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狼
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花を咲かせる魔法を覚えた。
一度見たことのある花を咲かせることができる。
咲いた花は枯れて朽ちるまで残り続けるらしい。
この魔法を利用して、僕はとある実験をしてみた。
その結果は……
「大成功だ!」
季節は夏。
目の前に実った野菜たちを見て、僕は喜びを爆発させていた。
実験とは家庭菜園のことだ。
咲いた花を育てれば実るのではないかと考えた。
で、実際にやってみたら成功したのである。
種類はトマト、ナス、キュウリ。
それからメロンとスイカである。
一度見た花と言うのは、前世の時もカウントされたようだ。
婆ちゃんが家庭菜園をしていて、野菜や果物の花を見たことがあった。
手伝いもよくしていたので、花を咲かせた後も無事に育てることができたのである。
「さて、さっそく収穫を───」
と動こうとした瞬間、いきなり突風が吹き荒れる。
あまりの勢いに一瞬目を瞑り、次に開くとそれは僕の目の前にいた。
大きな犬……いや、狼だ。
三メートルくらいはあるか?
純白で綺麗な毛並みをしている。
「美しい……」
思わずそう言葉を漏らした。
『怯えるではなく第一声がそれか…… 面白い子だ』
凛々しい声が聞こえて来た。
多分、目の前の狼の声だ。
『我はフェンリル。あの山の支配者である』
フェンリルは遠くの山の方に顔を向ける。
噂には聞いていた。
国境沿いの山々を支配する魔物がいる……と。
その魔物が目の前にいるフェンリルなのだろう。
フェンリルのことも知っている。
滅多に人前に現れないが、数々の伝説を残した神獣だ。
人間界に介入できない神々に代わり、この世界を守護していると本に書かれていた。
『お主、変わった魂の色をしているな?』
「魂の色……ですか?」
『あぁ、普通の人間は黒色や灰色が殆どだ。ごく稀に白はいたが……お前のような虹色は初めてだ』
それって転生者だからだろうか?
「えっと……もしかして、僕を消しに来たとかですか?」
『なぜそうなる?……いや、いきなり来たのだからそうなるのも無理はないのか』
どうやら僕を消しに来た訳ではないようだ。
では、なぜ僕の前に現れたのだろうか?
『今日はお願いにやって来たのだ』
伝説の神獣であるフェンリルからのお願い……一体何なんだろうか?
ちょっとだけ緊張して来た。
『お主が育てたその作物を我に食べさせて貰えないだろうか?』
そう言うと、フェンリルはチラチラと後ろの野菜を見る。
つまり、野菜に釣られてここまで来たと言うことらしい。
「お口に合うかどうか解りませんが、構いませんよ。何を食べますか?」
『では、まずはその実から頂こう』
メロンの方を見る。
僕はハサミを使ってメロンを一つ収穫した。
「切り分ける為に包丁を取りに行ってもいいですか?」
『いや、このまま頂こう』
両手で抱えていたメロンが宙を浮く。
恐らくフェンリルの魔法なのだろう。
そのままメロンがフェンリルの口へと運ばれた。
『おぉ! これは美味い! とても甘い果樹だ!』
「それはメロンと言う野菜です」
『それは誠か? こんな甘い野菜は始めて食べたぞ!』
どうやら口に合ったようだ。
『次はその緑と黒のシマシマを頂きたい!』
「はい」
フェンリルの言葉を聞き、スカイを一玉収穫した。
「どうぞ」
『うむ、では頂こう』
メロンと同様にスカイが僕の手を離れる。
そしてフェンリルの口に吸い込まれて行った。
『これも美味い! メロンとは違った甘みだ!』
スカイも気に入ってくれたようだ。
その後も、僕を育てた野菜を次々に食べて行く。
どれも大絶賛だった。
『久しぶりに美味い物を食べた。千年ぶりに目覚めて正解だったな』
千年……随分と長い眠りだ。
何か理由があるのだろうか?
『人の子よ、名前は何と言う?』
「エルディオ・アルバートと言います」
『そうか。ではエルディオよ、我と主従の契約を結ばぬか?』
「主従の契約ですか?」
『そうだ。我はお前の従魔となろう』
フェンリルを従えると言うのは、メリットもデメリットも大きいと思う。
でも、下手に断って機嫌を損ねると僕の命どころかこの村が滅ぶかもしれない。
『こんな美味い物を生み出せる子を手放すものか……クッククク』
そもそも断らせる気ないようだ。
と言うか、本音がダダ漏れですよ?
「解りました」
『うむ、ではさっそく契約を開始する』
フェンリルが近づいて僕の額に自身の額を軽く押し当てた。
何だか温かい感覚が頭から身体全体に流れて行く。
『これでよし』
「……もう終わったんですか?」
『そうだ。これからよろしくな、我が主よ』
こうしてフェンリルが仲間に加わった。
その後、武装した父さんがやって来て事情を説明。
父さんが泡吹いて倒れました。
母さんに説明すると「流石、私たちの子!」と親指を立てて褒めてくれた。
弟と妹は「大っきいワンワン!」とフェンリルに抱き付く。
フェンリルは「犬ではなく狼だ!」と言うが、二人のワンワン呼びは止まらなかった。
『ところで主よ、我に名を与えてくれぬか?』
「名前?今はないの?」
『あぁ、ない。だから主が付けてくれ』
うーん……何が良いだろう?
白い狼だからシロとかハク……は安直かな?
「ちなみに性別は?」
『性別はない。オスの名でもメスの名でも構わんぞ』
「じゃあ、シラユキで」
名前の由来は童話の白雪姫である。
『シラユキ……うむ、気に入った』
フェンリルの名前がシラユキに決定した。
だが、弟たちのワンワン呼びは当分続く模様。
シラユキと契約した日の晩御飯。
僕が育てた野菜が使われた料理が並んだ。
皆、喜んで食べてくれた。
『生も美味いが調理するともっと美味いな!』
シラユキは魔法で大きさを変えられるようだ。
現在、中型犬くらいの大きさで一緒に晩御飯を食べていた。
その姿は完全にワンワンであるが、思うだけで口には出さないでおこうと思う。
一度見たことのある花を咲かせることができる。
咲いた花は枯れて朽ちるまで残り続けるらしい。
この魔法を利用して、僕はとある実験をしてみた。
その結果は……
「大成功だ!」
季節は夏。
目の前に実った野菜たちを見て、僕は喜びを爆発させていた。
実験とは家庭菜園のことだ。
咲いた花を育てれば実るのではないかと考えた。
で、実際にやってみたら成功したのである。
種類はトマト、ナス、キュウリ。
それからメロンとスイカである。
一度見た花と言うのは、前世の時もカウントされたようだ。
婆ちゃんが家庭菜園をしていて、野菜や果物の花を見たことがあった。
手伝いもよくしていたので、花を咲かせた後も無事に育てることができたのである。
「さて、さっそく収穫を───」
と動こうとした瞬間、いきなり突風が吹き荒れる。
あまりの勢いに一瞬目を瞑り、次に開くとそれは僕の目の前にいた。
大きな犬……いや、狼だ。
三メートルくらいはあるか?
純白で綺麗な毛並みをしている。
「美しい……」
思わずそう言葉を漏らした。
『怯えるではなく第一声がそれか…… 面白い子だ』
凛々しい声が聞こえて来た。
多分、目の前の狼の声だ。
『我はフェンリル。あの山の支配者である』
フェンリルは遠くの山の方に顔を向ける。
噂には聞いていた。
国境沿いの山々を支配する魔物がいる……と。
その魔物が目の前にいるフェンリルなのだろう。
フェンリルのことも知っている。
滅多に人前に現れないが、数々の伝説を残した神獣だ。
人間界に介入できない神々に代わり、この世界を守護していると本に書かれていた。
『お主、変わった魂の色をしているな?』
「魂の色……ですか?」
『あぁ、普通の人間は黒色や灰色が殆どだ。ごく稀に白はいたが……お前のような虹色は初めてだ』
それって転生者だからだろうか?
「えっと……もしかして、僕を消しに来たとかですか?」
『なぜそうなる?……いや、いきなり来たのだからそうなるのも無理はないのか』
どうやら僕を消しに来た訳ではないようだ。
では、なぜ僕の前に現れたのだろうか?
『今日はお願いにやって来たのだ』
伝説の神獣であるフェンリルからのお願い……一体何なんだろうか?
ちょっとだけ緊張して来た。
『お主が育てたその作物を我に食べさせて貰えないだろうか?』
そう言うと、フェンリルはチラチラと後ろの野菜を見る。
つまり、野菜に釣られてここまで来たと言うことらしい。
「お口に合うかどうか解りませんが、構いませんよ。何を食べますか?」
『では、まずはその実から頂こう』
メロンの方を見る。
僕はハサミを使ってメロンを一つ収穫した。
「切り分ける為に包丁を取りに行ってもいいですか?」
『いや、このまま頂こう』
両手で抱えていたメロンが宙を浮く。
恐らくフェンリルの魔法なのだろう。
そのままメロンがフェンリルの口へと運ばれた。
『おぉ! これは美味い! とても甘い果樹だ!』
「それはメロンと言う野菜です」
『それは誠か? こんな甘い野菜は始めて食べたぞ!』
どうやら口に合ったようだ。
『次はその緑と黒のシマシマを頂きたい!』
「はい」
フェンリルの言葉を聞き、スカイを一玉収穫した。
「どうぞ」
『うむ、では頂こう』
メロンと同様にスカイが僕の手を離れる。
そしてフェンリルの口に吸い込まれて行った。
『これも美味い! メロンとは違った甘みだ!』
スカイも気に入ってくれたようだ。
その後も、僕を育てた野菜を次々に食べて行く。
どれも大絶賛だった。
『久しぶりに美味い物を食べた。千年ぶりに目覚めて正解だったな』
千年……随分と長い眠りだ。
何か理由があるのだろうか?
『人の子よ、名前は何と言う?』
「エルディオ・アルバートと言います」
『そうか。ではエルディオよ、我と主従の契約を結ばぬか?』
「主従の契約ですか?」
『そうだ。我はお前の従魔となろう』
フェンリルを従えると言うのは、メリットもデメリットも大きいと思う。
でも、下手に断って機嫌を損ねると僕の命どころかこの村が滅ぶかもしれない。
『こんな美味い物を生み出せる子を手放すものか……クッククク』
そもそも断らせる気ないようだ。
と言うか、本音がダダ漏れですよ?
「解りました」
『うむ、ではさっそく契約を開始する』
フェンリルが近づいて僕の額に自身の額を軽く押し当てた。
何だか温かい感覚が頭から身体全体に流れて行く。
『これでよし』
「……もう終わったんですか?」
『そうだ。これからよろしくな、我が主よ』
こうしてフェンリルが仲間に加わった。
その後、武装した父さんがやって来て事情を説明。
父さんが泡吹いて倒れました。
母さんに説明すると「流石、私たちの子!」と親指を立てて褒めてくれた。
弟と妹は「大っきいワンワン!」とフェンリルに抱き付く。
フェンリルは「犬ではなく狼だ!」と言うが、二人のワンワン呼びは止まらなかった。
『ところで主よ、我に名を与えてくれぬか?』
「名前?今はないの?」
『あぁ、ない。だから主が付けてくれ』
うーん……何が良いだろう?
白い狼だからシロとかハク……は安直かな?
「ちなみに性別は?」
『性別はない。オスの名でもメスの名でも構わんぞ』
「じゃあ、シラユキで」
名前の由来は童話の白雪姫である。
『シラユキ……うむ、気に入った』
フェンリルの名前がシラユキに決定した。
だが、弟たちのワンワン呼びは当分続く模様。
シラユキと契約した日の晩御飯。
僕が育てた野菜が使われた料理が並んだ。
皆、喜んで食べてくれた。
『生も美味いが調理するともっと美味いな!』
シラユキは魔法で大きさを変えられるようだ。
現在、中型犬くらいの大きさで一緒に晩御飯を食べていた。
その姿は完全にワンワンであるが、思うだけで口には出さないでおこうと思う。
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