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第5話 ??? 手紙じゃなくて、直接来た……? ロティナ視点(1)

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「ロティナ。お前に客人だぞ」

 シモンとのお茶会を早めに切り上げてから、7日後の午前中。自室にてニコルからの手紙を待っていたら、部屋の扉がコンコンとノックされた。

「お客様? 誰が、どんな要件を持ってきたかしら……?」

 座っていたイスから立ち上がり、扉へと向かいながら首を左へと傾ける。
 今日は誰とも約束をしていないし、おまけに今は午前10時過ぎ――突然の来訪を快く思われない時間帯。そうまでしないといけない理由は、なんなのかしら……?

「お待たせしましたわ、お父様。どなたがいらっしゃっていますの?」
「ビトユール伯爵家の、ニコル嬢だ。至急伝えたい大事な話があるようだ」
「ニコル!? 至急の大事な話!?」

 おもわず、声のボリュームが跳ね上がってしまう。
 手紙を、と約束をしていたのに。いったい何があったというの……?

「ニコル嬢は、応接室にお通ししている。ロティナ」
「ええっ。ただちに向かいますわっ」

 理由を早く知りたくて、わたしは即座に動き出す。限りなく『走る』に近い早歩きで廊下と階段を通って1階に降り、もう一度廊下を進んで豪華な装飾が施された扉を開ける。
 そうするとそこにはガラス製のテーブルなどが配置された広々とした空間があり、わたしが入るやニコルが立ち上がった。

「ロティナ様っ。お手紙ではなく、こういった形となったことをお許しください」
「それだけのことが、あったのでしょう? 何があったか教えて頂戴」

 ニコルに対して首を振り、立ったままで話を続ける。
 悠長に座っている暇なんて、ない。一秒でも早く聞きたい。

「は、はいっ。わたくしは昨日のお茶会で、シルヴィー様にお尋ねしましたの。そうしたら……」
「そうしたら? なに?」
「………………落ち着いて、お聞きください」

 ごくり。そわそわしながらそんなことを言い出したものだから、わたしは溜まっていた唾液を飲み込んで顎を引く。そうしたらニコルは恐る恐る、

「シルヴィー様は……。怒っている事も、落ち込んでいる事も、後悔している事もありませんでした。むしろそれどころか……。すっきりとされていたのです……っ」

 確かに、そうだった。前置きがなければ大声を出してしまっていたことを、わたしに告げた。

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