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第5話 言及しておかないといけないこと アルマ視点(1)

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「神殿長様。わたしは金輪際、ここルナ神殿を訪れることはありません。今後は『ソル神殿』を拠点とし、そちらで聖女としての活動を行います」

 それが、一つ目の言っておかなければならないもの。
 神殿は各地に建っていて、聖女の移動時に備え、すべての場所に祈祷用の魔法陣が設置されている。そのためどこで祈りを捧げても効果は同じで、以降はそこで活動をしてゆく。

「な!? アルマ様!? なぜそのようなことを仰るのですか!?」
「今まで散々申し上げたのに、まだ分からないのですか? 貴方様、そして皆様は、優越感に浸るどうしようもない方々だからですよ」

 国で一番大きく由緒正しい神殿で、トップを務めている。国で一番大きく由緒正しい神殿に、籍を置いている。
 この人達は胡坐を掻き、事あるごとに衛兵様やその他の神殿に属する方々を軽視してきた。それが、そうする理由。

「対して、ソル神殿の皆様は貴方がたと正反対。裏表のない誠実な方々なので、お世話になろうと思ったのですよ」

 その神殿は国内で下から4番目の規模で、振り当てられている予算も少ない。けれど規模も予算も多いルナ神殿以上に奉仕活動などをされていて、訪れた際は国内で最も素敵な方の集まる神殿だと感じていたのです。

「祈祷は、毎日行わなければ国に、民に甚大な被害が出てしまいます。そのためこれから移動を行いますので、あちらにあるエンブレムは回収させていただきますね」

 本当はマイユールとゆっくり過ごしたかったけど、聖女に戻った以上やるしかない。わたしは『聖女所属』の証を一瞥し、チョコンと膝を曲げて見せた。

「神殿長様。お手数ではございますが、そちらの取り外しをお願い致します」
「おっ、お待ちくださいアルマ様!! なにとぞお考え直しを!!」
「「「「「聖女様っ。お願い致します!」」」」」

 聖女が神殿を移動した。それは全体未聞の出来事で、評判の面で神殿や自分自身にあまりにも大きなダメージを受けてしまう。
 今までのように威張れなくなるし、慕われなくなってしまう。
 とにかく『今』を守るため、ルナ神殿の聖職者は全員が両ひざをついた。

「以降は心を入れ替え精神誠意尽くすと誓います! どうかっ、どうかお考え直しを!」
「「「「「聖女様!! 全員が反省しておりますっ。一度だけチャンスをくださいませ――」」」」」
「見苦しいぞお前達! アルマが『出る』と言っているんだ! 素直に従え!!」

 所属が変わっても、自分にはノーダメージ。そんな理由で殿下は神殿長様たちを一喝し、臣下に命じて問答無用でエンブレムを取り外した。

「アルマ、エンブレムを回収しました。他に、何かあるかな? 俺にできることがあればなんでも喜んで動かすから、なんなりと言って欲しい」
「……そうですか。では――」

 二つ目の、言っておかなければならないこと。殿下に関するものを、お伝えします。
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