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第2話 お屋敷を去った結果~妹と婚約者の場合~ 俯瞰視点(3)
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「……………………」
「マクサンス様!? どっ、どうされたのですか!?」
同時刻、ガズトック子爵邸。二階の廊下で主を見掛けた従者アランは、顔を見るなりギョッとしました。
――つまらなそうにしている――。
今日は最愛の人フローラが要るお屋敷に行く日で、いつもなら朝から嬉々としているのに冴えない表情を浮かべている。アランは真っ先に不調を疑い、顔を覗き込みました。
「…………体調には、問題はないようですね。安心いたしました」
「ああ、調子は悪くない。俺はいたって健康だ」
「で、では……。どう、されたのですか……?」
いつも心待ちにしていたイベントがあるというのに、まったく心躍っていない。そうなる理由に思い当たる節はなく、若干眉を顰めました。
「………………」
「……マクサンス様?」
「………………最近、フローラと過ごす時間が楽しくなくなってきたんだよ」
『ん~、そうですわね。初心者にしては、良い音が出ていると思いますわ』
『そ、そうなのか、いやぁ難しいね。フローラはすぐに吹けたと言っていたから、つい調子に乗っていたよ』
『わたくしみたいに、才がある人は稀ですわ。わたくしと比べると大分下に感じてしまうかもしれませんが、他の人と比べると遥かにお上手ですわ』
『そ、そっか。あはは、褒めてくれてありがとう』((……別に『下』とは感じていないんだが……))
フローラは嗜みとしてフルートを習っており、一緒にフルートの練習を行った時のこと。マクサンスが一生懸命出した音を聴いて、さらっと下げられたり。
『幼い頃はお菓子をつい食べ過ぎちゃって、よく隠されていたんだ! それでね、どこに隠されているか分からないから――』
『隠れて盗み聞きをした、ですか?』
『――え……。かくれ、て……?』
『おじ様やおば様達のやり取りを聞いて、特定しようとしたのはないんですの?』
『あ、ああ、いや、そう、そうなんだよ。す、すごいね、よく分かったね』((……なんで先に言うかな……))
フローラと一緒に、馬車でも移動中にお喋りをしていた時のこと。いいところで突然答えの予想を始めて、萎えてしまったり。
会うたびにモヤモヤっとすることが起きていたため、二人で過ごす時間を心から楽しめなくなっていたのです。
「…………そ、そうだったのですね……。で、でもマクサンス様。それ以上に、良いところがおありなのですよね? ねっ?」
「そう、だな。よいと感じる部分も、あるな。たくさん」
「でしたら、ソレがきっと上書きしてくれますよっ。今は悪い部分に意識がいってしまってそうなっているだけで、すぐ良い部分に注目できるようになって気も変わりますよ。わたしめも同様の経験がございますからっ!」
「そう、なのか……? …………お前は俺より、4年も長く生きているからな。そういう、ものか」
と判断しましたが、アランは主を案じて咄嗟に適当なことを口走っただけでした。ですので、そうなるとは限りませんし――
〇〇
マクサンスもフローラも、相手への不満だけを口にする。どちらも自分の言動に関する問題点はまったく意識しておらず、なんら悪いとは思っていないため――
「マクサンス様!? どっ、どうされたのですか!?」
同時刻、ガズトック子爵邸。二階の廊下で主を見掛けた従者アランは、顔を見るなりギョッとしました。
――つまらなそうにしている――。
今日は最愛の人フローラが要るお屋敷に行く日で、いつもなら朝から嬉々としているのに冴えない表情を浮かべている。アランは真っ先に不調を疑い、顔を覗き込みました。
「…………体調には、問題はないようですね。安心いたしました」
「ああ、調子は悪くない。俺はいたって健康だ」
「で、では……。どう、されたのですか……?」
いつも心待ちにしていたイベントがあるというのに、まったく心躍っていない。そうなる理由に思い当たる節はなく、若干眉を顰めました。
「………………」
「……マクサンス様?」
「………………最近、フローラと過ごす時間が楽しくなくなってきたんだよ」
『ん~、そうですわね。初心者にしては、良い音が出ていると思いますわ』
『そ、そうなのか、いやぁ難しいね。フローラはすぐに吹けたと言っていたから、つい調子に乗っていたよ』
『わたくしみたいに、才がある人は稀ですわ。わたくしと比べると大分下に感じてしまうかもしれませんが、他の人と比べると遥かにお上手ですわ』
『そ、そっか。あはは、褒めてくれてありがとう』((……別に『下』とは感じていないんだが……))
フローラは嗜みとしてフルートを習っており、一緒にフルートの練習を行った時のこと。マクサンスが一生懸命出した音を聴いて、さらっと下げられたり。
『幼い頃はお菓子をつい食べ過ぎちゃって、よく隠されていたんだ! それでね、どこに隠されているか分からないから――』
『隠れて盗み聞きをした、ですか?』
『――え……。かくれ、て……?』
『おじ様やおば様達のやり取りを聞いて、特定しようとしたのはないんですの?』
『あ、ああ、いや、そう、そうなんだよ。す、すごいね、よく分かったね』((……なんで先に言うかな……))
フローラと一緒に、馬車でも移動中にお喋りをしていた時のこと。いいところで突然答えの予想を始めて、萎えてしまったり。
会うたびにモヤモヤっとすることが起きていたため、二人で過ごす時間を心から楽しめなくなっていたのです。
「…………そ、そうだったのですね……。で、でもマクサンス様。それ以上に、良いところがおありなのですよね? ねっ?」
「そう、だな。よいと感じる部分も、あるな。たくさん」
「でしたら、ソレがきっと上書きしてくれますよっ。今は悪い部分に意識がいってしまってそうなっているだけで、すぐ良い部分に注目できるようになって気も変わりますよ。わたしめも同様の経験がございますからっ!」
「そう、なのか……? …………お前は俺より、4年も長く生きているからな。そういう、ものか」
と判断しましたが、アランは主を案じて咄嗟に適当なことを口走っただけでした。ですので、そうなるとは限りませんし――
〇〇
マクサンスもフローラも、相手への不満だけを口にする。どちらも自分の言動に関する問題点はまったく意識しておらず、なんら悪いとは思っていないため――
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