私との婚約は、選択ミスだったらしい

柚木ゆず

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リナス編 リナスのその後~運命的な出会い~ 俯瞰視点(6)

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「ありがとう、ファリス。……同じ女性でも、こんなにも違うんだね。あのゴミクズ女・・・・・と同じ生き物だとは思えない……!!」

 シナリオ崩壊の切っ掛けは、感涙と共に出されたこの台詞。新たな恋人を持ち上げるための言葉が、始まりでした。

「髪の色も同じ金だけど、まるで違う! ファリスのは女神のようで、リナスのソレは醜く極まりない!! 清らかな月と汚らしい泥のようだ!!」
「…………………………………………」
「目もそうだ! 同じタレ目だが、君のものは愛らしい!! 加齢さえも魅力に変換できるであろう奇跡の瞳で、大してリナスのはどうだっ? 真逆だよ真逆! 悪意が宿ったそれはもう酷い瞳で、今頃はどうなっているだろうなっ? きっと周りは皺だらけで、内心がにじみ出た醜い老婆のようになっているだろうっ!!」
「………………あ、あの、ケヴィンさん。たとえ嫌な思いをした人であっても、悪口は良くないと思いますよ……?」

 ケヴィンは昔から、比較をすることで気に入った相手を褒める悪癖がある、それはリナスも理解していました。
 ですが彼女は元々自分への悪口には非常に腹が立つ人間であり、かつての自分をこき下ろしているのは元凶――怨んでいる男。そのため黙って聞くのが賢明だと分かってはいますが、声を挙げずにはいられませんでした。

「そういった内容は、あまり口にしないほうが――」
「ファリスはなんて優しいんだ……っ! でもね、これは事実だから仕方がないんだよっ。ファリスは身も心も美しく、ヤツは身も心も腐りきっているのだから!」

 ケヴィンはブンブンと首を振り、残念ながら――。悪口は、止まりません。

「とにかく高いものが欲しい、高級な場所へ行きたい、あれは欲望の化身なんだよっ。三十数年生きてきたけど、あそこまで酷いヤツは見たことがない!」
「……………………」((我慢よ――。我慢するのよ、わたし――っ))
「それと、プライドの塊でもあるねっ。本当はペコペコするのが嫌って、バカとしか言いようがないっ! いい年になっても、社会の常識すら理解できないなんて! 君の足元にも及ばないゴミとしか言いようがないっっ!」
「…………………………」((この恨みは、寄生して晴らせばいい……っ。我慢よ……!))

 リナスは密かに歯を食いしばり、必死になって堪えます。
 ですが、その後もファリス持ち上げ過去のリナス批判は続き――。おまけに、


「あれはね、人の形をした汚物だよっ! この世が生みだしてしまった問題作だ!!」


 ついには、そういったものと同列に語られるようになりました。
 酒と興奮と性質が合わさっているとはいえ、現在世界で一番憎んでいる者からの罵詈雑言の嵐。それに、リナスが耐えられるはずはなく――


「もし過去に戻れるのなら、全力で自分を止めているっ。あれは今でも、人生最大の選択ミスだと確信してごぶぅっ!?」
「調子に乗るんじゃないわよこの能無しがぁあっ!!」


 ――リナスは絶叫と共に、ケヴィンの頬を全力で叩(はた)いたのでした。

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