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第四章 ピアスはきっと、自分で刺した方が痛くない…と思う
第四章―04
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そうっ、この髪の毛の甘ったるい匂い――それはまさしく隣の浴室の窓から漂ってきたあの香に他ならないっ!
「そうよ。あなたが毎日せっせとオナニーのオカズにしていた隣のお姉さんとは、なにを隠そう、この、ワ・タ・シ」
全然、可愛くねえっ。
いや、本当に恐いと思った。
「夜ごと8時03分の、ショータ~イム……といったところかしら」
本人は色っぽく『ショータイム』と言ったつもりなんだろうけど、まったく棒読みで間が抜けていること、この上なしだ。
いや、恐い。
もはやこの女、恐怖を通り超え、脅威のレベルに達している。
「さて。方法については充分納得できたところで」
「待てっ、俺は一体、なにを納得すれば良いんだっ!」
「わたしが今、ここにいる理由についてなのだけれど」
また無視ですか!
「それはね」
と言った途端、小春井巻の手からペンシルライトがこぼれ落ちる。
それがコロコロと転がって、部屋に流星群を描いてみせると、あっという間に薄闇が訪れた。
そして……。
「このためよっ!」
初めて小春井巻の声に抑揚といったものが生じた。
いや、そう感じただけのことなのかも知れない。
なぜなら、小春井巻のその言葉が終わらぬうちに、キリっ…とした痛みを股間に覚え、それが聴覚を惑わせたからだ。
「痛っ!」
と、一瞬仰け反りそうになった身体は先刻の失敗を即座に反芻して反射とばかりベッドに磔となる。
――亡霊のような、小春井巻の登場。
――『覗き』という真実の暴露。
――自慰行為の追求。
といったカゲロウにとっては全くあり得ない事柄が一気に起こったことも然る事ながら、
――隣のお姉さんが、実は小春井巻でした。
なんて、彼にとってはとても笑えない事実を突きつけられたのが相当ショックなこともあって、それは、これまで気づかずにいたのだけれど、こうして薄闇が訪れ、さらには目を閉じてみて初めてわかったことがある……。
なにやら下半身が涼しいじゃないか?
それは『下半身=裸』であると想像するまでもなく容易く納得してしまえるほどの涼しさだった。
そしてこの痛みだっ!?
仮性包茎の、その先端の包皮を、何か…四角く固い金属のようなもので挟みこまれて思っきり引っ張り上げられ、しかも、その四角い角が包皮に喰いこんでいるような、この痛み――。
いや、さらに痛みが加わってるっ!?
四角い金属板のその中心あたりに鋭い切っ先をもった突起があって、それが、今にも仮性包皮のその皮膚を貫かんばかりに突出しているような……。
しかし――この窮屈感はなんなんだっ?
――状況把握。
目を開ける。
ぼんやりと薄青く映る視界。
どうやら『大』の字に寝ているらしい。
そのちょうど腰の右側あたりに小春井巻が座っている。
小春井巻の落としたペンシルライトはベッドの傍らに転がって、二人とは真逆の、扉の方を青白く照らしているようだ。
右手をそのあたりにサワサワさせるとすぐにペンシルライトが手に触れて、それを掴むとカゲロウは、ザッと頭だけ起こして足元、つまり自分の下半身の方を見た。
さらに恐る恐る、手にしたペンシルライトの限りなく透明に近いLEDのブルーを股間に照射してみると……。
「…ッ!?」
――絶句。
小春井巻の右手には何か白いプラスチックのような長方形の物体が握られている。
まるで100円ライターが四角く角張った感じだ。
しかし100円ライターと違うところは、その端に着火装置はなく、それどころか『コ』の字にえぐれていて、ちょうどキリール文字の『Б(BEって発音するらしい)』の字を縦長にした形をしているところだ。そんな『コ』の字になっている鍵状の部分で仮性包皮の皮を引っかけて上側に吊り上げているものだから、我ながら呆れるほど哀れなほどにその皮は伸びきってしまっているのだ…。
…って、これじゃ、まるで『象さんの鼻』じゃないか!
辛辣に思えてならないのは、その疑似ライターを持つ小春井巻の右手の形だ。
普通、こんな鍵状のもので包皮を引っ張り上げるなら、疑似ライターの胴の部分を握りしめて、クイっと持ち上げるのが、極あたりまえの作法じゃないのか?
しかし、小春井巻は、親指と人差し指とによってその『Б』の上下を挟みこむようにして…いや、その疑似ライター自体、『コ』の字型の部分がスライドするようになっていて、実際、それで挟みこんでいる…?
ホッチキスを連想したのは、まさにこの仕組みのせいだ!
そしてこの時には、すでに、カゲロウには、これが何であるか…ということがじゅうぶん認識できていた。
――ピアッサーだッ!
「そうよ。あなたが毎日せっせとオナニーのオカズにしていた隣のお姉さんとは、なにを隠そう、この、ワ・タ・シ」
全然、可愛くねえっ。
いや、本当に恐いと思った。
「夜ごと8時03分の、ショータ~イム……といったところかしら」
本人は色っぽく『ショータイム』と言ったつもりなんだろうけど、まったく棒読みで間が抜けていること、この上なしだ。
いや、恐い。
もはやこの女、恐怖を通り超え、脅威のレベルに達している。
「さて。方法については充分納得できたところで」
「待てっ、俺は一体、なにを納得すれば良いんだっ!」
「わたしが今、ここにいる理由についてなのだけれど」
また無視ですか!
「それはね」
と言った途端、小春井巻の手からペンシルライトがこぼれ落ちる。
それがコロコロと転がって、部屋に流星群を描いてみせると、あっという間に薄闇が訪れた。
そして……。
「このためよっ!」
初めて小春井巻の声に抑揚といったものが生じた。
いや、そう感じただけのことなのかも知れない。
なぜなら、小春井巻のその言葉が終わらぬうちに、キリっ…とした痛みを股間に覚え、それが聴覚を惑わせたからだ。
「痛っ!」
と、一瞬仰け反りそうになった身体は先刻の失敗を即座に反芻して反射とばかりベッドに磔となる。
――亡霊のような、小春井巻の登場。
――『覗き』という真実の暴露。
――自慰行為の追求。
といったカゲロウにとっては全くあり得ない事柄が一気に起こったことも然る事ながら、
――隣のお姉さんが、実は小春井巻でした。
なんて、彼にとってはとても笑えない事実を突きつけられたのが相当ショックなこともあって、それは、これまで気づかずにいたのだけれど、こうして薄闇が訪れ、さらには目を閉じてみて初めてわかったことがある……。
なにやら下半身が涼しいじゃないか?
それは『下半身=裸』であると想像するまでもなく容易く納得してしまえるほどの涼しさだった。
そしてこの痛みだっ!?
仮性包茎の、その先端の包皮を、何か…四角く固い金属のようなもので挟みこまれて思っきり引っ張り上げられ、しかも、その四角い角が包皮に喰いこんでいるような、この痛み――。
いや、さらに痛みが加わってるっ!?
四角い金属板のその中心あたりに鋭い切っ先をもった突起があって、それが、今にも仮性包皮のその皮膚を貫かんばかりに突出しているような……。
しかし――この窮屈感はなんなんだっ?
――状況把握。
目を開ける。
ぼんやりと薄青く映る視界。
どうやら『大』の字に寝ているらしい。
そのちょうど腰の右側あたりに小春井巻が座っている。
小春井巻の落としたペンシルライトはベッドの傍らに転がって、二人とは真逆の、扉の方を青白く照らしているようだ。
右手をそのあたりにサワサワさせるとすぐにペンシルライトが手に触れて、それを掴むとカゲロウは、ザッと頭だけ起こして足元、つまり自分の下半身の方を見た。
さらに恐る恐る、手にしたペンシルライトの限りなく透明に近いLEDのブルーを股間に照射してみると……。
「…ッ!?」
――絶句。
小春井巻の右手には何か白いプラスチックのような長方形の物体が握られている。
まるで100円ライターが四角く角張った感じだ。
しかし100円ライターと違うところは、その端に着火装置はなく、それどころか『コ』の字にえぐれていて、ちょうどキリール文字の『Б(BEって発音するらしい)』の字を縦長にした形をしているところだ。そんな『コ』の字になっている鍵状の部分で仮性包皮の皮を引っかけて上側に吊り上げているものだから、我ながら呆れるほど哀れなほどにその皮は伸びきってしまっているのだ…。
…って、これじゃ、まるで『象さんの鼻』じゃないか!
辛辣に思えてならないのは、その疑似ライターを持つ小春井巻の右手の形だ。
普通、こんな鍵状のもので包皮を引っ張り上げるなら、疑似ライターの胴の部分を握りしめて、クイっと持ち上げるのが、極あたりまえの作法じゃないのか?
しかし、小春井巻は、親指と人差し指とによってその『Б』の上下を挟みこむようにして…いや、その疑似ライター自体、『コ』の字型の部分がスライドするようになっていて、実際、それで挟みこんでいる…?
ホッチキスを連想したのは、まさにこの仕組みのせいだ!
そしてこの時には、すでに、カゲロウには、これが何であるか…ということがじゅうぶん認識できていた。
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