7 / 44
第3話 戻ってきたラウル オラース視点(2)
しおりを挟む
「…………………………べーかりー? ぱっ、パン屋だと!?」
臣下の一人、ドニウス――ラウルの代わりにアイツを監視していた、3人の中の1人。コイツが持ってきた情報を聞いた俺は、間抜けに声を上げていた。
自ら学院を退学して貴族籍の返上を宣言し、卿達を煽って余裕たっぷりで去ったノエル。ヤツが向かった先は、街にあるパン屋……!?
「みっ、見間違いじゃないんだろうな!? 本当にアイツはパン屋に入ったんだな⁉ 隣の建物か何かと見間違えたんじゃないのかっ!?」
「見間違いなどではなく、確実にベーカリー・『パネッタ』に入りました。この目で、3人共に目視しております故、誤りなき情報でございます」
「そ、そうか……。ち、ちなみにその…………パネッタ、だったか。それはどのような店なんだ?」
あんな態度を取っていたノエルが、普通のパン屋に入るとは思えない。そこは、何かしら特別なパン屋なのか……?
「常時30種類ほどのパンが並んでおり、焼き立てのパンとコーヒーを楽しめるイートインスペースが併設されております。地元では人気のある店だそうでして、目撃当時もなかなかの賑わいを見せておりました」
「ほ、ほう、そうか。け、経営者は、どんなヤツだ……?」
「レオニー・ザッテという、39歳の女性が経営しているようです。彼女は5年前に夫と死別しており、現在はパン職人1人とレオニーを含めた2人のホールスタッフで切り盛りしております」
「…………っ! 俺の感が、レオニー・ザッテが怪しいと訴えている! ソイツは何者なんだっ!? レオニーに関する詳細な情報はないのか!?」
「そちらは現在調査中でして、分かり次第情報をお届けする運びとなっております。ただ聞いたところによると、9年前のオープン当初は閑古鳥が鳴いており、地道な努力で成長したとのことですので。レオニー・ザッテおよび店の関係者に、特別な力はないと――」
「強い奴ほど爪を隠すのが上手いんだ!! 絶対にソイツに何かがあるっ!!」
俺自身がそうだから、よく分かるんだ。真に強い者ほど実態を見せない。周りを欺いて生きているんだ!!
「ノエルの余裕から推測するに、レオニーは高位貴族と何かしらの繋がりがあるはず。……そのコネクションを使って、俺の捏造を暴く気か……!?」
「お、オラース様。そちらは、考えすぎなのでは――」
「考えすぎなものか!! ドニウスっ、お前は新たに5人――いや7人を連れて大至急持ち場に戻れ!! ラウルっ、俺達は父上と共に対策を練るぞ!!」
俺は間抜けな臣下を一喝し、大急ぎで執務室へと駆け込む。そうしてあらゆる未来を想定し、必死になって対抗策の用意を始めたのだった――。
アイツらの収集能力があれば、半日もあれば何かしらを掴める。
……レオニー……。ヤツは、何者なんだ……!?
※明日の投稿分より、再びノエル視点となります。
臣下の一人、ドニウス――ラウルの代わりにアイツを監視していた、3人の中の1人。コイツが持ってきた情報を聞いた俺は、間抜けに声を上げていた。
自ら学院を退学して貴族籍の返上を宣言し、卿達を煽って余裕たっぷりで去ったノエル。ヤツが向かった先は、街にあるパン屋……!?
「みっ、見間違いじゃないんだろうな!? 本当にアイツはパン屋に入ったんだな⁉ 隣の建物か何かと見間違えたんじゃないのかっ!?」
「見間違いなどではなく、確実にベーカリー・『パネッタ』に入りました。この目で、3人共に目視しております故、誤りなき情報でございます」
「そ、そうか……。ち、ちなみにその…………パネッタ、だったか。それはどのような店なんだ?」
あんな態度を取っていたノエルが、普通のパン屋に入るとは思えない。そこは、何かしら特別なパン屋なのか……?
「常時30種類ほどのパンが並んでおり、焼き立てのパンとコーヒーを楽しめるイートインスペースが併設されております。地元では人気のある店だそうでして、目撃当時もなかなかの賑わいを見せておりました」
「ほ、ほう、そうか。け、経営者は、どんなヤツだ……?」
「レオニー・ザッテという、39歳の女性が経営しているようです。彼女は5年前に夫と死別しており、現在はパン職人1人とレオニーを含めた2人のホールスタッフで切り盛りしております」
「…………っ! 俺の感が、レオニー・ザッテが怪しいと訴えている! ソイツは何者なんだっ!? レオニーに関する詳細な情報はないのか!?」
「そちらは現在調査中でして、分かり次第情報をお届けする運びとなっております。ただ聞いたところによると、9年前のオープン当初は閑古鳥が鳴いており、地道な努力で成長したとのことですので。レオニー・ザッテおよび店の関係者に、特別な力はないと――」
「強い奴ほど爪を隠すのが上手いんだ!! 絶対にソイツに何かがあるっ!!」
俺自身がそうだから、よく分かるんだ。真に強い者ほど実態を見せない。周りを欺いて生きているんだ!!
「ノエルの余裕から推測するに、レオニーは高位貴族と何かしらの繋がりがあるはず。……そのコネクションを使って、俺の捏造を暴く気か……!?」
「お、オラース様。そちらは、考えすぎなのでは――」
「考えすぎなものか!! ドニウスっ、お前は新たに5人――いや7人を連れて大至急持ち場に戻れ!! ラウルっ、俺達は父上と共に対策を練るぞ!!」
俺は間抜けな臣下を一喝し、大急ぎで執務室へと駆け込む。そうしてあらゆる未来を想定し、必死になって対抗策の用意を始めたのだった――。
アイツらの収集能力があれば、半日もあれば何かしらを掴める。
……レオニー……。ヤツは、何者なんだ……!?
※明日の投稿分より、再びノエル視点となります。
13
あなたにおすすめの小説
小石だと思っていた妻が、実は宝石だった。〜ある伯爵夫の自滅
みこと。
恋愛
アーノルド・ロッキムは裕福な伯爵家の当主だ。我が世の春を楽しみ、憂いなく遊び暮らしていたところ、引退中の親から子爵家の娘を嫁にと勧められる。
美人だと伝え聞く子爵の娘を娶ってみれば、田舎臭い冴えない女。
アーノルドは妻を離れに押し込み、顧みることなく、大切な約束も無視してしまった。
この縁談に秘められた、真の意味にも気づかずに──。
※全7話で完結。「小説家になろう」様でも掲載しています。
久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
わたしはくじ引きで選ばれたにすぎない婚約者だったらしい
よーこ
恋愛
特に美しくもなく、賢くもなく、家柄はそこそこでしかない伯爵令嬢リリアーナは、婚約後六年経ったある日、婚約者である大好きな第二王子に自分が未来の王子妃として選ばれた理由を尋ねてみた。
王子の答えはこうだった。
「くじで引いた紙にリリアーナの名前が書かれていたから」
え、わたし、そんな取るに足らない存在でしかなかったの?!
思い出してみれば、今まで王子に「好きだ」みたいなことを言われたことがない。
ショックを受けたリリアーナは……。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる