14 / 17
第6話 戦いを終えて(4)
しおりを挟む
「記憶の回復には個人差がありまして、1年~2年となっています。その間『人』として好きなように過ごしていただき、蘇ったら『現状維持』『回帰』のお好きな選択をしていただく。一番良い未来を生み出すための、主従契約なのですよ」
冬馬は自身の経験も含め、すべてを詳説。懇切丁寧に理由を説明しました。
「長々とご清聴ありがとうございます。ご質問などがありましたら、なんなりと答えさせていただきます」
「…………………………神宮寺冬馬、と言ったな? その契約は、ちゃんと解除できるんだよな?」
あちらが『主』で自分が『従』。
契約が結ばれたら、『従』は『主』に逆らえなくなる。
もしも『主』が『自害せよ』と言ったら『従』の意思に関係なく自害するし、『〇〇を殺せ』と言ったら殺さなくてはならない。
現付喪神、かつては精霊であるが故に、記憶はなくとも本能的に『契約』の危険性を理解していました。
「立場を利用して無茶な命令をされる、そんなこともないんだよな……?」
「双方の合意があればいつでも解除できますし、道理に反した行いは決して致しません」
「私は彼と偶然契約を交わして、12年が経ちます。その間一度たりとも、懸念されている事態は発生しておりませんよ」
「……と、言うように命令されている可能性がある。そもそも命令によって、すでに唯々諾々と従う傀儡にされている可能性だってある」
本能に刻まれた事実が警戒心を増幅させ、冬馬に怪訝な視線が注がれます。
「暴走の件に、嘘はないんだろう。だがソレを使って信用させようとしている可能性は、0ではない」
「仰る通りです。そしてそちらだけではなく鏡さんの点も含め、証明する手立てはございません」
「…………………………神宮寺冬馬」
ぽつりと。しばらく黙考したあと、付喪神は呟きました。
「もしその男との経緯が事実だったとしてだ。俺には曾祖父の面影も関係性もなく、一切の縁がない。だろう?」
「そうですね。仰る通りです」
「なのになぜ、そこまでしようとする? どうなろうが関係はないはずの存在を、なぜ懸命に助けようとする?」
裏があるとしか、思えないんだが?――。
今度は、猜疑心をたぶんに含んだ視線が到来しました。
「理由。理由を、聞かせてくれ」
「畏まりました。『この手が届く範囲に困っている存在がいると気付いて、自分には打開できる才能? があるから』。以上が理由になります」
「………………。は?」
付喪神の目は丸くなり、口はポカンと開きました。
冬馬は自身の経験も含め、すべてを詳説。懇切丁寧に理由を説明しました。
「長々とご清聴ありがとうございます。ご質問などがありましたら、なんなりと答えさせていただきます」
「…………………………神宮寺冬馬、と言ったな? その契約は、ちゃんと解除できるんだよな?」
あちらが『主』で自分が『従』。
契約が結ばれたら、『従』は『主』に逆らえなくなる。
もしも『主』が『自害せよ』と言ったら『従』の意思に関係なく自害するし、『〇〇を殺せ』と言ったら殺さなくてはならない。
現付喪神、かつては精霊であるが故に、記憶はなくとも本能的に『契約』の危険性を理解していました。
「立場を利用して無茶な命令をされる、そんなこともないんだよな……?」
「双方の合意があればいつでも解除できますし、道理に反した行いは決して致しません」
「私は彼と偶然契約を交わして、12年が経ちます。その間一度たりとも、懸念されている事態は発生しておりませんよ」
「……と、言うように命令されている可能性がある。そもそも命令によって、すでに唯々諾々と従う傀儡にされている可能性だってある」
本能に刻まれた事実が警戒心を増幅させ、冬馬に怪訝な視線が注がれます。
「暴走の件に、嘘はないんだろう。だがソレを使って信用させようとしている可能性は、0ではない」
「仰る通りです。そしてそちらだけではなく鏡さんの点も含め、証明する手立てはございません」
「…………………………神宮寺冬馬」
ぽつりと。しばらく黙考したあと、付喪神は呟きました。
「もしその男との経緯が事実だったとしてだ。俺には曾祖父の面影も関係性もなく、一切の縁がない。だろう?」
「そうですね。仰る通りです」
「なのになぜ、そこまでしようとする? どうなろうが関係はないはずの存在を、なぜ懸命に助けようとする?」
裏があるとしか、思えないんだが?――。
今度は、猜疑心をたぶんに含んだ視線が到来しました。
「理由。理由を、聞かせてくれ」
「畏まりました。『この手が届く範囲に困っている存在がいると気付いて、自分には打開できる才能? があるから』。以上が理由になります」
「………………。は?」
付喪神の目は丸くなり、口はポカンと開きました。
11
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
呪われた少女の秘された寵愛婚―盈月―
くろのあずさ
キャラ文芸
異常存在(マレビト)と呼ばれる人にあらざる者たちが境界が曖昧な世界。甚大な被害を被る人々の平和と安寧を守るため、軍は組織されたのだと噂されていた。
「無駄とはなんだ。お前があまりにも妻としての自覚が足らないから、思い出させてやっているのだろう」
「それは……しょうがありません」
だって私は――
「どんな姿でも関係ない。私の妻はお前だけだ」
相応しくない。私は彼のそばにいるべきではないのに――。
「私も……あなた様の、旦那様のそばにいたいです」
この身で願ってもかまわないの?
呪われた少女の孤独は秘された寵愛婚の中で溶かされる
2025.12.6
盈月(えいげつ)……新月から満月に向かって次第に円くなっていく間の月
没落貴族か修道女、どちらか選べというのなら
藤田菜
キャラ文芸
愛する息子のテオが連れてきた婚約者は、私の苛立つことばかりする。あの娘の何から何まで気に入らない。けれど夫もテオもあの娘に騙されて、まるで私が悪者扱い──何もかも全て、あの娘が悪いのに。
【完結】『左遷女官は風花の離宮で自分らしく咲く』 〜田舎育ちのおっとり女官は、氷の貴公子の心を溶かす〜
天音蝶子(あまねちょうこ)
キャラ文芸
宮中の桜が散るころ、梓乃は“帝に媚びた”という濡れ衣を着せられ、都を追われた。
行き先は、誰も訪れぬ〈風花の離宮〉。
けれど梓乃は、静かな時間の中で花を愛で、香を焚き、己の心を見つめなおしていく。
そんなある日、離宮の監察(監視)を命じられた、冷徹な青年・宗雅が現れる。
氷のように無表情な彼に、梓乃はいつも通りの微笑みを向けた。
「茶をお持ちいたしましょう」
それは、春の陽だまりのように柔らかい誘いだった——。
冷たい孤独を抱く男と、誰よりも穏やかに生きる女。
遠ざけられた地で、ふたりの心は少しずつ寄り添いはじめる。
そして、帝をめぐる陰謀の影がふたたび都から伸びてきたとき、
梓乃は自分の選んだ“幸せの形”を見つけることになる——。
香と花が彩る、しっとりとした雅な恋愛譚。
濡れ衣で左遷された女官の、静かで強い再生の物語。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる