私を捨てた元婚約者は、新しい恋人に飽きられてきたらしい

柚木ゆず

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第4話 ガーネットの会のお茶会にて シルヴィー視点

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「シルヴィー様。不躾なお話を許してくださいね」

 シモンとの縁を切ってから、6日後。サンテルク侯爵家邸のサンルームでお茶会が開かれ、それがお開きになったあとのこと。
 2人きりになったタイミングで、参加者の一人・ニコル様がペコリと頭を下げられた。
 ??? 不躾なお話……? なんなのかしら……?

「その……。ご婚約が、解消となりましたよね……? その弊害は、ありませんか? わたくしがお支えできることは、ありませんか?」

 侯爵家の娘が略奪したとなれば、大問題。そのため表向きは、『双方が相談した結果』の解消となっている。
 なのでお優しいニコル様は、『喧嘩などがあったのでは?』と感じ、案じてくださっているのだと思う。

 という予想は、きっと間違い。

((ニコル様は、メイダルン様と仲が良かった))

 そのメイダルン様は私をライバル視敵視していて、そんな私からわざわざ婚約者を奪い取ったんだもの。今の内心を知りたくて――悔しがっていたり落ち込んでいたりしないかを知りたくて、『探りを入れて』という指示が出ている可能性が高い。

((はぁ。難ありが多い貴族界でも、更に面倒な人ね。……結果を出さないと、中級上級貴族から馬鹿にされる。結果を出せば、一部に目をつけられる。どっちに転んでも災難よね))

 今日も今日とて密かにため息を吐き、げんなりする気持ちを体内から追い出す。
 貴族である以上、この問題はどうやっても付き纏うもの。気にするだけ損で、私はニコル様に対して首を左右に振った。

「お気遣い痛み入ります。お互いが納得しての、判断ですので。後悔や未練は一切なく、この胸にはスッキリとした気持ちしかございません」
「そ、そうなのですか……? 遠慮されて、本音をお隠しになられているのではありませんか……?」
「いえ、全てが本心でございます。こういった表現を使用すると、捨て台詞に聞こえるかもしれませんが――。実は彼には、問題点がありまして。そんな性質を持っている人とあの段階で縁を切れて、よかったと心より感じております」

 目の前にある瞳を見つめ、にっこりと笑う。
 あんなことを平然と行える人間に、興味なんて残っているはずがない。いくら期待しても、何も出てきませんよ。
 そう、依頼者にお伝えください。

「ニコル様、ご心配くださり感謝いたします。わたしはこのあと、とある方とお会いする約束がございますので。失礼致します」

 心の中ではあのように伝えて、表ではこのように伝える。そうして私はカーテ・シーを行い、我が家の馬車に乗り込んだのでした。

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