ワガママを繰り返してきた次女は

柚木ゆず

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第1話 届いて欲しい エヴァネア視点(2)

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「お姉様が初めて触れて、そこまで仰ってくださった。ずっと、一番近い距離で見てくれていた人の言葉なんですもの。無視なんてできるはずがありませんわ」
「アネッサ……!」
「お気を遣わせてしまい、すみませんでした。見つめ直し、早速行ってみますわ」

 アネッサは微苦笑を浮かべながらカーテシーを行い、傍にある椅子に腰を下ろしました。

「ごめんなさい、落ち着いて自分と向き合いたいんです。ひとりにさせていただけますか?」
「ええ、分かったわ。話を聞いてくれてありがとう」

 もっとこの場で伝えたい言葉がありましたが、邪魔をしてはいけません。微苦笑に笑顔を返し、わたしは退室。その足でお父様とお母様が待つ執務室へと向かいました。

「! エヴァネア、どうだった……?」「! どうだったかしら……?」
「見つめ直すと言ってくれましたっ。成功ですっ!」

 微苦笑を浮かべたことや気を遣わせたと言ったことなど、アネッサの自室であった出来事を全てお伝えしました。

「……エヴァネアが初めて触れた、やはりそれが効いたのだな」
「そうねあなた。心配だったけれど、やってみてよかったわね」
「はい、お母様」

 部屋で口にしたように『わたし』がこのタイミングで言い出すのは、火に油を注ぎかねないという懸念がありました。それでも一縷の望みにかけて実行してみて、本当によかったです。

「とはい――いや、なんでもない。お疲れ様、エヴァネア。食事ができるまでゆっくり休んでいてくれ」
「ずっと気を張っていたものね。しばらく休んでいて」
「そうさせていただきます」

 失敗したらあの子の人生が崩壊してしまう、大げさではなく大きな大きな分岐点でした。その分緊張感も多く、安心したら疲れがどっと出て来てしまいました。
 そこで自室に返って少し仮眠を取り、一時間ほどするとノックの音が聞こえてきました。

「お姉様、ディナーの準備ができたそうですわ。食堂に参りましょう」
「アネッサ!? わざわざありがとう」
「お姉様にはご心配をおかけしてしまったんですもの。このくらいはさせていただきますわ」

 予想外の人の声が聞こえて慌てて出てみると、爽やかさを感じる微笑みが返ってきました。

「……まったく気付きませんでしたが、わたくしは性根が曲がっているのでしょうね。だからまだ完全ではありませんが、自分の過去の言動に段々と違和感を覚えるようになってきました。お姉様がああしてくださらなければ、こんな風にはなっていなかった。感謝しています」
「そう言える人は、性根が曲がってなんていないわ。大丈夫、貴方は優しい子。ちょっと道に迷ってしまっただけよ」
「そ、そうでしょうか?」
「ええ、そうよ。ふふ。さ、行きましょうか」

 こんな風にしたのも、それこそ初めてですね。わたし達は手を繋ぎながら廊下を進み――

「あっ」

 ――階段に差し掛かった時でした。急にアネッサの足が止まったのでした。

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