あるテイマーの物語

ノノン

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才能

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 五歳になり、才能が開花できるようになった。
 一年と言うのは長いようで短いと感じる。

 この世界の一年は三十六日である。
 一ヶ月は三十日。
 季節は春夏秋冬あり、日本と同じ感じだと思う。
 三月から春になり、六月から夏になり、九月から秋になり、十二月から冬となる。

 アルバート領の冬はかなりの雪が積もる。
 狩りができないし、商人も中々来ない。
 毎年食糧難に陥り掛けていたが、今回の冬はシラユキのおかげで無事に越せることができた。

 で、今日は僕の才能を開花させるそうだ。

 唯一の村には教会がない為、お隣のクレベール伯爵領の街へ行く。
 片道半日ほど掛かる。

 同行者は父さんと母さんのみ。
 弟たちはお留守番。
 シラユキたちも同様である。
 後でお土産を買って帰ろうと思う。

 街の教会に入ると、親子が沢山いた。
 服装から平民からお金持ちまでいるようだ。

 才能を開花させるにはお金が必要らしい。
 見ているとその金額は人によって異なっていた。
 恐らくお気持ちと言う奴なのだろう。

 家は金貨一枚を支払った。
 大体一万円くらいである。

 礼拝堂の席に座る。
 そして、自分の番が回って来るのを待った。

 名を呼ばれた子が神官の前に立つ。
 神官が何か呪文を呟くと、子供の身体が一瞬だけ輝いた。

「君は無才だ」

 無才とは特質した能力が何もない者を言う。
 そう言われた子供はガックリと項垂れて親の元に戻って行く。
 その子の親もこの世の終わりみたいな表情をしていた。

 やはり、才能は今後の人生を左右するようだ。

「なぜ儂の息子が無才なのだ!」

 声を荒らげるのは身なりの良い小太りの男だ。
 神官に詰め寄っている。
 その隣にいるのが男の子供なのだろう。
 親に似てこちらも膨よかな体系である。

「儂の息子まら勇者か賢者が相応しい!早く取り替えろ!」

「才能は神々が与えたものです。その才能を伸ばすかどうかはその者の自由ですが、才能を代えるなんてことはできません」

「ぐぬぬ……今後、デモンズ商会は貴様ら教会の援助を打ち切らして貰う!」

 そう最後に捨て台詞を吐いて、子供と共に男が教会を出て行った。

「よろしいのですか? デモンズ商会の援助を打ち切られると我が教会は……」

「では、嘘を言えと?」

「いえ、それは……」

「援助については後ほど考えます。今は儀式の続きをしましょう」

「承知しました」

 何だか不穏な感じだが、それでも儀式が続いて行く。

「リーシェ・クレベール、前へ」

 綺麗なドレスを纏った赤毛の女の子が前に出る。
 クレベールと言うことは伯爵令嬢なのだろう。

「最初に言っておきます」

 リーシェと呼ばれた女の子が口を開いた。

「私はどんな才能だろうと、貴方たちを批難するつもりはありません」

「……そうですか」

 神官が「そう言うの良いからさっさと始めさせろ」と言う顔になっている。
 それを感じ取ったのか「始めて下さい」と女の子が言った。

「では、始めます」

 神官が呪文を呟き、女の子の身体が光輝く。
 だが、その光は他の子供たちと異なり強い輝きであった。

「…………」

 神官が沈黙する。
 まさかあれで無才だったってことは……ないだろうな。

「リーシェ・クレベール譲、貴女の才能は聖女でございます」

 と神官が言った瞬間、教会内がどよめきだした。

「……そう」

 素っ気ない返事をするが、その表情は動揺を隠しきれていない。
 本人も完全に予想外だったのだろうな。

「次はエルディオ・アルバート」

 聖女の次ですか……まあ、仕方がない。
 名を呼ばれた僕は神官の前まで移動した。

「では、始めます」

 神官が呪文を呟くと、僕の身体が一瞬だけ光った。
 無才の時とは少し輝きが強い感じがする。

「エルディオ・アルバートの才能はテイマーですね」

 テイマー……確か魔物や動物を使役する能力に特化した才能である。
 フェンリルやタマネコたちを従魔にしているから、ピッタリな才能だと思う。

 両親たちの反応。
 母さんは小さく手を叩いて嬉しそうだ。
 父さんはやっぱりと言いたげな表情だった。
 多分、今すぐ追放はないだろう。
 良かった良かった。

 帰りに弟たちのお土産にシュークリームを購入。
 王都で大人気のお菓子と言う話だ。
 皆、とても喜んでくれた。
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