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第6話 8日後~不思議なお客様~ アンジェリク・ボヌール視点(2)
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「しっ、失礼致しましたっ。ようこそパネッタへ!」
レオニーさんは、外――搬入口で作業をしていて、マリーヌさんは紙袋の補充などをするためバックヤードに行ったばかり。この場にスタッフは私しかいないものの、店内には他のお客様が6人もいらっしゃる。だから危険なことはしないと判断して、改めて挨拶を行った。
「ただいま季節のクロワッサンが焼き立てとなっておりますっ! よろしければご賞味くださいませっ!」
「…………………………。…………………………」
「お、お客様? どうかなさいましたか?」
「………………。知らない顔だな。アルバイトか?」
「は、はい。先週より、こちらで住み込みで働かせていただいております」
「…………そうか。時間を取らせて済まなかった」
私の顔をじっと見つめられていたその方は、そのあとトレーとトングを手にされて――季節のクロワッサンこと栗のクロワッサンを購入され、イートインスペースの一番奥に座られた。
「…………外はさっくり、中は程よくふわっとしていて…………栗をしっかりと活かしながらも、決して栗に頼り切ってはいない。相変わらずの旨さだな」
様子が気になるのでさり気なく様子を窺っていたら、感嘆の息と一緒に絶賛が出た。
その後も店内を眺めながら普通に召し上がられて、食べ終えるとすぐに退店されたから――。単に見かけが不審なだけの、常連様だったみたい。
((ふぅ、問題が起きなくってよかった。これで安心して、お仕事が――っっ!?))
もしかすると、そうやって安心したのがよくなかったのかもしれない。胸を撫で下ろしていたら、
「おい店員!! このパンにウジ虫がついてんぞ!!」
「あ~ぁ、こりゃ最悪だ。パンにくっつていた虫のせいで、食欲がなくなっちまったなぁ。詫びの一つでももらわないと、やってらんねぇよなぁ」
後方から怒声が響き渡り、慌てて振り返ると人相の悪い大男2人がニヤニヤしていた。
……パネッタでは、そういう部分には特に注意を払っている。それになにより――その2人が言及しているクロワッサンは焼き上がったばかりで、熱々のものに虫がくっつくはずがない。この人達はお詫び目当ての、タチの悪いクレーマーね。
「お客様は神様だよなぁ? そんな存在に、ウジがうごめいている気持ち悪いパンを見せてしまったんだ。当然、しっかりと詫びを入れるよなぁ?」
「……お客様。失礼ですが、お客様の言い分には不審な点がございます。オーナー及び公的機関の立ち合いのもと確認が必要と判断しましたので、今しばらくお待ちくだ――きゃあっ!?」
「なんだとテメェ! お客様を疑ってんのか!?」
「オレたちは被害者なんだぞ!! いいからさっさと慰謝料を寄こしやがれ!! そこからさっさと金を出せよ!!」
踵を返していた私は、それ以上動けなくなってしまった。
たぶん……調べられると困るから、脅して早く話をつけようとしてきたみたい。乱暴に手首を掴まれて、おもわず顔が歪んでしまうくらい強く握られたのだった。
レオニーさんは、外――搬入口で作業をしていて、マリーヌさんは紙袋の補充などをするためバックヤードに行ったばかり。この場にスタッフは私しかいないものの、店内には他のお客様が6人もいらっしゃる。だから危険なことはしないと判断して、改めて挨拶を行った。
「ただいま季節のクロワッサンが焼き立てとなっておりますっ! よろしければご賞味くださいませっ!」
「…………………………。…………………………」
「お、お客様? どうかなさいましたか?」
「………………。知らない顔だな。アルバイトか?」
「は、はい。先週より、こちらで住み込みで働かせていただいております」
「…………そうか。時間を取らせて済まなかった」
私の顔をじっと見つめられていたその方は、そのあとトレーとトングを手にされて――季節のクロワッサンこと栗のクロワッサンを購入され、イートインスペースの一番奥に座られた。
「…………外はさっくり、中は程よくふわっとしていて…………栗をしっかりと活かしながらも、決して栗に頼り切ってはいない。相変わらずの旨さだな」
様子が気になるのでさり気なく様子を窺っていたら、感嘆の息と一緒に絶賛が出た。
その後も店内を眺めながら普通に召し上がられて、食べ終えるとすぐに退店されたから――。単に見かけが不審なだけの、常連様だったみたい。
((ふぅ、問題が起きなくってよかった。これで安心して、お仕事が――っっ!?))
もしかすると、そうやって安心したのがよくなかったのかもしれない。胸を撫で下ろしていたら、
「おい店員!! このパンにウジ虫がついてんぞ!!」
「あ~ぁ、こりゃ最悪だ。パンにくっつていた虫のせいで、食欲がなくなっちまったなぁ。詫びの一つでももらわないと、やってらんねぇよなぁ」
後方から怒声が響き渡り、慌てて振り返ると人相の悪い大男2人がニヤニヤしていた。
……パネッタでは、そういう部分には特に注意を払っている。それになにより――その2人が言及しているクロワッサンは焼き上がったばかりで、熱々のものに虫がくっつくはずがない。この人達はお詫び目当ての、タチの悪いクレーマーね。
「お客様は神様だよなぁ? そんな存在に、ウジがうごめいている気持ち悪いパンを見せてしまったんだ。当然、しっかりと詫びを入れるよなぁ?」
「……お客様。失礼ですが、お客様の言い分には不審な点がございます。オーナー及び公的機関の立ち合いのもと確認が必要と判断しましたので、今しばらくお待ちくだ――きゃあっ!?」
「なんだとテメェ! お客様を疑ってんのか!?」
「オレたちは被害者なんだぞ!! いいからさっさと慰謝料を寄こしやがれ!! そこからさっさと金を出せよ!!」
踵を返していた私は、それ以上動けなくなってしまった。
たぶん……調べられると困るから、脅して早く話をつけようとしてきたみたい。乱暴に手首を掴まれて、おもわず顔が歪んでしまうくらい強く握られたのだった。
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