ワガママを繰り返してきた次女は

柚木ゆず

文字の大きさ
7 / 16

第3話 真意 アネッサ視点

しおりを挟む
「アネッサ。ちょっといい?」

 当分、会話もしたくない人間がやって来た。
 無視したかったけれど、そうしたらお父様達がうるさく言ってくる可能性がある。だから付き合ってあげることにしたら――案の定。わたくしは後悔する羽目になるのだった。

「…………あのねアネッサ、気付いて欲しいの。これだけではなくて、ずっと前から。自分勝手な振る舞いをしていると」

 あの人がココにやって来たのは、しょうもない説教をするため。

「自分が『欲しい』『やりたい』と思ったら、すぐに行動に移す。それって、相手の気持ちや都合を考えていないよね? 貴方がそうであるように、他の人だって生きているの。もう少し相手の立場になって考えれるようになって欲しいのよ」

 は?
 他の人間だって生きている?
 それがどうしたんですの?
 わたくしだって今まさに、一度しかない人生を歩んでいるんですのよ? 後悔しないようにしているのが、何が悪いんですの?

「そうじゃないとね、貴方はいずれ居場所をなくしてしまう。何もかにも失う羽目になってしまうのよ」

 親族が五月蠅い? そんなの放っておけばいいでしょう?
 放っておけない? だったら恐怖を植え付けて抑えつければいいでしょう?
 言うことを聞かないヤツには力ずく。痛い目に遭わせておけば大人しくなるのだから、さっさとやればいいんですのよ。
 十数年しか生きていないわたくしがポンと最適解を出せるというのに、はぁ。お父様もお母様も本当にお間抜けで、本当に腹が立ちますわ。

((でも))

 それ以上に腹が立つ言葉が、その直後にやって来た。

「貴方が最近もっとも不愉快になる原因を間接的に作っているわたしから言われて、余計に不愉快になっていると思うわ。それでもね、もうあとがないから分かって欲しかったの」

 不愉快? 当たり前でしょう!!
 アンタさえいなければわたくしがジルアール様と婚約できていたのだから!!

「わたしにとって――お父様もお母様も、使用人達だって、みんなアネッサが好き。少しでも多くの幸せを感じられる人生を歩んで欲しいと思っているの。……まずはじっくり、自分の過去の行動を見つめ直してみて欲しい」

 好き!? 幸せを感じられる人生を歩んで欲しい!?
 ふざけるな!!
 だったら言うことを聞きなさいよ!!

((……腹が立つ。腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ。許せない許せない許せない許せない許さない!!))

 ふざけた発言のオンパレードだったから、あっという間だった。苛立ちは激しい怒りへと姿を変え、激しい怒りは殺意へと変貌した。

((よく考えたら、エヴァネアが居なくなれば何もかも上手くいくんですわ))

 そう気が付いたら即座に実行したくなって、そうできるアイディアもパッと浮かんできた。とはいえいくら自然な形で仕留められると言っても、このタイミングだと怪しまれかねない。
 そこでしばらく寝かせ、適切なタイミングで実行しようとしたのだけれど――

((……駄目……。抑えきれませんわ……!!))

 ――従っているフリが激しいストレスを生んで、居ても経ってもいられなくなってしまった。だから、決行する。

「お部屋に忘れ物をしてしまいました。すぐ取ってまいりますっ」
 まずは、階段の手前で立ち止まらせる。

「お姉様、お待たせいたしましたっ」
 次にこちらに振り向かせ、階段に背を向けるようにする。

「そういうわけにはいきませんわっ。少しでもっ、待っていただく時間を減らさないと――きゃあ!?」
 最後にハプニングに見せかけて、真後ろに倒れるようにして突き落とす。

 こうすることで後頭部を強く打って死ぬようになる――のだけど、チッ。運悪く死にはしなかった。


((続けて仕掛けたら流石に怪しまれてしまう。とはいえ、いつまでも猫を被っていたらストレスで死んでしまう。できるだけ早く、次の手を打たないといけませんわね……!!))



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

両親に溺愛されて育った妹の顛末

葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。 オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。 「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」 「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」 「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」 妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~

柚木ゆず
恋愛
 今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。  お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?  ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。 戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。 愛人はリミアリアの姉のフラワ。 フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。 「俺にはフラワがいる。お前などいらん」 フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。 捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。

処理中です...