私を利用するための婚約だと気付いたので、別れるまでチクチク攻撃することにしました

柚木ゆず

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第8話 二つの仕込みが、花となる エリック視点 (2)

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「これ、アクシーのものですわよね? どうしてこんなものがありますの?」

 呆然となっているとリウが拾い上げ、目の前まで来てケースを突き出してくる。
 しまった……。急いで隠したのは、ネックレスだけ……。近くになかったから、箱の存在を忘れていた……っっ。

「エリック、説明してくださいな。あの日立ち寄ってない店のものが、どうしてあるんですの? 空になってるこのケースには、なにが入っていましたの?」
「そ、それは、あのね……。その……」
「部屋にあったものへの質問なのですから、すぐに答えられるでしょう? どうして、なんですの?」
「ああうんそうだね! こいつは、ええっと、ああそうそう! そうだったそうだった! 昨日のパーティーで頂いたものなんだよ! あまりにもセンスが悪いから中身は昨夜捨てちゃって、『渡すならまともなものを渡せよっ!』って壁に投げつけたんだっ」

 親交のある他貴族からプレゼントされる時は、しばしばある! なにも不自然 ないだろうっ! やりすごせる、よなっ!?

「………………そうですの。昨夜に、家で、捨ててしまったんですのね?」
「そうなんだよっ! パーティーから帰って風呂に入ったあと部屋で開けて、すぐに捨てたんだ!」
「………………そう、ですのね。だったらまだ処分されていませんから、夜に出たゴミを漁れば見つけられますわね」

 ぁ……。
 ぁぁ……。

「エリック。わたくしはもう、言葉だけでは信用できませんの。ゴミの中を探してみますわ」
「りっ、リウっ! まって――」
「独りにしたら、何をするか分かりませんわ。貴方も一緒に来てくださいな」
「……………………」
「あら? 来れませんの?」
「ううんっ、来れるよっ! いっ、行こう!」

 この指示に従うしかなく、俺は彼女と共に二階から一階に降りた。そして使用人に手伝わせて、昨夜分のゴミをじっくり調べ……。
 当然……。アクセサリーは、出てこなかった……。

「…………話が、違いますわね。例のネックレスは、どこにありますの?」
「お、おかしいなぁ。もしかすると、使用人の誰かが家に持ち帰ったのかもしれないっ。あれは庶民にとっては、なかなか手が出ないものだからね!」
『『『エリック様っ! わたしどもは、そのような真似は決して――』』』
「今まで泥棒が一度もないのに、このタイミングで起きるわけがありませんわよ。……ペアネックレスを買っているのでれば、次に会う時も必ずつける。貴方、どこかに隠してますわね?」

 くそっ! 使用人どもの機転の悪さ・・・・・で折角の名案が無意味になって、状況は更に悪化してしまった!

「一番怪しいのは、自分の部屋、ですわよね。まずはそこを、探させてもらいますわ」
「ちょっ、リウっ! 待ってっっ! 親しい相手でも、プライベートな領域は――」
「『俺は君に隠し事はしないし、やましい事はなにもない。だからリナとの関係に不安を覚えた時は、何でも言う事を聞くよ』、以前そう言いましたわよね? わたくし不安を覚えたので、何でも言う事を聞いてもらいますわ」

 以前の言葉が仇となり、抵抗は不可能。部屋に入るとまずはベッドの下に頭を突っ込み、隅々までチェックを行う。

「…………ここには、ありませんわね……。次は……」

 タンス。一段一段じっくりと時間かけて調べ上げ、それが済むとクローゼットを開かれる。
 くぅ……。この様子だと、見落としてはくれそうにない……。

「ここの中にも、なくて……。洋服のポケットなどには………………。そこにも、何も入ってはいませんわね」
「り、リウ。ねえっ、そろそろ疲れたでしょ? 休憩をしないかいっ? とても美味しいハーブティーを淹れるよっ?」
「結構ですわ。次は、机ですわね」

 彼女はいよいよ、一番見られたくない場所の調査を始める。
 神でも先祖でも、なんでもいい……っ。誰でもいいから、力を貸してくれ……っ。

((回避する方法なんて分からない! 分からないから、助けてくれ!! どうか、助けてください……っっ!!))

 リウの手が机の引き出しを開け、俺は心の中で両手を組む。
 俺に出来ることなら、なんでもしますから……っ。物でも金でも、何でも捧げますから……っ。

((奇跡が、起きて……っ。見つかりませんように……っ))

 あらゆる存在に心から祈り、やがて引き出しが完全に開かれて――

「……エリック。やはり、嘘を吐いていたんですのね」

 ――リウは中から、ペアネックレスを取り出した。


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