ワガママを繰り返してきた次女は

柚木ゆず

文字の大きさ
8 / 16

第4話 妹の意図 エヴァネア視点(1)

しおりを挟む
「意図的……。あの子は、事故に見せかけて貴女を突き落としたというの……!?」
「エヴァネアよ……。そう至った理由を教えておくれ」
「その結論に至ったもの、そちらは落下直後のアネッサの表情です」

『……よ、かった……。あねっさは、ぶ……』((ぁ……。あね、っさ…………))

 よかった。アネッサは無事で――。そう言おうとしていた時はまだ、偶然の事故だと思っていました。
 ですが『無事で』と言おうとしている最中に、見てしまったのです。わずかに緩んだ口元を。

「恐らく、わたしが負傷した姿を見たからでしょう。おもわず本心が漏れてしまったのです」
「「………………」」
「気のせい。見間違い。そう自分に言い聞かせようとしましたが、無理でした。あの時の記憶を思い出してみると、確かにそうなっているんです」

 一応『わたしが喋れていることへの安堵』、によって口元が緩んだ可能性があるにはあります。しかしながらあの時のわたしは、意識が朦朧としていた。意識を失う寸前だったのです。
 いくら喋れていても、ソレが安堵に繋がるはずがありません。

「そう、か。ということは……」
「はい、お父様。すべて、演技だったのです」

 考え直すなど、あの時の反応は全部が偽り。あの子はずっと、心にもない言葉を口にしていたのです。

「懸命に訴えてみましたが……届いていなかったようです……。わたしは、騙されてしまった――……いいえ。わたしは、届いたと信じたかったのかもしれません」

 わたしが注意をするのは初めて。だからといって今まで散々あのようなリアクションだったあの子が、すんなりと受け入れてくれるとは思えない。

 なんとか分かってもらいたい。
 みんなで仲良く過ごしたい。

 そんな思いによって、自分に都合の悪い部分は見ないようにしていたのかもしれません。

「……きっと、そうなのでしょう。わたし自身も、自分を騙していたのです」
「我々も、そうだよ。疑問を抱かないようにしようとしていた。都合のいい解釈をしようとしていたのだ」

 思い返せばお父様はあの時、『とはいえ』と言いかけていました。
 みんな、同じだったのですね。

「………………」
「………………」
「………………」

 なにを喋っていいのか、分からない。

「………………」
「………………」
「………………」

 室内を静寂が包み、聞こえるのは時計の中で動く針の音のみ。
 三人いるとは思えない、奇妙な時間が流れていき――そんな状態が、5分くらい過ぎたでしょうか。俯きがちになっていたお父様の顔が、不意に上がりました。


「……いつまでも、落ち込んではいられんな。アネッサへの対応を決めねばならん」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

両親に溺愛されて育った妹の顛末

葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。 オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。 「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」 「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」 「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」 妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。 戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。 愛人はリミアリアの姉のフラワ。 フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。 「俺にはフラワがいる。お前などいらん」 フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。 捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

妹の嘘を信じて婚約破棄するのなら、私は家から出ていきます

天宮有
恋愛
平民のシャイナは妹ザロアのために働き、ザロアは家族から溺愛されていた。 ザロアの学費をシャイナが稼ぎ、その時に伯爵令息のランドから告白される。 それから数ヶ月が経ち、ザロアの嘘を信じたランドからシャイナは婚約破棄を言い渡されてしまう。 ランドはザロアと結婚するようで、そのショックによりシャイナは前世の記憶を思い出す。 今まで家族に利用されていたシャイナは、家から出ていくことを決意した。

処理中です...