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第6話 決行 アネッサ視点(1)
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「お姉様。お茶に致しましょう」
不審な気配は、一切見せない。部屋に入るといつものようにベッドの傍にテーブルをセッティングして、エヴァネアをベッドの縁に座らせた。
「いつもありがとう、アネッサ」
「そんな、わたくしが好きでやっていることですわ。お気になさらないでください」
今日も今日とて『良い子』を演じ、万が一にも疑われてしまわないように、エヴァネアの前でカップに紅茶を注ぐ。
「いい香りね」
「ですよね。本日は、ローマロック地方の茶葉を使用しています」
「ローマロック。ということは……」
「はい、そうですわ。こちらで混ぜます」
わたくしが取り出したのは、シナモンスティック。
ローマロック地方では飲む前に、シナモンスティックでかき混ぜるのが定番で――今回わざわざココの茶葉を使用した理由は、ココにありますのよね。
「ではお嬢様、混ぜますね」
粉末を目の前で、気付かれずに入れるのは至難の業。そこでシナモンスティックの中に粉末を仕込み、混ぜながら溶かす。
「シナモンの風味はとても大事。しっかりと混ぜさせていただきますね」
「……………………」
「? お姉様?」
急に反応がなくなった。どうしたんですの……?
「ええ、お願いするわ。……ねえ、アネッサ」
「はい? なんでしょう?」
「なんだか急に、シナモンを入れずに飲みたくなってしまったの。悪いのだけれど、これではないものをもらえるかしら?」
「お姉様、そう仰らずに飲みましょう。シナモンにはリラックス効果があるらしく、今のお姉様にピッタリですわ」
せっかくの準備が台無しになる。大人しく飲みなさいよ。
「…………そうね、そうよね。そうするわ」
「是非、そうしてください。…………お待たせいたしました」
レロック茸の粉末が入った紅茶を差し出す。
ふふふふふ。どうぞ、わたくしの愛情がた~ぷりと入った紅茶を召し上がれ。
「ありがとうね、アネッサ」
何も知らないエヴァネアは、呑気に応じて――
「え……?」
――内心ほくそ笑んでいたわたくしは、その直後に唖然となってしまうのだった。
どういう、こと?
なんで……。
「でも、この紅茶は飲めないわ。だって、危険なものが入っているんだもの……」
カップを置いたの……?
不審な気配は、一切見せない。部屋に入るといつものようにベッドの傍にテーブルをセッティングして、エヴァネアをベッドの縁に座らせた。
「いつもありがとう、アネッサ」
「そんな、わたくしが好きでやっていることですわ。お気になさらないでください」
今日も今日とて『良い子』を演じ、万が一にも疑われてしまわないように、エヴァネアの前でカップに紅茶を注ぐ。
「いい香りね」
「ですよね。本日は、ローマロック地方の茶葉を使用しています」
「ローマロック。ということは……」
「はい、そうですわ。こちらで混ぜます」
わたくしが取り出したのは、シナモンスティック。
ローマロック地方では飲む前に、シナモンスティックでかき混ぜるのが定番で――今回わざわざココの茶葉を使用した理由は、ココにありますのよね。
「ではお嬢様、混ぜますね」
粉末を目の前で、気付かれずに入れるのは至難の業。そこでシナモンスティックの中に粉末を仕込み、混ぜながら溶かす。
「シナモンの風味はとても大事。しっかりと混ぜさせていただきますね」
「……………………」
「? お姉様?」
急に反応がなくなった。どうしたんですの……?
「ええ、お願いするわ。……ねえ、アネッサ」
「はい? なんでしょう?」
「なんだか急に、シナモンを入れずに飲みたくなってしまったの。悪いのだけれど、これではないものをもらえるかしら?」
「お姉様、そう仰らずに飲みましょう。シナモンにはリラックス効果があるらしく、今のお姉様にピッタリですわ」
せっかくの準備が台無しになる。大人しく飲みなさいよ。
「…………そうね、そうよね。そうするわ」
「是非、そうしてください。…………お待たせいたしました」
レロック茸の粉末が入った紅茶を差し出す。
ふふふふふ。どうぞ、わたくしの愛情がた~ぷりと入った紅茶を召し上がれ。
「ありがとうね、アネッサ」
何も知らないエヴァネアは、呑気に応じて――
「え……?」
――内心ほくそ笑んでいたわたくしは、その直後に唖然となってしまうのだった。
どういう、こと?
なんで……。
「でも、この紅茶は飲めないわ。だって、危険なものが入っているんだもの……」
カップを置いたの……?
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