私との婚約は、選択ミスだったらしい

柚木ゆず

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リナス編 リナスのその後~運命的な出会い~ 俯瞰視点(5)

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「……? 急に固まって、どうしたんだい……?」
「あ、い、いえ、なんでもありませんよ。ち、ちなみにですが。その人って、なんていうお名前なんですか?」

 絶対にそうだ――。よく見ると面影があった――。でも、こんな偶然ってある?――。別人なのかもしれない――。そういったものが脳内を駆け巡り、リナスは溜まっていた唾を飲み込んで首を傾けました。

「お話を聞いていたら、気になってきたんです。教えてもらえますか?」
「ああ、いいよ。そいつは、リナスって名前だよ」
「………………………………」

 返事を聞いたリナスは、再び沈黙。こんな形で再会した嫌な偶然に衝撃を受け、同時に――。激しい怒りと、『名案』が浮かびました。

((……まさかこんな形で、また出会えるなんてね。あの時のお礼を、改めてたっぷりとさせてもらいましょ))

 コイツが暴走しなければ借金なんてできなくて、楽しい日々を過ごせていた! 元凶はコイツだ!
 収監を味わったリナスはあの頃よりもさらに、ケヴィンを憎んでいました。そのため、


((このまま正体を明かさずに付き合って、徹底的に搾り取って捨ててあげる))


 こういったことを、企んでいたのです。

「ごめん、変な話をしちゃって。……たぶんかなり酔ってるのと、付き合うって決まったから、色々と思い出したみたいだ」
「私はお兄さんのことを知れて、嬉しかったですよ。…………お兄さん、安心してくださいね。私は、お兄さんを利用しませんよ。絶対に、生涯愛し続けます」

 リナスはそっと体を寄せ、ケヴィンの肩にこてんと頭を載せました。

「……そういえば私達って、自己紹介をしていませんよね? 私は、ファリス・リティアといいます。お兄さんのお名前、教えてください」
「俺は、ケヴィン。今は、ケヴィン・タルスを名乗っている」
「……ケヴィン・タルス、素敵なお名前ですね。…………私ファリスは、ケヴィンとの間に一切の嘘をつかないことを誓います」

 胸の前で手を合わせ、ゆっくりと口にする。そうしたリナスはニッコリと微笑み、更にケヴィンとの距離を近づけました。

「今の、わたしが生まれた村に伝わる誓約の言葉なんです。嘘を吐いたら死んでしまうといわれていて、わたしもずっと信じ続けているものです」
「ファリス……っ。じゃ、じゃあ……っ」
「はい。あの言葉は、ずっと守らせてもらいます……っ」((そんな言葉なんてないんだけどね))

 表では、にっこり。心では、舌を出して。
 リナスはあの頃のように、嘘の皮を被り始めました。

((今のでもっともっと、コイツはわたしに夢中になった。…………今度は確実に、骨の髄までしゃぶり尽くしてあげるわ。楽しみにしていてね、お兄様ぁ))

 そうして彼女は再び動き出し、ですが。その後にケヴィンが口にした、とある一言によって――。リナスのシナリオは、崩壊することになるのでした。

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