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第3話 予想外の、始まり~結婚して2か月目の出来事~ リナス視点(2)

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((はあ!? なにこれ!?))

 ケヴィンが差し出してきたもの。白い長方形のケースを開けたわたしは、その瞬間、心の中で唖然となってしまった。
 なぜなら――。その箱の中に入っていたのは、別のネックレス。小さなエメラルドだけが配置された、確か20万程度の安物・・だったのだから。

「あ、ありがとうございます。いただいたても、よろしいのですか……?」
「うん、もらってくれ。実は今日は、リナスが密かに欲しがっていたものを買いに行っていたんだ。だけどその商品はソールドアウトとなっていてね、仕方なくこれを――代わりのものを買ってきたんだ」

 とりあえず礼を告げていると、彼はそんな『嘘』を言い出した。
 わたしが欲しがっていたネックレスは在庫が2点あって、この価格のものが短期間で2つも売れることはまずない。仮にあったとしても、ほぼ同じデザインのものが他店にあった。ケヴィンは『仕方なく』ではなくて、意図的にこれを買ってきている。

((どういうことなの……? どうしてこんなチープなものを選んだの……?))

 この人のとってわたしは、最愛の妻。世界で一番愛おしい人。そしてケヴィンの家は裕福な侯爵家だし、彼自身も家の土地などを使った資産運用で成功している――かなりのポケットマネーを持っていた。
 わたしを大好きで、お金もあるはずなのに……。なぜこんなポンコツを、愛する人が望んでいないものを買ってきたの?

((もしかして、実は最愛の人ではなくなってきている……? また心変わりがあって、エマあの女に傾きかけている……?))

 いいえ、それはあり得ない。
 ケヴィンはずっと『エマとの婚約は選択ミスだった』『人生最大の気の迷いだった』と言っているし、わたしへと注がれる愛の量は減っていない。不変どころか、日に日に更に大きくなっていっているんだもの。
 エマは眼中になくて、わたしが一番で間違いない。

((だとしたら……。これは、どういうことなの……?))

 そうなる理由がどこにもないから、いくら考えても分からない。本性を隠しているから、面と向かって聞くことはできない。
 なので――。

((……ケヴィンの様子を、もっと注意深く観察しましょ……))

 原因不明の事態を解明するため、調査を開始。清廉潔白な可愛い夫人を演じながら、彼の動向をチェックし始めたのだった。
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