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第8話 二つの仕込みが、花となる エリック視点 (1)
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いつか本で見た誰かの言葉、『悪い事は重なる』。俺は翌日の早朝、それは事実なのだと思い知る事になった。
「エリック。この間あの女とアクシーに行って、300万もするペアのネックレスを購入したそうですわね?」
最愛の人が突然やってきて、顔を見れて僥倖だと喜んだのも束の間。部屋に入って来た彼女の両目は鋭く吊り上がっていて、あの日の真実を確信しているようだった。
「きゅ、急に何を言い出すんだい? そんなもの、買うはずないじゃないかっ!」
「……………………」
「俺達にとってあの店は特別で、二人で行こうって約束したでしょ? あんなクソ女と先に行くはずが――」
「『エリックさんに、アクシーでペアネックレスを買ってもらった』、『合わせて300万もする高価なものだったけど、ドラム型のデザインを気に入って無理を言ってしまった』。昨夜街で買い物をしていたら、こんな噂を耳にしましたの」
……。
…………。
「きっとあの女は、有頂天になって言い回ったんでしょうね。色んな店でベラベラ喋っていましたわよ」
しまった……っ。アイツは、自慢をするようなヤツではなかったから……。油断していた……っっ。
「わたくしが確認しただけでも8人が知っていて、その全員が実際にネックレスを見ていましたわ。…………貴方、わたくしに嘘を吐いてましたのね?」
「ちっ、違うっ! 俺はそんなもの与えていないよ! それは……。それは……っ」
「それは?」
「アイツが…………勝手に……そうっ、勝手に言ってるだけ! 羨望の眼差しを得るため捏造してるだけなんだよ! あの女は、最近様子がおかしい――本性を見せ始めたようで、ゆうべも大変だったんだっ!」
パーティーで起きた出来事を伝え、アイツの異常性を理解してもらう。
あの女は、そんなことを平気でできる女なんだ。非があると認識しても、あんな謝り方しかできない女なんだ。
あんな真似をしても、おかしくはないだろう!?
「…………そんな事が……。本当、なんですの……?」
「その問題は、会場内で対処した。レルナ殿を始めとしたパーティーの参加者が、証人だよ」
「…………そうですのね。それなら、信用に値しますわ」
ふぅ、よかった。
これで、『リナ・サーハル=おかしな女』と印象付けられた。もし今後何かあっても、ソレを利用すれば簡単に解決できるぞ。
「こちらも本性を隠しているけど、あちらは更に隠していたんだ。顔だけでなく、心まで醜い女だよ」
「まったくですわね。あの女のせいではしたない真似をして、貴方にも迷惑をかけてしまいまし――…………」
呆れの息を吐いていたリウの動きが、ピタリと止まった。
俺の背後を見たまま、固まっている。そこに何かあるのか?
「もしかして、ゴキブリが居たのかな? 小まめに掃除をさせてるから、現れるはずがないのだけれど――…………」
のんびりと振り返った俺もまた、ピタリと止まる羽目になる。
どうして、なのか?
その理由は……。部屋の隅、壁際に……。
昨夜叩きつけて壊した、アクシーのマークがついたケースが転がっていたから。
「エリック。この間あの女とアクシーに行って、300万もするペアのネックレスを購入したそうですわね?」
最愛の人が突然やってきて、顔を見れて僥倖だと喜んだのも束の間。部屋に入って来た彼女の両目は鋭く吊り上がっていて、あの日の真実を確信しているようだった。
「きゅ、急に何を言い出すんだい? そんなもの、買うはずないじゃないかっ!」
「……………………」
「俺達にとってあの店は特別で、二人で行こうって約束したでしょ? あんなクソ女と先に行くはずが――」
「『エリックさんに、アクシーでペアネックレスを買ってもらった』、『合わせて300万もする高価なものだったけど、ドラム型のデザインを気に入って無理を言ってしまった』。昨夜街で買い物をしていたら、こんな噂を耳にしましたの」
……。
…………。
「きっとあの女は、有頂天になって言い回ったんでしょうね。色んな店でベラベラ喋っていましたわよ」
しまった……っ。アイツは、自慢をするようなヤツではなかったから……。油断していた……っっ。
「わたくしが確認しただけでも8人が知っていて、その全員が実際にネックレスを見ていましたわ。…………貴方、わたくしに嘘を吐いてましたのね?」
「ちっ、違うっ! 俺はそんなもの与えていないよ! それは……。それは……っ」
「それは?」
「アイツが…………勝手に……そうっ、勝手に言ってるだけ! 羨望の眼差しを得るため捏造してるだけなんだよ! あの女は、最近様子がおかしい――本性を見せ始めたようで、ゆうべも大変だったんだっ!」
パーティーで起きた出来事を伝え、アイツの異常性を理解してもらう。
あの女は、そんなことを平気でできる女なんだ。非があると認識しても、あんな謝り方しかできない女なんだ。
あんな真似をしても、おかしくはないだろう!?
「…………そんな事が……。本当、なんですの……?」
「その問題は、会場内で対処した。レルナ殿を始めとしたパーティーの参加者が、証人だよ」
「…………そうですのね。それなら、信用に値しますわ」
ふぅ、よかった。
これで、『リナ・サーハル=おかしな女』と印象付けられた。もし今後何かあっても、ソレを利用すれば簡単に解決できるぞ。
「こちらも本性を隠しているけど、あちらは更に隠していたんだ。顔だけでなく、心まで醜い女だよ」
「まったくですわね。あの女のせいではしたない真似をして、貴方にも迷惑をかけてしまいまし――…………」
呆れの息を吐いていたリウの動きが、ピタリと止まった。
俺の背後を見たまま、固まっている。そこに何かあるのか?
「もしかして、ゴキブリが居たのかな? 小まめに掃除をさせてるから、現れるはずがないのだけれど――…………」
のんびりと振り返った俺もまた、ピタリと止まる羽目になる。
どうして、なのか?
その理由は……。部屋の隅、壁際に……。
昨夜叩きつけて壊した、アクシーのマークがついたケースが転がっていたから。
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