二度と会えないと思っていた、不思議な初恋の人と再会しました

柚木ゆず

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第11話 6年前 変化の理由 エリオス視点(2)

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「これは……。他貴族の、情報……?」
「そうだ。厳密に言うと、世代交代により敵対心が強くなった家の、情報だ」

 この3侯爵家は中立の立場を取っているが、どうにか出し抜こうとしている。ちょっとでもウチに隙があれば、あらゆる手を使って引きずりおろそうとしてくる。
 書類を眺めていると、すぐに補足が行われた。

「父上の他界も加わり、そちらへ干渉する余裕がない。もしもこの者達を『表向き中立』から『味方』に変える事ができたら、多少の無茶は可能なのだがな」
「……つまり……。俺がこの3家を掌握できれば、動いてもいいんだね?」
「そうなるな。しかしながら達成した場合でも、お前には順守しなければならない点が存在する」

 父さんの右の指が、静かに1本立った。

「特に国外ではどんな事情があろうとも、我が家の権力を使ってはならない。自力で明確な証拠を掴み、治安機関の手で裁けるようにしろ」
「…………最終的な鉄槌は、第三者がする。そうしておけば、どこからも文句は来ないんだね?」
「そういうことだ。3家の掌握と、先述した条件。乗り越えるべきものは、非常に多いが――。それでも」
「やるよ。当然やる」

 父さんの声を遮り、大きく首を縦に振った。

「どんなに多くても、やらないと守れない。ヤツらが、新しい何を企む前に…………もっと厄介なことになる前に、絶対達成してみせる!」
「そうか。では3侯爵家については、お前に任せたぞ」
「はい! 一日でも早く、味方につけてみせます!!」

 そうして俺の『やるべきこと』が決まり、長い長い、本当に長い戦いが始まった。

 あの時の俺はまだまだ子供で、一生懸命動き回ればどうにかなると思っていた。
 だが、現実は違う。そんなに甘くはない。この手の行動は、円滑には進んでなんてくれなかった。

 良い関係を構築する――。それはまるで、ジグソーパズルのよう。
 円満な関係完成に至るには、小さな努力の積み重ねが必要。対象が出席するパーティーに参加して自然な形で言葉を交わしたり、自然な形で恩を売ったり。怪しまれないようジワジワと、つかず離れずで、距離を縮めていかなければならない。
 おまけに――。このケースは敵対勢力なため、相性最悪からのスタート。そのため難度は更に高く、まるで1万ピース越えのパズルに挑戦しているようだった。

 だから。想定していた半分、それ以下の進捗速度になってしまって……。
 その『遅さ』が、大きな不幸を招いてしまうことになったのだった。


「エリオス、落ち着いて聞いてくれ。昨日ハンナ家の当主夫妻が、事故で亡くなられたそうだ」







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