4 / 16
第1話 届いて欲しい エヴァネア視点(2)
しおりを挟む
「お姉様が初めて触れて、そこまで仰ってくださった。ずっと、一番近い距離で見てくれていた人の言葉なんですもの。無視なんてできるはずがありませんわ」
「アネッサ……!」
「お気を遣わせてしまい、すみませんでした。見つめ直し、早速行ってみますわ」
アネッサは微苦笑を浮かべながらカーテシーを行い、傍にある椅子に腰を下ろしました。
「ごめんなさい、落ち着いて自分と向き合いたいんです。ひとりにさせていただけますか?」
「ええ、分かったわ。話を聞いてくれてありがとう」
もっとこの場で伝えたい言葉がありましたが、邪魔をしてはいけません。微苦笑に笑顔を返し、わたしは退室。その足でお父様とお母様が待つ執務室へと向かいました。
「! エヴァネア、どうだった……?」「! どうだったかしら……?」
「見つめ直すと言ってくれましたっ。成功ですっ!」
微苦笑を浮かべたことや気を遣わせたと言ったことなど、アネッサの自室であった出来事を全てお伝えしました。
「……エヴァネアが初めて触れた、やはりそれが効いたのだな」
「そうねあなた。心配だったけれど、やってみてよかったわね」
「はい、お母様」
部屋で口にしたように『わたし』がこのタイミングで言い出すのは、火に油を注ぎかねないという懸念がありました。それでも一縷の望みにかけて実行してみて、本当によかったです。
「とはい――いや、なんでもない。お疲れ様、エヴァネア。食事ができるまでゆっくり休んでいてくれ」
「ずっと気を張っていたものね。しばらく休んでいて」
「そうさせていただきます」
失敗したらあの子の人生が崩壊してしまう、大げさではなく大きな大きな分岐点でした。その分緊張感も多く、安心したら疲れがどっと出て来てしまいました。
そこで自室に返って少し仮眠を取り、一時間ほどするとノックの音が聞こえてきました。
「お姉様、ディナーの準備ができたそうですわ。食堂に参りましょう」
「アネッサ!? わざわざありがとう」
「お姉様にはご心配をおかけしてしまったんですもの。このくらいはさせていただきますわ」
予想外の人の声が聞こえて慌てて出てみると、爽やかさを感じる微笑みが返ってきました。
「……まったく気付きませんでしたが、わたくしは性根が曲がっているのでしょうね。だからまだ完全ではありませんが、自分の過去の言動に段々と違和感を覚えるようになってきました。お姉様がああしてくださらなければ、こんな風にはなっていなかった。感謝しています」
「そう言える人は、性根が曲がってなんていないわ。大丈夫、貴方は優しい子。ちょっと道に迷ってしまっただけよ」
「そ、そうでしょうか?」
「ええ、そうよ。ふふ。さ、行きましょうか」
こんな風にしたのも、それこそ初めてですね。わたし達は手を繋ぎながら廊下を進み――
「あっ」
――階段に差し掛かった時でした。急にアネッサの足が止まったのでした。
「アネッサ……!」
「お気を遣わせてしまい、すみませんでした。見つめ直し、早速行ってみますわ」
アネッサは微苦笑を浮かべながらカーテシーを行い、傍にある椅子に腰を下ろしました。
「ごめんなさい、落ち着いて自分と向き合いたいんです。ひとりにさせていただけますか?」
「ええ、分かったわ。話を聞いてくれてありがとう」
もっとこの場で伝えたい言葉がありましたが、邪魔をしてはいけません。微苦笑に笑顔を返し、わたしは退室。その足でお父様とお母様が待つ執務室へと向かいました。
「! エヴァネア、どうだった……?」「! どうだったかしら……?」
「見つめ直すと言ってくれましたっ。成功ですっ!」
微苦笑を浮かべたことや気を遣わせたと言ったことなど、アネッサの自室であった出来事を全てお伝えしました。
「……エヴァネアが初めて触れた、やはりそれが効いたのだな」
「そうねあなた。心配だったけれど、やってみてよかったわね」
「はい、お母様」
部屋で口にしたように『わたし』がこのタイミングで言い出すのは、火に油を注ぎかねないという懸念がありました。それでも一縷の望みにかけて実行してみて、本当によかったです。
「とはい――いや、なんでもない。お疲れ様、エヴァネア。食事ができるまでゆっくり休んでいてくれ」
「ずっと気を張っていたものね。しばらく休んでいて」
「そうさせていただきます」
失敗したらあの子の人生が崩壊してしまう、大げさではなく大きな大きな分岐点でした。その分緊張感も多く、安心したら疲れがどっと出て来てしまいました。
そこで自室に返って少し仮眠を取り、一時間ほどするとノックの音が聞こえてきました。
「お姉様、ディナーの準備ができたそうですわ。食堂に参りましょう」
「アネッサ!? わざわざありがとう」
「お姉様にはご心配をおかけしてしまったんですもの。このくらいはさせていただきますわ」
予想外の人の声が聞こえて慌てて出てみると、爽やかさを感じる微笑みが返ってきました。
「……まったく気付きませんでしたが、わたくしは性根が曲がっているのでしょうね。だからまだ完全ではありませんが、自分の過去の言動に段々と違和感を覚えるようになってきました。お姉様がああしてくださらなければ、こんな風にはなっていなかった。感謝しています」
「そう言える人は、性根が曲がってなんていないわ。大丈夫、貴方は優しい子。ちょっと道に迷ってしまっただけよ」
「そ、そうでしょうか?」
「ええ、そうよ。ふふ。さ、行きましょうか」
こんな風にしたのも、それこそ初めてですね。わたし達は手を繋ぎながら廊下を進み――
「あっ」
――階段に差し掛かった時でした。急にアネッサの足が止まったのでした。
292
あなたにおすすめの小説
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。
こんな婚約者は貴女にあげる
如月圭
恋愛
アルカは十八才のローゼン伯爵家の長女として、この世に生を受ける。婚約者のステファン様は自分には興味がないらしい。妹のアメリアには、興味があるようだ。双子のはずなのにどうしてこんなに差があるのか、誰か教えて欲しい……。
初めての投稿なので温かい目で見てくださると幸いです。
やっぱりあなたは無理でした
あや乃
恋愛
愛する婚約者とその恋人に嵌められ、断罪された挙句惨めに捨てられた侯爵令嬢フローリア・コーラル。
修道院に向かう途中で不遇の死を遂げた彼女は願った、もう一度人生をやり直したいと―― 目覚めた時彼女の時間は半年前に巻き戻っていた。
今度こそ第一王子ジュリアンの心を取り戻し「愛する人から愛される」というささやかな願いを叶えたいと奮闘するフローリアだが、半年後フローリアが断罪されたあの日が再び訪れてしまう。
同じ光景、同じ台詞、何もかもが同じ……でもたった一つだけ違っていることがあって!?
※「小説家になろう」さまにも掲載中
望まない相手と一緒にいたくありませんので
毬禾
恋愛
どのような理由を付けられようとも私の心は変わらない。
一緒にいようが私の気持ちを変えることはできない。
私が一緒にいたいのはあなたではないのだから。
両親に溺愛されて育った妹の顛末
葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。
オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。
「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」
「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」
「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」
妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。
知らぬはヒロインだけ
ネコフク
恋愛
「クエス様好きです!」婚約者が隣にいるのに告白する令嬢に唖然とするシスティアとクエスフィール。
告白してきた令嬢アリサは見目の良い高位貴族の子息ばかり粉をかけて回っていると有名な人物だった。
しかも「イベント」「システム」など訳が分からない事を言っているらしい。
そう、アリサは転生者。ここが乙女ゲームの世界で自分はヒロインだと思っている。
しかし彼女は知らない。他にも転生者がいることを。
※不定期連載です。毎日投稿する時もあれば日が開く事もあります。
うちに待望の子供が産まれた…けど
satomi
恋愛
セント・ルミヌア王国のウェーリキン侯爵家に双子で生まれたアリサとカリナ。アリサは黒髪。黒髪が『不幸の象徴』とされているセント・ルミヌア王国では疎まれることとなる。対してカリナは金髪。家でも愛されて育つ。二人が4才になったときカリナはアリサを自分の侍女とすることに決めた(一方的に)それから、両親も家での事をすべてアリサ任せにした。
デビュタントで、カリナが皇太子に見られなかったことに腹を立てて、アリサを勘当。隣国へと国外追放した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる