結婚式当日。婚約者様は、時間を巻き戻したいと仰りました

柚木ゆず

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第12話 待ち構えられてた、その裏側 俯瞰視点

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((…………よくよく考えてみたら。バジル達は、気になることを言っていたわね))

 それはバジル達と決別して、2時間ほどが経った頃。寮内の自室で、バジルとの関係がなくなったという噂をどう広めるか? その方法が決まったあとのことでした。
 働いた自分へのご褒美として紅茶を飲んでいたアナは、

『いつか必ず復讐してやるからな……!! 覚えていろ……!!』
『この屈辱、忘れんからな……!!』

 という、背後から飛んできた呪詛を思い出していました。

((……あの二人は逃亡するつもりだけど、追及してきた叔父達には嘘をついたまま。その気になればお屋敷に戻って、金品を持った上で蒸発することもできるのよね))

 言動を見るに、あの時のバジル達にはそんな考えはなかった。
 だけど以降に思い付く可能性は、ある。大いにある。
 そして二人が持ち出せるものは『裕福な伯爵家』が購入したソレで、恐らく高値がつく。そんなものを大量に持ち出せたら『軍資金』を確保できて、そのお金で――もしくは増やした金を使って、いずれ何かしらを仕掛けてくる危険性がある。
 あっという間に、そんな考えが浮かび上がりました。

((……そうなったら、面倒ね))

 厄介な芽は速やかに排除しておく。それがアナの考えで、彼女はすぐに動き出します。

「ワズテイルズ家に、あの件を報告しておきましょう」

 未来は変わっていて、買い漁ったものは高騰しないとバジル達は確信していること――。
 自分のもとに、匿ってもらおうとしていたこと――。
 金品を持ち出して、そのまま逃亡する可能性があること――。
 それらを記した便箋と、

「新生した伯爵家から怨みを買う可能性もあるものね。これとこれは手放しておきましょうか」

 バジルからもらったプレゼントのうち2つを『大変なことになっていると知り、贈られたものをすべて・・・お返しします』というメッセージを添えて同封し、学院に依頼して早馬に――バジル達よりも早く着くように、届けさせたのでした。

『…………茶に混ぜた薬が効いたようだ。そろそろ良い頃合いだろう』
『…………そうですね。始めましょう』

 そのため屋敷の住人は企みを把握しており、それも罠。バジル達を油断させるなどの目的で引っかかったフリをしていただけで――

「旦那様、坊ちゃま。どちらに行(ゆ)かれるのですか?」

 ――家令達は万全の状態で、待ち構えることができていたのでした。









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