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12 あたし達が解決! (1)
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あたしたちが駆けつけると、やっぱりそう。
黒い服に茶色いズボンの男の子――トラヒコくんが、人が外に落ちないように区切ってある柵を跨いでいた。
「きっ、君は何をしているんだ! 危ないから離れなさい!!」
「ここは6階なんだぞっ! 早く降りるんだ!!」
「警備員のオジサン達、心配要らないよ。俺は、落ちはしないからさ」
トラヒコくんは呑気に笑って、右手をゆっくり左右に動かす。
モミジちゃんが言ってたけどここは『吹き抜け』という造りになっていて、1階まで見下ろせる。つまりここから落ちると絶対に死んじゃうから、どうにかしないと大変だ……っ。
「それにさ、柵の上――手すりに立ったらそっちに戻る。安心してよ」
どうしようか考えてたら、トラヒコくんはもっと怖いコトを言い出した。
そ、そこで立つ、の……?
「なっ、立つだって……!? ど、どうしてキミはそんな真似をするんだ……!?」
「俺はこんなに勇敢なのに、なぜか同級生は『もう少し勇気を出してみたらどうかな?』と心配そうに言ってきてね。そういう変な勘違いをなくすために、1番危ない場所でそうじゃないって証明するんだよ」
(アコヘンのせいで彼は、昔から今の自分だったと思い込んでいる。だから周囲の評価をおかしいと感じてしまい、行動を起こしたのね……)
自分はこんなにも勇敢なのに、周りは違うって言う。
違うトラヒコくんになっちゃってるから、優しさが伝わらないんだね……。
「こういう時は、本人が満足するまでやめはしない。例え家族が説得したとしても、受け入れはしないわ」
「だよ、ねぇ……。でも、このままだと失敗しちゃう……」
10センチもないところに立つのは、無理。必ず落ちちゃうよ。
「私も、それは理解しているわ。けれど下手に動くと暴れて、結局落ちてしまうのよ」
「ぁぅぅ。どうすれば、いーのかな……?」
「彼の成功を、祈るしかない。これが精一杯よ」
大人の警備員さんたちが傍にいるけど、何もできないんだもん。
子どものあたしたちはもっと、何もできないよね……。
「俺だって落ちるのは嫌で、注意してやる。だから静かに見ていてよ」
「…………わ、わかった。我々はここで見守る。ただし危ないと感じたら、すぐに降りるんだぞ?」
「はいはい。それじゃあやるから、ちゃんと見ててくれよ」
トラヒコくんは満足そうなお顔をして、立つ準備を始める。
まずは跨いでいる右足を手すりにのっけて、バランスを調整。滑りやすいから慎重に立ち上がる用意をして、次は左足を動かす。
「ここからが、難しい。集中してるから、静かに頼むよ」
「「「「「………………」」」」」
警備員さん。あたしたち。他のお客さんたち。駆けつけたパパさんママさんたち。ユーカとユーナ。
みんな声を出したいけど出さずに、心配そうに見守る。
「バランスに、気を付けながら……。足を動かして……」
「「「「「………………」」」」」
「その足を、慎重に、ここに持ってきて……」
「「「「「………………」」」」」
「今度は、もう片方をゆっくり上げて……。落ちないように、注意しながら……。しっかりそこに乗せ――ぅわ!?」
右手がつるっと滑って、体が外に倒れそうになった!
大変っ! このままだと落ちちゃうっっ!!
黒い服に茶色いズボンの男の子――トラヒコくんが、人が外に落ちないように区切ってある柵を跨いでいた。
「きっ、君は何をしているんだ! 危ないから離れなさい!!」
「ここは6階なんだぞっ! 早く降りるんだ!!」
「警備員のオジサン達、心配要らないよ。俺は、落ちはしないからさ」
トラヒコくんは呑気に笑って、右手をゆっくり左右に動かす。
モミジちゃんが言ってたけどここは『吹き抜け』という造りになっていて、1階まで見下ろせる。つまりここから落ちると絶対に死んじゃうから、どうにかしないと大変だ……っ。
「それにさ、柵の上――手すりに立ったらそっちに戻る。安心してよ」
どうしようか考えてたら、トラヒコくんはもっと怖いコトを言い出した。
そ、そこで立つ、の……?
「なっ、立つだって……!? ど、どうしてキミはそんな真似をするんだ……!?」
「俺はこんなに勇敢なのに、なぜか同級生は『もう少し勇気を出してみたらどうかな?』と心配そうに言ってきてね。そういう変な勘違いをなくすために、1番危ない場所でそうじゃないって証明するんだよ」
(アコヘンのせいで彼は、昔から今の自分だったと思い込んでいる。だから周囲の評価をおかしいと感じてしまい、行動を起こしたのね……)
自分はこんなにも勇敢なのに、周りは違うって言う。
違うトラヒコくんになっちゃってるから、優しさが伝わらないんだね……。
「こういう時は、本人が満足するまでやめはしない。例え家族が説得したとしても、受け入れはしないわ」
「だよ、ねぇ……。でも、このままだと失敗しちゃう……」
10センチもないところに立つのは、無理。必ず落ちちゃうよ。
「私も、それは理解しているわ。けれど下手に動くと暴れて、結局落ちてしまうのよ」
「ぁぅぅ。どうすれば、いーのかな……?」
「彼の成功を、祈るしかない。これが精一杯よ」
大人の警備員さんたちが傍にいるけど、何もできないんだもん。
子どものあたしたちはもっと、何もできないよね……。
「俺だって落ちるのは嫌で、注意してやる。だから静かに見ていてよ」
「…………わ、わかった。我々はここで見守る。ただし危ないと感じたら、すぐに降りるんだぞ?」
「はいはい。それじゃあやるから、ちゃんと見ててくれよ」
トラヒコくんは満足そうなお顔をして、立つ準備を始める。
まずは跨いでいる右足を手すりにのっけて、バランスを調整。滑りやすいから慎重に立ち上がる用意をして、次は左足を動かす。
「ここからが、難しい。集中してるから、静かに頼むよ」
「「「「「………………」」」」」
警備員さん。あたしたち。他のお客さんたち。駆けつけたパパさんママさんたち。ユーカとユーナ。
みんな声を出したいけど出さずに、心配そうに見守る。
「バランスに、気を付けながら……。足を動かして……」
「「「「「………………」」」」」
「その足を、慎重に、ここに持ってきて……」
「「「「「………………」」」」」
「今度は、もう片方をゆっくり上げて……。落ちないように、注意しながら……。しっかりそこに乗せ――ぅわ!?」
右手がつるっと滑って、体が外に倒れそうになった!
大変っ! このままだと落ちちゃうっっ!!
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