気付いてくれたのは、わたしを嫌っていたはずの婚約者でした

柚木ゆず

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第10話 180 マティルド視点(2)

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「さっきまで食事をしていたはずなのに……!? おっ、お母様!! どうなっているので――…………」

 一番近くに居たお母様に訴えていたら、言葉を失った。言葉を発する、精神的な余裕がなくなった。
 どうして……? なぜ……?

 ここにあるはずのないわたくしの身体がいるの!?
 エレノオールが自由になってるの!?

「理由を知りたいか? 教えてやろう」
「お、おと……。おとう、さま……?」
「お前が拘束されて、居るはずのない人間がいる。その理由は、ようやく気付けたからなのだよ。入れ替わりは事実だった、とな」

 ………………。
 わたくしの身体に入っているのはエレノオールで、エレノオールの身体に入っているのはわたくし。
 気が、付かれている……!?

「な、なにを、仰っているの、ですか……? わたしは、エレノオールですよ……?」
「違う。お前はエレノオールではなく、マティルドだ」
「違いますっ。わたくしはエレノオールです! まさか今更になってあの子の言い分を信じるようになってしまったのですかっ!?」
「それも、違う。お前の身体から、あの日訴えていた『赤い宝石』2つが出てきたからだ」

 っ!?
 ない!!
 隠していたのにっ、なくなっている!?

「まさか……。突然眠たくなったのは……」
「抵抗なくボディーチェックを行うためだ。真実に気付かれたベンジャマン殿の指示で睡眠薬を料理に混ぜ込み、意識を失っている間に調べさせてもらったよ」

 ベンジャマン様は経験則で、わたくしとエレノオールを見分けられて……。入れ替わってすぐ、気付いていた……!?
 うそ、でしょ……。

「全部事実だよ。そもそも初めて会った時から負の感情を抱いていると知っていて、どうにかコントロールしようとしていたんだ。……失敗に終わってしまったけどね」

 そこ、から……!?
 はじめから、バレていた……。

「ち、ちが。まちがって、ます。ベンジャマン、さま。わたしは、エレノアールです。信じてください……!」
「信じられる理由がないよ。……マティルド」

 さっきまで向けてくれていた視線とは、真逆。冷たい視線が注がれる。

「どうすれば元に戻るのかな? 素直に答えてくれたら、その分減刑すると卿は仰っている。方法を教えてくれるかな?」
「で、ですからっ、わたしがエレノオールなんですっ。方法なんて知りませんっ」
「……マティルド……」
「エレノオール様、仕方がありませんよ。白状するつもりが、ないのなら」

 顔を曇らせたエレノオールの手を、そっと握ったあと。ベンジャマン様は、お父様と頷き合い――

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