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第一章 深窓の麗人って窓が無きゃ、ただの引き籠りだよね
第一章―02
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教室の窓側。
その、最後尾の席。
それが大学に上がってこのかた彼女の指定席であり続けているのもまったく不思議なことなのだけれど、さらに不思議なことは、今や、教授も含めクラスの全員がそれを当り前のように思ってしまっていて、選択授業においても誰一人その席を希望する者もなく、その席はもはやこの大学において存在していないかのような、そんな存在と化してしまっていることだ。
その「不存の存在」という歪んだ立ち位置は、その席に座る彼女をも含めている。
――孤独。
彼女のバリアが作りだしたその副産物は、裏を返せば、彼女が作りだしたものであり、彼女は人付き合いが苦手…苦手っ? いや、むしろビシッと断ち切っていると言って良い。
――そんな孤独。
他者から与えられたものでなく、彼女自らが勝ちとっているかのような、その『孤独』という言葉は、少なくとも悲惨に響くこともなく、むしろ彼女を表現するうえで有用なアイテムとしてあるかのようである。
机に頬杖をついてアンニュイに窓外を眺める姿は、まさに薄幸の麗人を描くうえでもっとも秀逸なモチーフとして絵画の教科書に掲載されてもおかしくないほどに、その孤独と高雅さとを表出している。
しかしそれだけだ。
それだけだった。
彼女は、もはやどうでもいい存在としてクラスにある。それは良くも悪くも、いや、可もなく不可もなくただ存在しているというだけで、それこそ多次元の額縁にかざられた皇女の肖像画のように、ちょくせつ親交を結ばぬ者がそれを見たとして華麗とは思ってもそこに何の感慨も浮かばず、見慣れていくうちにやがて忘れ去られてしまうといった具合に。
――人畜無害のファントム(亡霊)。
――血を吸うことを忘れた吸血鬼。
――羽衣をなくした天女。
――病みあがりの月。
――日蝕の太陽。
と様々に囁かれた別称にみるように、彼女に対する憧憬はうすれ、もはや架空の、2次元的存在として映っているのだ。
もっともそれは、大学2年ともなれば学問・部活・遊興を問わず、己が専心する道を見出す時期でもあり、そうなると昼間に昇った月のことなど誰も興味を抱くはずもなく、それに似て、彼女の存在もまた希薄になってしまったということなのだろう。
その、最後尾の席。
それが大学に上がってこのかた彼女の指定席であり続けているのもまったく不思議なことなのだけれど、さらに不思議なことは、今や、教授も含めクラスの全員がそれを当り前のように思ってしまっていて、選択授業においても誰一人その席を希望する者もなく、その席はもはやこの大学において存在していないかのような、そんな存在と化してしまっていることだ。
その「不存の存在」という歪んだ立ち位置は、その席に座る彼女をも含めている。
――孤独。
彼女のバリアが作りだしたその副産物は、裏を返せば、彼女が作りだしたものであり、彼女は人付き合いが苦手…苦手っ? いや、むしろビシッと断ち切っていると言って良い。
――そんな孤独。
他者から与えられたものでなく、彼女自らが勝ちとっているかのような、その『孤独』という言葉は、少なくとも悲惨に響くこともなく、むしろ彼女を表現するうえで有用なアイテムとしてあるかのようである。
机に頬杖をついてアンニュイに窓外を眺める姿は、まさに薄幸の麗人を描くうえでもっとも秀逸なモチーフとして絵画の教科書に掲載されてもおかしくないほどに、その孤独と高雅さとを表出している。
しかしそれだけだ。
それだけだった。
彼女は、もはやどうでもいい存在としてクラスにある。それは良くも悪くも、いや、可もなく不可もなくただ存在しているというだけで、それこそ多次元の額縁にかざられた皇女の肖像画のように、ちょくせつ親交を結ばぬ者がそれを見たとして華麗とは思ってもそこに何の感慨も浮かばず、見慣れていくうちにやがて忘れ去られてしまうといった具合に。
――人畜無害のファントム(亡霊)。
――血を吸うことを忘れた吸血鬼。
――羽衣をなくした天女。
――病みあがりの月。
――日蝕の太陽。
と様々に囁かれた別称にみるように、彼女に対する憧憬はうすれ、もはや架空の、2次元的存在として映っているのだ。
もっともそれは、大学2年ともなれば学問・部活・遊興を問わず、己が専心する道を見出す時期でもあり、そうなると昼間に昇った月のことなど誰も興味を抱くはずもなく、それに似て、彼女の存在もまた希薄になってしまったということなのだろう。
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