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第5話 言及しておかないといけないこと アルマ視点(2)
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「王太子タデウスの判断により、王太子と聖女の間で結ばれていた婚約は解消された。そちらの流布をお願い致します」
二つ目の『言っておかなければならない』、はコレ。全国民が勘違いしたままだと様々な面に支障が出てしまうため、認知度が100%となるようお願いをした。
唯一、わたしの我が儘となるお願いをした。
「まっ、待ってくれアルマっ。俺は王太子で君は聖女なんだ! 国内外の影響などによって、婚約関係にないといけないんだよっ」
「そうですね、そういった理由で関係を結んでおりました。ですが貴方様は、自らの御意思で解消されましたよね? そんな方と再び関係なんて持てませんよ」
それだけじゃない。
私的な部分を挙げると、マイユールやお父様を平気な顔をして傷つけた人だから。
客観的な部分を挙げると、その婚約は『威張り』を増長させただけだったから。
以前の関係に戻すつもりはない。
「ごっ、ごめんっ。悪かった! 全部反省していてもう二度とあんな真似はしないと約束する! 誓うからっ、以前の関係に戻って欲しいんだっ。お願いだよアルマっ!」
決まっていた婚約が解消したとなると、事細かに事情を話さないといけない。ご自身の暴挙が明るみになり、これまでのキャラクターが――民の前で演じていた『真面目で気さくで心優しい王太子』が崩壊してしまう。
支持の激減および非難の増加を恐れ、殿下は――陛下や妃殿下、第二第三王子殿下も、顔面蒼白で懇願を始めた。
「この通りだっ、頼むよアルマっ。生まれ変わると約束するから! また関係を戻して、俺の婚約者になって欲しいっ。なってください!」
「……お断ります」
「きっ、君を一番幸せにできるのは俺なんだよっ。なんでも言うことを聞ける地位も財力もあってっ、世界で一番の幸せを届けるっ! 今度こそ薔薇色の人生を保証するからっ、戻ってきて欲しいっ。お願いします」
「お断ります」
一番の幸せをもたらしてくれるのは、この方じゃない。わたしが望むのは、なんでも言うことを聞く人でもそれを実現できる地位と財力がある人でもない。
あまりにも的外れな内容を吐き出す殿下に呆れの息を吐き、わたしはゆっくりとカーテシーを行った。
「殿下、陛下、妃殿下。他国王族との会談など、国にとって必要不可欠な行事には変わらず参加致しますのでご安心を。……それでは失礼致します」
「まっ、待ってくれ――」「まっ、待って――」「待ってちょうだ――」
「移動やソル神殿へのご挨拶などがありますので、これ以上お付き合いできる余裕はございません。皆様、失礼致します」
涙目になられても、この人達が相手なら特に何も感じない。わたしは縋る視線に微笑みをお返しし、体勢を180度変えて背を向ける。
そうしてマイユールのエスコートで停まっていた馬車に乗り込み、4年間生活した場所に、4年間関係を持った人達に、別れを告げたのでした――。
二つ目の『言っておかなければならない』、はコレ。全国民が勘違いしたままだと様々な面に支障が出てしまうため、認知度が100%となるようお願いをした。
唯一、わたしの我が儘となるお願いをした。
「まっ、待ってくれアルマっ。俺は王太子で君は聖女なんだ! 国内外の影響などによって、婚約関係にないといけないんだよっ」
「そうですね、そういった理由で関係を結んでおりました。ですが貴方様は、自らの御意思で解消されましたよね? そんな方と再び関係なんて持てませんよ」
それだけじゃない。
私的な部分を挙げると、マイユールやお父様を平気な顔をして傷つけた人だから。
客観的な部分を挙げると、その婚約は『威張り』を増長させただけだったから。
以前の関係に戻すつもりはない。
「ごっ、ごめんっ。悪かった! 全部反省していてもう二度とあんな真似はしないと約束する! 誓うからっ、以前の関係に戻って欲しいんだっ。お願いだよアルマっ!」
決まっていた婚約が解消したとなると、事細かに事情を話さないといけない。ご自身の暴挙が明るみになり、これまでのキャラクターが――民の前で演じていた『真面目で気さくで心優しい王太子』が崩壊してしまう。
支持の激減および非難の増加を恐れ、殿下は――陛下や妃殿下、第二第三王子殿下も、顔面蒼白で懇願を始めた。
「この通りだっ、頼むよアルマっ。生まれ変わると約束するから! また関係を戻して、俺の婚約者になって欲しいっ。なってください!」
「……お断ります」
「きっ、君を一番幸せにできるのは俺なんだよっ。なんでも言うことを聞ける地位も財力もあってっ、世界で一番の幸せを届けるっ! 今度こそ薔薇色の人生を保証するからっ、戻ってきて欲しいっ。お願いします」
「お断ります」
一番の幸せをもたらしてくれるのは、この方じゃない。わたしが望むのは、なんでも言うことを聞く人でもそれを実現できる地位と財力がある人でもない。
あまりにも的外れな内容を吐き出す殿下に呆れの息を吐き、わたしはゆっくりとカーテシーを行った。
「殿下、陛下、妃殿下。他国王族との会談など、国にとって必要不可欠な行事には変わらず参加致しますのでご安心を。……それでは失礼致します」
「まっ、待ってくれ――」「まっ、待って――」「待ってちょうだ――」
「移動やソル神殿へのご挨拶などがありますので、これ以上お付き合いできる余裕はございません。皆様、失礼致します」
涙目になられても、この人達が相手なら特に何も感じない。わたしは縋る視線に微笑みをお返しし、体勢を180度変えて背を向ける。
そうしてマイユールのエスコートで停まっていた馬車に乗り込み、4年間生活した場所に、4年間関係を持った人達に、別れを告げたのでした――。
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