ワガママを繰り返してきた次女は

柚木ゆず

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第1話 届いて欲しい エヴァネア視点(1)

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「アネッサ。ちょっといいかしら?」

 アネッサが私室に入って、10分ほどが経った頃。ある程度落ち着いたタイミングで部屋の扉をノックしました。

「お姉様? どうしたんですの?」
「貴方に大事な話があるの。部屋に入らせてもらっても構わない?」
「大事? ええ、どうぞ」

 廊下で喋ると使用人に声が聞こえてしまい、きっとアネッサは嫌がる。できる限りストレスを溜めないようにして、扉を閉めました。

「お姉様、どんな御用ですの?」
「別荘で自由に過ごす、或いは家を出ていく。これらについて伝えておきたいことがあるの」
「え。お姉様が言及するだなんて、珍しいですわね」

 ずっと思うところはあったものの、3人全員で口を出すと逆効果になるから黙っていただけ。そうとは知らないアネッサは、驚きを露わにしました。

「こういうことに触れるのは、初めて、ですわよね? なんなんでしょう?」
「…………あのねアネッサ、気付いて欲しいの。これだけではなくて、ずっと前から。自分勝手な振る舞いをしていると」

 アネッサのこれまでの行動を、他人に置き換えて――自分が我が儘を受ける立場になって考えさせて気付かせるなど、いくつかのパターンを考えました。しかしながらこの子の性格を鑑みると遠回しにすればするほど逆効果だという結論が出て、これはこれで怒りを覚えてしまうと理解しつつも、敢えてストレートに伝えることにしました。

「自分が『欲しい』『やりたい』と思ったら、すぐに行動に移す。それって、相手の気持ちや都合を考えていないよね? 貴方がそうであるように、他の人だって生きているの。もう少し相手の立場になって考えれるようになって欲しいのよ」
「……………………」
「そうじゃないとね、貴方はいずれ居場所をなくしてしまう。何もかにも失う羽目になってしまうのよ」

 実は親族から『我が儘を許すな』や『好き放題するなら追い出せ』という声がずっと上がっていて、これ以上は抑えられない段階まで来てしまっている――。
 ここに関しても伏せておくべきか散々迷った結果、同様にこの子の性格を考慮して敢えて伝えました。

「貴方が最近もっとも不愉快になる原因を間接的に作っているわたしから言われて、余計に不愉快になっていると思うわ。それでもね、もうあとがないから分かって欲しかったの」
「………………」
「わたしにとって――お父様もお母様も、使用人達だって、みんなアネッサが好き。少しでも多くの幸せを感じられる人生を歩んで欲しいと思っているの。……まずはじっくり、自分の過去の行動を見つめ直してみて欲しい」

 この子は今まで一度も、自分の行動を意識したことがない。切っ掛けがあれば変われると信じて、正面にあるブラウンの瞳を見つめました。

「………………」

 アネッサはまだ、言葉を発しません。
 ぎゅっと。この部屋に入る時から右手で持っていたペンダントを軽く握りながら、彼女の反応を待ち――

「承知しましたわ。見つめ直してみます」

 ――! アネッサの顔に、微笑みが浮かんだのでした!


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