23 / 46
第四章 ピアスはきっと、自分で刺した方が痛くない…と思う
第4章―05
しおりを挟む
――ピアッサーだッ!
カゲロウはこれを知っている。
それは高2の修学旅行。
行った旅先の目抜き通りにこれと同じ物を売っている店があって、それは田舎の女子にとってはたいそう珍しくも愛らしいものに映ったらしく、おまけに手頃な値段ときては、必然それは、話題沸騰、人気商品№1といったところで、果ては男子女子の区別なくまるで事件のように盛上がっていたものだから、修学旅行の想い出といえば、まず最初にこのピアッサーがあげられる。
しかし、彼と同室に宿泊していた男子のうちにそれを購入したヤツがいて、そいつが皆の前で見事、耳たぶにピアッシングしてみせたりなんかしていなければ、彼がここまで確固とした自信でそれと認識し、恐怖に鳥肌を立てることもなかっただろう。
そうッ!
この疑似100円ライターの中にはピアスの芯が仕込まれていて、このまま小春井巻がその親指と人差し指とに力をこめれば、バチリッ…といって見事、ピアッシングが完成されるに違いない。
よりによって、仮性包茎の包皮にだッ!
『コ』の字状の狭窄板が包皮を挟みこんでいる、その四角い圧迫感のちょうど中心に、明らかにそれとは違う『刺痛』と表現するにふさわしい痛みを感じているのは、すでにピアスのその針先が突き刺さる寸前の圧力をもって皮に埋没していることの証だっ!
小春井巻の左手はその包皮の胴体、つまりフニャフニャの陰茎を握りしめていて、これが奇妙に感じた窮屈感の正体でもある。それは、実験を嫌がるハツカネズミでも捕まえているかのように、力任せにギュイッ…と握りしめ、その握り拳からあの『象さんの鼻』が伸びているのだった。
「やめろッ!」
と思わずカゲロウの腰が条件反射でピクリッと動く。
「動かないでっ」
すかさず、ギュッと小春井巻の左手に力が入る。
それは、「獲物を逃がさぬため…」というよりも、むしろ「獲物が暴れることにより誤ってピアッサーの針が突き刺さってしまうことを回避した」といった観があり、その事実を呑み込んだ彼の脳髄は、脊椎反射とばかりにピタリと身体の動きを静止した。
妙齢な女性の、しかも同窓の間では『深窓の麗人』とまで謳われている女子の、その白魚のような指でアソコを握りしめられているにも関わらず、『官能』の『か』の字も覚え得ず、それどころか恐怖に固唾を呑み込んでしまっているのは、一体、どういうことだッ!?
当然、勃起なんてするはずもなく、小春井巻の左手から伸びている『象さんの鼻』が少しでもブれないように…と、大の字になった下半身を大理石の彫像のように石化させながら、カゲロウが、ただただ念じていたことは、
――悪夢なら早く冷めてくれっ!
と、その一義だけだった。
そんな悪夢から目を反らすように、カゲロウの右手はペンシルライトの明りを股間から、小春井巻の細い手首をつたい、腕をなぞるようにして、上へ上へと照らしていった。
小春井巻は黒いノースリーブのワンピースを着ていた。
シルクのようなサラっとした生地で、そこに描かれたどピンクの柄がいかにも彼を嘲笑っているかのようで、さらにその上には白く細い首筋があって血管を微かに蒼く透かしてみせている。普通ならそれは艶めかしく映るところなんだろうけれど、それすら、西欧の魔女を連想させるものとして彼の目にはうそ寒く焼きついた。
そしていよいよその限りなくブルーに近いLEDライトが小春井巻の顔を照らし出したとき、「待ってました」、いや「待っていたわよ」と言わんばかりにその唇の片端がクイっ…と上側に跳ねあがってみせたのだ。
「まったく低脳な『豚』だわ。たったこれだけの状況を把握するのに、随分とわたしの手を煩わせてくれたものね」
たったこれだけ――って!
「お前なっ!」
思わず上体を起こそうとする。
「動かないでっ! …って、言ったはずよね」
小春井巻がふにゃチンを握りしめている手にギュッと力をこめた。
ピタリッ……とカゲロウの身体が石化を果たしたのは言うまでもない。
「ようやく素直になってきたわね。上々だわ。まあ、わたしとしては、凸凹坂くんがお茶目さんな暴れ方をしてくれて、わたしもついついこの手(←ピアッサーを握ってる手のことだ)に力が入ってしまい、あらっ、なんて拍子にピアッシングをしてしまいました……というそんな結果でも、まあ、それなら、それも悪くはない一つのオチだとは思っていたのだけれど」
「人の不幸を単なるオチで片づけるなっ!」
「そうね……」
「え?」
意外にあっさり頷くと、小春井巻は自分の両手が作成している『象さんの鼻』をじっと見つめ、なにやら物思いに耽っているようだった。
もしかして許してくれるのか!?
カゲロウはこれを知っている。
それは高2の修学旅行。
行った旅先の目抜き通りにこれと同じ物を売っている店があって、それは田舎の女子にとってはたいそう珍しくも愛らしいものに映ったらしく、おまけに手頃な値段ときては、必然それは、話題沸騰、人気商品№1といったところで、果ては男子女子の区別なくまるで事件のように盛上がっていたものだから、修学旅行の想い出といえば、まず最初にこのピアッサーがあげられる。
しかし、彼と同室に宿泊していた男子のうちにそれを購入したヤツがいて、そいつが皆の前で見事、耳たぶにピアッシングしてみせたりなんかしていなければ、彼がここまで確固とした自信でそれと認識し、恐怖に鳥肌を立てることもなかっただろう。
そうッ!
この疑似100円ライターの中にはピアスの芯が仕込まれていて、このまま小春井巻がその親指と人差し指とに力をこめれば、バチリッ…といって見事、ピアッシングが完成されるに違いない。
よりによって、仮性包茎の包皮にだッ!
『コ』の字状の狭窄板が包皮を挟みこんでいる、その四角い圧迫感のちょうど中心に、明らかにそれとは違う『刺痛』と表現するにふさわしい痛みを感じているのは、すでにピアスのその針先が突き刺さる寸前の圧力をもって皮に埋没していることの証だっ!
小春井巻の左手はその包皮の胴体、つまりフニャフニャの陰茎を握りしめていて、これが奇妙に感じた窮屈感の正体でもある。それは、実験を嫌がるハツカネズミでも捕まえているかのように、力任せにギュイッ…と握りしめ、その握り拳からあの『象さんの鼻』が伸びているのだった。
「やめろッ!」
と思わずカゲロウの腰が条件反射でピクリッと動く。
「動かないでっ」
すかさず、ギュッと小春井巻の左手に力が入る。
それは、「獲物を逃がさぬため…」というよりも、むしろ「獲物が暴れることにより誤ってピアッサーの針が突き刺さってしまうことを回避した」といった観があり、その事実を呑み込んだ彼の脳髄は、脊椎反射とばかりにピタリと身体の動きを静止した。
妙齢な女性の、しかも同窓の間では『深窓の麗人』とまで謳われている女子の、その白魚のような指でアソコを握りしめられているにも関わらず、『官能』の『か』の字も覚え得ず、それどころか恐怖に固唾を呑み込んでしまっているのは、一体、どういうことだッ!?
当然、勃起なんてするはずもなく、小春井巻の左手から伸びている『象さんの鼻』が少しでもブれないように…と、大の字になった下半身を大理石の彫像のように石化させながら、カゲロウが、ただただ念じていたことは、
――悪夢なら早く冷めてくれっ!
と、その一義だけだった。
そんな悪夢から目を反らすように、カゲロウの右手はペンシルライトの明りを股間から、小春井巻の細い手首をつたい、腕をなぞるようにして、上へ上へと照らしていった。
小春井巻は黒いノースリーブのワンピースを着ていた。
シルクのようなサラっとした生地で、そこに描かれたどピンクの柄がいかにも彼を嘲笑っているかのようで、さらにその上には白く細い首筋があって血管を微かに蒼く透かしてみせている。普通ならそれは艶めかしく映るところなんだろうけれど、それすら、西欧の魔女を連想させるものとして彼の目にはうそ寒く焼きついた。
そしていよいよその限りなくブルーに近いLEDライトが小春井巻の顔を照らし出したとき、「待ってました」、いや「待っていたわよ」と言わんばかりにその唇の片端がクイっ…と上側に跳ねあがってみせたのだ。
「まったく低脳な『豚』だわ。たったこれだけの状況を把握するのに、随分とわたしの手を煩わせてくれたものね」
たったこれだけ――って!
「お前なっ!」
思わず上体を起こそうとする。
「動かないでっ! …って、言ったはずよね」
小春井巻がふにゃチンを握りしめている手にギュッと力をこめた。
ピタリッ……とカゲロウの身体が石化を果たしたのは言うまでもない。
「ようやく素直になってきたわね。上々だわ。まあ、わたしとしては、凸凹坂くんがお茶目さんな暴れ方をしてくれて、わたしもついついこの手(←ピアッサーを握ってる手のことだ)に力が入ってしまい、あらっ、なんて拍子にピアッシングをしてしまいました……というそんな結果でも、まあ、それなら、それも悪くはない一つのオチだとは思っていたのだけれど」
「人の不幸を単なるオチで片づけるなっ!」
「そうね……」
「え?」
意外にあっさり頷くと、小春井巻は自分の両手が作成している『象さんの鼻』をじっと見つめ、なにやら物思いに耽っているようだった。
もしかして許してくれるのか!?
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
還暦妻と若い彼 継承される情熱
MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。
しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。
母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。
同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる