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第6話 3週間後~偶然と必然から生まれた、悲劇(その1)~ 俯瞰視点(2)
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「父上! 最高の儲け話をお教えしましょう!!」
部屋を飛び出したバジルが向かったのは、父エドメがいる執務室。ノックをして勢いよく入室した彼は、満面の笑みを浮かべました。
「もうけ、ばなし……? と、とりあえず話を聞こう。なんなのだ……?」
「南側に位置する隣国『ベルロード』の、『ザンダテールズ焼き』を片っ端から輸入してください! そうすれば最低でも仕入れ値の5倍の価格で売ることができるのですよ!」
「ザンダテールズ焼きだと……!? なぜ、そんなものがそんな高値になるのだ……?」
ザンダテールズ地方でのみ製造される陶器。ソレは歴史こそあるもののセンスが古臭いと言われていて、国内外で――この国ランドラ―ズンでも人気がありません。
まるで人気がないものに価値が出るはずがなく、エドメは眉根を寄せました。
「そんなものを扱ってしまえば、赤字は確定的だというのに……。お前はどういう理由で明言しているのだ……?」
「ふふふ、それはですねえ。……全ての始まりは、5か月後――来年の1月18日。ザンダテールズ地方を訪れた放浪中の世界的に有名な画家がザンダテールズ焼きの製造工程に感銘を受け、ソレを絵にして発表したことが切っ掛け。それによって瞬く間にベルロード国内外でザンダテールズ焼きが再評価されることとなり、特に古いものの価値は高騰するのですよ」
「……バジル。どうしてお前が、そんな先の話を知って――っ! そうか! そういうことか!!」
「ええ、そういうことです。俺は巻き戻りによって、一年先までの未来を知っている。だから今後起きることが分かっているのですよ」
実際にその状況を経験している。故にバジルは断言できたのです。
「アナとの繋がりが実現したことで、すっかり忘れてしまっていました。逆行前の父上は流行に乗り遅れて悔しがっていましたが、今回はしっかりと波に乗れるのですよ」
「よくやったぞバジル!! 早速手配をしよう!!」
「古ければ古いほど高値がつきますが、製造に少々時間がかかるため比較的最近のものでも値段がつきます。とにかく手当たり次第仕入れてください」
「ああ分かった! では――ん? どうしたのだ?」
急いで部屋を出ようとしていたら、バジルが右の手のひらを突き出して制しました。
「父上。俺のおかげで、『億』規模の利益を得られるようになりましたよね?」
「あ、ああ。そうだな」
「その褒美報酬として、毎月100――200万ルーラル上乗せした、270万の提供を希望します。もちろん、構いませんよね?」
目玉が飛び出るような魅力的な情報を教え、そのお礼として金をもらう。その金を使って、最愛の人にプレゼントをする。
それが、彼の閃きでした。
「功労者は称えねばならんからな。約束しようじゃないか!」
「ありがとうございます!」
「はははっ、礼を言うのはこちらだ! では手配に取り掛かる」
「はい! お互い幸せで何よりですよ」
そうしてバジルは毎月270万ルーラルの確保に成功し、無事毎月アナに満足のいくプレゼントを渡せるようになりました。
((くくく、こんなところにもメリットがあるだなんてな。ランドラ―ズン様に感謝だ!))
その結果、そんな風に大喜びしていた彼ですが――
部屋を飛び出したバジルが向かったのは、父エドメがいる執務室。ノックをして勢いよく入室した彼は、満面の笑みを浮かべました。
「もうけ、ばなし……? と、とりあえず話を聞こう。なんなのだ……?」
「南側に位置する隣国『ベルロード』の、『ザンダテールズ焼き』を片っ端から輸入してください! そうすれば最低でも仕入れ値の5倍の価格で売ることができるのですよ!」
「ザンダテールズ焼きだと……!? なぜ、そんなものがそんな高値になるのだ……?」
ザンダテールズ地方でのみ製造される陶器。ソレは歴史こそあるもののセンスが古臭いと言われていて、国内外で――この国ランドラ―ズンでも人気がありません。
まるで人気がないものに価値が出るはずがなく、エドメは眉根を寄せました。
「そんなものを扱ってしまえば、赤字は確定的だというのに……。お前はどういう理由で明言しているのだ……?」
「ふふふ、それはですねえ。……全ての始まりは、5か月後――来年の1月18日。ザンダテールズ地方を訪れた放浪中の世界的に有名な画家がザンダテールズ焼きの製造工程に感銘を受け、ソレを絵にして発表したことが切っ掛け。それによって瞬く間にベルロード国内外でザンダテールズ焼きが再評価されることとなり、特に古いものの価値は高騰するのですよ」
「……バジル。どうしてお前が、そんな先の話を知って――っ! そうか! そういうことか!!」
「ええ、そういうことです。俺は巻き戻りによって、一年先までの未来を知っている。だから今後起きることが分かっているのですよ」
実際にその状況を経験している。故にバジルは断言できたのです。
「アナとの繋がりが実現したことで、すっかり忘れてしまっていました。逆行前の父上は流行に乗り遅れて悔しがっていましたが、今回はしっかりと波に乗れるのですよ」
「よくやったぞバジル!! 早速手配をしよう!!」
「古ければ古いほど高値がつきますが、製造に少々時間がかかるため比較的最近のものでも値段がつきます。とにかく手当たり次第仕入れてください」
「ああ分かった! では――ん? どうしたのだ?」
急いで部屋を出ようとしていたら、バジルが右の手のひらを突き出して制しました。
「父上。俺のおかげで、『億』規模の利益を得られるようになりましたよね?」
「あ、ああ。そうだな」
「その褒美報酬として、毎月100――200万ルーラル上乗せした、270万の提供を希望します。もちろん、構いませんよね?」
目玉が飛び出るような魅力的な情報を教え、そのお礼として金をもらう。その金を使って、最愛の人にプレゼントをする。
それが、彼の閃きでした。
「功労者は称えねばならんからな。約束しようじゃないか!」
「ありがとうございます!」
「はははっ、礼を言うのはこちらだ! では手配に取り掛かる」
「はい! お互い幸せで何よりですよ」
そうしてバジルは毎月270万ルーラルの確保に成功し、無事毎月アナに満足のいくプレゼントを渡せるようになりました。
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