4 / 94
第3話 おっさん、異世界に立つ。が、すぐ帰る
しおりを挟む
「では、転移先に送りますね」
「ああ、頼む」
街の外の比較的安全な街道に近い森の中に転移するそうだ。
街に城門があるが、女神に持たされた現地通貨の1万シリン(銀貨1枚)で簡単に入れるらしい。
ちなみに流通貨幣は、一番下の鉄貨(1シリン)から10枚ごとに、小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、小金貨、金貨、と上がっていくらしい。
その後は冒険者ギルドで登録すれば晴れて異世界の身分証をゲットできるらしい。
清々しいほどのテンプレだ。だがそれがいい。
出自は街の近くに幾つか名もなき村が点在しており、そこからの出稼ぎといえば特に疑われないみたいだ。
よかった。記憶喪失のフリはしなくていいらしい。
テンプレといえど記憶喪失はだいぶ苦しいし無理があると常々思っていたのだ。
記憶喪失でやってる作品スマン。
一応初期装備の旅人の服と短刀(布の服とひのきのぼうじゃなくてよかった)、一般的な鞄にひと月分の生活費(50万シリン)をもらっているのでなんとかなるだろう。
「いってらっしゃい。おかえりお待ちしてますね」
いや確かに報告に来る予定だが、そんな同棲カップルみたいな、或いは新婚みたいな雰囲気で送るのは違うだろ。
「いや、オカシ───」
ツッコミも途中に俺の体は光りに包まれた。
最後に見えたのは「新婚・・・っ」とつぶやきながら頬を染める女神だったような気がするが見間違いと聞き間違いだろう。
そうだ、俺は難聴系で鈍感系なんだ。
相手のわかりやすい態度にも「いや、俺の勘違いだな。俺に限ってそんな事あるはずがない」と思い込む系なんだ。
そうにちがいない。
─────
視界がひらけるとどうやら森の中にいるらしいことがわかる。
聞いてたとおりだな。さて帰るか。
神域とやらでどれだけ時間が経ったか知らんが、今日は起きたら会社にいかなければならない月曜日のはずだ。
異世界の冒険には心惹かれるが、社会人として会社に行かねばならん。
待て、分身か本体どちらかを常駐させろと言われてたのを忘れていた。
ちょっと『分身』スキルを試してみるか。使い方は自然と分かるようだ。
どうやら俺の頭は女神にいじくり回されちまっているらしい。
「分身!」
言ってから、感覚的に念じるだけで良かったことを把握した。
ちょっと恥ずいがここにいるのは俺だけだし次はないから忘れよう。
そして俺は2人になった。
何を言ってるのかわからねーと思うが
超スピードで動いて「はい分身ー」とか
そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
ちゃんとした分身ってやつの片鱗を味わったぜ
─閑話休題─
あー、こういう感覚か。並列思考がいいカンジに働いてるのがわかる。
たしかにどっちも俺だしそれぞれ五感で感じたことをそれぞれで処理しているし共有もできるみたいだ。
しばらく別々の動きをしたり、別々のものを見たり、別々のことを考えたりして分身に慣れていったが、やはり並列思考のおかげか特に問題はなさそうだった。
これなら分身に異世界での初動を任せても大丈夫そうだな。
これ、常に意識や経験を共有するんじゃなくて任意のタイミングで記憶の共有とかできねぇかな?
意識してみるとできそうである。普段気にせずちょっと意識を向ければ分身側で行動するなんてこともできそうだ。
ふと気になってもう1体分身を増やせないかと思ったら、思った瞬間にできるという感覚があった。
ある程度『分身』スキルを把握したところで、異世界の方は分身に任せて、現代へと帰還することにした。
自宅の自室をイメージして転移しようと念じる(今度は口に出さない)と、次の瞬間には自室にいた。
分身に意識を向けると問題なく異世界にいると分かる。
ふと自分の格好を見ると異世界の旅人の装いだった。土足で。
急いで『収納』スキル内にあったパジャマに換装して事なきを得たが、一応部屋全体に生活魔法の清浄をかけた。
すると思った以上にきれいになってしまった。
業者に頼んでもこうはならんぞ。
マンション購入して5年、まだ新しいと思っていたが結構汚れていたんだなぁと実感する。
おっとそんな事を考えてる場合じゃない。もう一人分身を出してそいつに出勤させよう。
分身と念じてもう一体分身を出すと、この分身には会社に行ってもらうこととする。
分身も俺だし経験も共有するわけだから俺が働くことに変わりはないのだが、本体的には仕事に意識を向けなくて良いのでだいぶ楽だ。
俺はついに欲しかったあのコピーなロボットを手に入れたのだ。
しかも本家と違ってどちらも俺自身だから勝手にサボったりもしない。
ん、本家ってなんだ?そんなものはなかったか。うん、なかった。
なんだコレ、最高か?
――――
作者のモチベーションになりますのでいいね、お気に入り登録、感想など、よろしくお願いします。
いいねだけ、いいねだけでいいからっ。
「ああ、頼む」
街の外の比較的安全な街道に近い森の中に転移するそうだ。
街に城門があるが、女神に持たされた現地通貨の1万シリン(銀貨1枚)で簡単に入れるらしい。
ちなみに流通貨幣は、一番下の鉄貨(1シリン)から10枚ごとに、小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、小金貨、金貨、と上がっていくらしい。
その後は冒険者ギルドで登録すれば晴れて異世界の身分証をゲットできるらしい。
清々しいほどのテンプレだ。だがそれがいい。
出自は街の近くに幾つか名もなき村が点在しており、そこからの出稼ぎといえば特に疑われないみたいだ。
よかった。記憶喪失のフリはしなくていいらしい。
テンプレといえど記憶喪失はだいぶ苦しいし無理があると常々思っていたのだ。
記憶喪失でやってる作品スマン。
一応初期装備の旅人の服と短刀(布の服とひのきのぼうじゃなくてよかった)、一般的な鞄にひと月分の生活費(50万シリン)をもらっているのでなんとかなるだろう。
「いってらっしゃい。おかえりお待ちしてますね」
いや確かに報告に来る予定だが、そんな同棲カップルみたいな、或いは新婚みたいな雰囲気で送るのは違うだろ。
「いや、オカシ───」
ツッコミも途中に俺の体は光りに包まれた。
最後に見えたのは「新婚・・・っ」とつぶやきながら頬を染める女神だったような気がするが見間違いと聞き間違いだろう。
そうだ、俺は難聴系で鈍感系なんだ。
相手のわかりやすい態度にも「いや、俺の勘違いだな。俺に限ってそんな事あるはずがない」と思い込む系なんだ。
そうにちがいない。
─────
視界がひらけるとどうやら森の中にいるらしいことがわかる。
聞いてたとおりだな。さて帰るか。
神域とやらでどれだけ時間が経ったか知らんが、今日は起きたら会社にいかなければならない月曜日のはずだ。
異世界の冒険には心惹かれるが、社会人として会社に行かねばならん。
待て、分身か本体どちらかを常駐させろと言われてたのを忘れていた。
ちょっと『分身』スキルを試してみるか。使い方は自然と分かるようだ。
どうやら俺の頭は女神にいじくり回されちまっているらしい。
「分身!」
言ってから、感覚的に念じるだけで良かったことを把握した。
ちょっと恥ずいがここにいるのは俺だけだし次はないから忘れよう。
そして俺は2人になった。
何を言ってるのかわからねーと思うが
超スピードで動いて「はい分身ー」とか
そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
ちゃんとした分身ってやつの片鱗を味わったぜ
─閑話休題─
あー、こういう感覚か。並列思考がいいカンジに働いてるのがわかる。
たしかにどっちも俺だしそれぞれ五感で感じたことをそれぞれで処理しているし共有もできるみたいだ。
しばらく別々の動きをしたり、別々のものを見たり、別々のことを考えたりして分身に慣れていったが、やはり並列思考のおかげか特に問題はなさそうだった。
これなら分身に異世界での初動を任せても大丈夫そうだな。
これ、常に意識や経験を共有するんじゃなくて任意のタイミングで記憶の共有とかできねぇかな?
意識してみるとできそうである。普段気にせずちょっと意識を向ければ分身側で行動するなんてこともできそうだ。
ふと気になってもう1体分身を増やせないかと思ったら、思った瞬間にできるという感覚があった。
ある程度『分身』スキルを把握したところで、異世界の方は分身に任せて、現代へと帰還することにした。
自宅の自室をイメージして転移しようと念じる(今度は口に出さない)と、次の瞬間には自室にいた。
分身に意識を向けると問題なく異世界にいると分かる。
ふと自分の格好を見ると異世界の旅人の装いだった。土足で。
急いで『収納』スキル内にあったパジャマに換装して事なきを得たが、一応部屋全体に生活魔法の清浄をかけた。
すると思った以上にきれいになってしまった。
業者に頼んでもこうはならんぞ。
マンション購入して5年、まだ新しいと思っていたが結構汚れていたんだなぁと実感する。
おっとそんな事を考えてる場合じゃない。もう一人分身を出してそいつに出勤させよう。
分身と念じてもう一体分身を出すと、この分身には会社に行ってもらうこととする。
分身も俺だし経験も共有するわけだから俺が働くことに変わりはないのだが、本体的には仕事に意識を向けなくて良いのでだいぶ楽だ。
俺はついに欲しかったあのコピーなロボットを手に入れたのだ。
しかも本家と違ってどちらも俺自身だから勝手にサボったりもしない。
ん、本家ってなんだ?そんなものはなかったか。うん、なかった。
なんだコレ、最高か?
――――
作者のモチベーションになりますのでいいね、お気に入り登録、感想など、よろしくお願いします。
いいねだけ、いいねだけでいいからっ。
58
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる