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第17話 だから ロズリーヌ視点
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「はい……! 検討ではなく、是非お願いしますっ! 不束者ですが、よろしくお願い致します……!」
あの出来事をへと、同じく特別な感情を抱いていたこと。立場の差があまりにもあり、諦めようとしていたこと。
興奮によって身体を震わせながらお返事をさせていただいたあと、胸に秘めていたものをすべてお伝えさせてもらいました。
「この気持ちは、絶対にお伝えできないと思っていて……。まさかそのように想ってくださっているとも、思っていませんでした。夢のようです」
「不必要な葛藤を生んでしまい、申し訳ございません。どのようなお返事をいただけるか分からなくても、よいお返事をいただけたと想定して準備をしておかないといけません。そちらに少々時間がかかってしまい、今日になってしまいました」
受け入れてもらえたものの一族内から猛反発を受け、叶わなくなる。叶ったとしても、婚約や結婚後にあれこれ雑音が聞こえてきてわたしが嫌な思いをしてしまう。
そんな事態が起きないように、関係者全員に説明をしてくださっていたそうです。
「政略結婚は白紙となったものの、賠償金などで大きなプラスを得ている点。安心して過ごせる人が、守りたい人が傍にいてくれたのなら、次期当主の態勢はより万全となる点。そういった『家へのメリット』を客観的に表した情報を提示して、無事全員に納得してもらえたんですよ」
「そう、だったのですね。ありがとうございます」
今後のことまで、考えてくださっていただなんて。わたしは幸せ者です。
「自分はともかく、貴方が傷つくことはなってはなりません。当然、当たり前のことをしただけですよ」
オディロン様はさらっとそう仰って、ソファーから立ち上がって――。わたしのもとまで歩かれ、片膝をつかれました。
「こちらこそ、ありがとうございます。受け入れていただけて幸せです」
そうされたあと、まずは本当に幸せそうに頬を緩めてくださり、直後に表情が少し変化します。
穏やかさの中に、『真剣』であり『真摯』の色が含まれるようになりました。
「もし、万が一。あの出来事ようなことが起こったとしても。貴方の心も身体も、お守りします」
「……はい」
「その約束、誓いは、違えません。…………ロズリーヌ様。共に歩んでまいりましょう」
「はいっ。はいっ! 歩みましょう! 一生に歩ませてください!」
力強さのある言葉と共に、真っすぐ差し出された右手。わたしはたくさんの嬉し涙を零しながら、その手に手を重ねたのでした。
あの出来事をへと、同じく特別な感情を抱いていたこと。立場の差があまりにもあり、諦めようとしていたこと。
興奮によって身体を震わせながらお返事をさせていただいたあと、胸に秘めていたものをすべてお伝えさせてもらいました。
「この気持ちは、絶対にお伝えできないと思っていて……。まさかそのように想ってくださっているとも、思っていませんでした。夢のようです」
「不必要な葛藤を生んでしまい、申し訳ございません。どのようなお返事をいただけるか分からなくても、よいお返事をいただけたと想定して準備をしておかないといけません。そちらに少々時間がかかってしまい、今日になってしまいました」
受け入れてもらえたものの一族内から猛反発を受け、叶わなくなる。叶ったとしても、婚約や結婚後にあれこれ雑音が聞こえてきてわたしが嫌な思いをしてしまう。
そんな事態が起きないように、関係者全員に説明をしてくださっていたそうです。
「政略結婚は白紙となったものの、賠償金などで大きなプラスを得ている点。安心して過ごせる人が、守りたい人が傍にいてくれたのなら、次期当主の態勢はより万全となる点。そういった『家へのメリット』を客観的に表した情報を提示して、無事全員に納得してもらえたんですよ」
「そう、だったのですね。ありがとうございます」
今後のことまで、考えてくださっていただなんて。わたしは幸せ者です。
「自分はともかく、貴方が傷つくことはなってはなりません。当然、当たり前のことをしただけですよ」
オディロン様はさらっとそう仰って、ソファーから立ち上がって――。わたしのもとまで歩かれ、片膝をつかれました。
「こちらこそ、ありがとうございます。受け入れていただけて幸せです」
そうされたあと、まずは本当に幸せそうに頬を緩めてくださり、直後に表情が少し変化します。
穏やかさの中に、『真剣』であり『真摯』の色が含まれるようになりました。
「もし、万が一。あの出来事ようなことが起こったとしても。貴方の心も身体も、お守りします」
「……はい」
「その約束、誓いは、違えません。…………ロズリーヌ様。共に歩んでまいりましょう」
「はいっ。はいっ! 歩みましょう! 一生に歩ませてください!」
力強さのある言葉と共に、真っすぐ差し出された右手。わたしはたくさんの嬉し涙を零しながら、その手に手を重ねたのでした。
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