疫病神と言われ続けた私でしたが、実家を追い出されたあとに待っていたのは幸せな毎日でした

柚木ゆず

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第18話 平穏な日は アマンディーヌ視点(1)

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((……わたしが、こんな風に過ごせるだなんて。今でもなんだか信じられませんね))

 あの日からおよそ半年後の、午前10時過ぎ。身支度を整えたわたしは、姿見に映る全身を見渡しました。

 外出用のワンピースを纏ったわたし。
 帽子を被っていないわたし。

 あのあと各所でお二方が噂の否定を広めてくださり、同時にジェレミー様やおじ様達も色々な形で動いてくださりました。それにより『黒い髪の毛=不吉をもたらすもの』の認識は殆どなくなっていて、なんとそれどころか『黒い髪の毛=商業の幸福をもたらすもの』という認識が広がっていっているんです。
 ですので外でわたしの姿を目にしても不快な顔をされなくなりましたし、お店などでは時々『是非寄っていって』と声をかけていただくようになりました。

((夢、みたいです。ジェレミーさん・・・・・・・、おじ様、おば様、カルナくん・・・・・も。ありがとうございます。……あの日から、いただいてばかり。そろそろ恩返しをしないと、いけませんよね))

 救っていただいてから――このお屋敷に来てからもうすぐ一年が経ちますし、8か月後には結婚することになっています。
 いつまでも、いただいているばかりでは駄目。
 ジェレミー様達は『なにもいらないよ』と言ってくださりますが、支え合うのが家族ですからね。現在色々なものを温めていて、もう少し形になればお役に立てそうなのです。

((待っていてくださいね。きっと――))
「失礼致します、お嬢様。準備が整ったようでございます」
「――あ、はい。すぐ向かいます」

 侍女を務めてくださっているマリアさんに頷き、わたしは部屋を出ます。
 今日はこれから、ジェレミー様と件の『ローランデルス湖』に行くんです。ジェレミー様は先に準備をすることがあってすでに馬車に向かわれているので、マリアさんと共に移動して――

「とても似合っているよ。今日も綺麗だね、アマンディーヌ」

 ――馬車に着くとすぐ、柔らかく目を細めてくださりました。

「ありがとうございます。せっかくのお出かけですから、今日は一番好きな服を――ジェレミー様が選んでくださったものを着用しました」
「気に入ってくれて嬉しいよ。本当に、よく似合ってる」
「移動中に、おじ様とおば様にも改めて褒めていただきました。髪の毛が引き立っていると――……。え……?」

 微笑みに微笑みをお返ししていたわたしの身体が、無意識的に強張りました。
 これは……。
 風に乗って聞こえて来たこの声は、まさか――


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