結婚式当日に私の婚約者と駆け落ちした妹が、一年後に突然帰ってきました

柚木ゆず

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第4話 思った通り! メレーヌ視点

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「…………いいだろう。使用人として、お前をこの屋敷に置いてやる」
「っ! ありがとうございます! ありがとうございますっ!! お父様っ!! お姉様っ!! お母様!!」

 思った通り。お父様もお姉様も『お母様』が過ぎって、わたくしを無下にできなかった。

「無論扱いは、家族ではなく新人使用人だ。使用人のリーダーポーラの指示に従い、まずは作業内容をしっかり頭に叩き込むのだ」
「承知いたしました……!!」
「職務中、職務外の時も、屋敷内で――この敷地内でひとつでも問題を起こせば、その瞬間お前は居場所を失うこととなる。ゆめゆめ忘れぬようにな」
「もちろんでございます! 肝に銘じておきます!」

 ここを追い出せたら、今度こそ路頭に迷ってしまう。それに――。

 常に下手に出てお父様とお姉様に尽くしていていたら、思い直して家族として迎え入れてもらえるかもしれない。

 そんなチャンスがないとは言い切れないのだから、そんな真似をするはずがありませんわ。

「住居は、あちらにある納屋をあてがう。自分で手入れをして使うといい」
「住む場所までいただけるなんて……! 痛み入ります……!」

 表ではペコペコ頭を下げて、心の中では舌打ちをする。
 納屋だなんて。屋敷の中にはわたくしの部屋があって、空いているのにソコへ行けだなんて……! 良い性格をしてますわ……!!

((お母様が健在なら、きっと部屋を使わせてくれたのに。これだから頭の固い人間は嫌なのよ。……なにか悪いことでも起きろ!!))

 心の中でふたりの不幸を願い、鼻から静かに息を抜いて怒りを追い出す。
 つい本心が出てしまったら、台無しになってしまうんだもの。思っていることが出てしまわないように、つい爆発してしまいそうな感情はしっかり外に出しておく。

「次に、食事についてだ。これは三食、こちらで用意する」
「! ありがとうございます……!」
「ただしその際は、納屋で行うように。そして使った食器などはすべて自ら洗い、寝具などに関しても同様で――」

 ○○をした時は、○○するように――。○○の際は、○○をするように――。
 そのあとも色々と決まり事を伝えられて、ふぅ、やっと長話が終わりましたわね。ソレが終わるとようやく、わたくしは門の中へと入れてもらえるようになって――

「………………ふう。出来ましたわっ」

 ――半日ほどかけて納屋を片付けて、新たな人生の『拠点』が完成、すっかり綺麗になった室内を見回したあと、すでに夜が更けているため支給されたお古のベッドに入ったのだった。

「…………ふふふ。どうにか、軌道修正ができましたわね」

 使用人として働かないといけなくなってしまったものの、果樹園での毎日に比べたら遥かに楽。ナルシスのせいで下降続きだった人生が、ようやく上昇を始めた。

「今日も明日も。ナルシスは、ひとりでせっせと奴隷のように働いていくんでしょうねぇ」

 あちらは炎天下で働き、こちらは室内で働く。
 あちらは3食平民が作ったもので、こちらは貴族用に作られたもののおこぼれを食べることができる。
 あちらは新品でも所詮平民仕様で、こちらはお古といえど貴族仕様の寝具や寝間着たちを使える。
 などなど。あっという間にできてしまった『差』をひとつひとつ思い浮かべ、そうしていると眠気がやってきた。

「くふふ、頑張ってくださいまし。わたくしはお屋敷の中から、応援していますわぁ」

 なので締めに醜い男を鼻で笑い、以前よりもずっと上等な環境に包まれて、眠りの世界に落ちていったのでした――。




 もうゴミ男が傍にいないから、わたくしは間違えない。
 今度こそ、幸せな人生を歩みますわ!

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