するとは知っていたが、まさか本当に)

 (恐れていたことがことが………目の前に)

 その意味を蛇頭構成員たちは理解し、一斉に顔色が真っ青となる。
 真っ青にするしか、他に方法がなかったからだ。

 突如、自分たちの背後に現れた捕食種。
 凄まじいまでの威圧感。
 危険を告げる全身の器官。
 そして、すでに自分たちは片足の太腿を貫かれて満足に動けない状態にある。

 逃げられない。
 詰みの状態である現実。
 この後に生じ、実現することとは、一体なんだ?

 そんなことは、馬鹿でも理解できる。

 自分たちは、移動手段を奪われた捕食対象なのだと。男たちが一斉に色を失うのも当然だった。

 「目がぁ~!目ガァアアア~!」

 そこに、失明し地面を転げ回っている男の、何も理解できていない叫び声が周囲に響いた。
 私はそんな状況下、地面に倒れ込んでいる男たちへとお行儀良くカーテシーをし、挨拶をするのであった。

 「ごきげんよう、皆さま。とても良い夜ね」

 それは、地面に倒れた男たちに向けた…今からお前たちを捕食しますね…そんな意味を含んだ宣言だった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...