31 / 33
第21話 今度こそ アンナ視点(1)
「アンナ様。ようやく、終わりましたね」
ロマニ様とアニー様が連行されてから、およそ6時間後。私達は、治安局の外に停めてある車の中で――レルザー侯爵家所有の馬車の中で、向かい合っていました。
主催者様へのお詫びや、局員の方々へのお礼、改めての事情の説明などが終わりましたので。まだ裁判などが残ってはいますが、やっとこの騒動が落ち着きました。
「僕の我が儘で、遅くなってしまって申し訳ございません。……何度も躓いてしまいましたが、どうにか、貴方を迎えにゆける資格を達成できました」
これまでの出来事を、振り返られているのだと思います。ダヴィッド様は5秒ほど瞑目され、ゆっくりとその瞼が上がりました。
「ですので、サンドラ、アンナ様。そのお手を、取らせていただきたく思います」
「はい……っ。私のために、こだわってくださってありがとうございます。アドリアンくん、ダヴィッド様。この手を、握ってください。貴方の手を、握らせてください」
下がった目尻を見ていると、すぐに私の目尻も同じようになって。そうして私達は声と表情で今の感情をたっぷりと表し、お互いの手が前方へと伸びてゆきます。
――私達は生徒会メンバーだったこともあって、今まで何度も握手をしてきました。この手に触れたことは、何度もありました――。
でも今回のそれは、まるで意味が違っていて。ダヴィッド様の手のぬくもりに触れると、そこから全身へと温かなものが広がっていきました。
この不思議な感覚は、『幸せ』。瞬く間に体中が幸福で満たされ、あっという間にキャパシティーを超えてしまって。その一部は雫へと姿を変えて、両目からポロポロと零れ落ちるようになりました。
――ですので――。
この変化は、必然でした。
「生まれ変わったら記憶がなくなっていて、お互い近くに住んではいないかもしれない。でも、たとえそうだったとしても。どんな障害があっても乗り越えて、必ずやその手を握り締めにいくから。次こそは最後まで君を守るから、待っていておくれ」
アドリアンくんと、最後に交わした言葉。どこからか聞こえてきたその肉声を切っ掛けとして、あらゆる光景が頭の中に浮かび上がってきて――。
「…………ダヴィッド様。そういえば2回目の結婚記念日には、三日月の形をしたネックレスをプレゼントしてくれましたね」
「ええ、そちらを贈りました。……アンナ様、貴方は……っ」
「はい……っ。もう、断片的ではありません。全てを、思い出しました……っ!」
ロマニ様とアニー様が連行されてから、およそ6時間後。私達は、治安局の外に停めてある車の中で――レルザー侯爵家所有の馬車の中で、向かい合っていました。
主催者様へのお詫びや、局員の方々へのお礼、改めての事情の説明などが終わりましたので。まだ裁判などが残ってはいますが、やっとこの騒動が落ち着きました。
「僕の我が儘で、遅くなってしまって申し訳ございません。……何度も躓いてしまいましたが、どうにか、貴方を迎えにゆける資格を達成できました」
これまでの出来事を、振り返られているのだと思います。ダヴィッド様は5秒ほど瞑目され、ゆっくりとその瞼が上がりました。
「ですので、サンドラ、アンナ様。そのお手を、取らせていただきたく思います」
「はい……っ。私のために、こだわってくださってありがとうございます。アドリアンくん、ダヴィッド様。この手を、握ってください。貴方の手を、握らせてください」
下がった目尻を見ていると、すぐに私の目尻も同じようになって。そうして私達は声と表情で今の感情をたっぷりと表し、お互いの手が前方へと伸びてゆきます。
――私達は生徒会メンバーだったこともあって、今まで何度も握手をしてきました。この手に触れたことは、何度もありました――。
でも今回のそれは、まるで意味が違っていて。ダヴィッド様の手のぬくもりに触れると、そこから全身へと温かなものが広がっていきました。
この不思議な感覚は、『幸せ』。瞬く間に体中が幸福で満たされ、あっという間にキャパシティーを超えてしまって。その一部は雫へと姿を変えて、両目からポロポロと零れ落ちるようになりました。
――ですので――。
この変化は、必然でした。
「生まれ変わったら記憶がなくなっていて、お互い近くに住んではいないかもしれない。でも、たとえそうだったとしても。どんな障害があっても乗り越えて、必ずやその手を握り締めにいくから。次こそは最後まで君を守るから、待っていておくれ」
アドリアンくんと、最後に交わした言葉。どこからか聞こえてきたその肉声を切っ掛けとして、あらゆる光景が頭の中に浮かび上がってきて――。
「…………ダヴィッド様。そういえば2回目の結婚記念日には、三日月の形をしたネックレスをプレゼントしてくれましたね」
「ええ、そちらを贈りました。……アンナ様、貴方は……っ」
「はい……っ。もう、断片的ではありません。全てを、思い出しました……っ!」
あなたにおすすめの小説
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
【本編完結】真実の愛を見つけた? では、婚約を破棄させていただきます
ハリネズミ
恋愛
「王妃は国の母です。私情に流されず、民を導かねばなりません」
「決して感情を表に出してはいけません。常に冷静で、威厳を保つのです」
シャーロット公爵家の令嬢カトリーヌは、 王太子アイクの婚約者として、幼少期から厳しい王妃教育を受けてきた。
全ては幸せな未来と、民の為―――そう自分に言い聞かせて、縛られた生活にも耐えてきた。
しかし、ある夜、アイクの突然の要求で全てが崩壊する。彼は、平民出身のメイドマーサであるを正妃にしたいと言い放った。王太子の身勝手な要求にカトリーヌは絶句する。
アイクも、マーサも、カトリーヌですらまだ知らない。この婚約の破談が、後に国を揺るがすことも、王太子がこれからどんな悲惨な運命なを辿るのかも―――
婚約破棄の翌日に謝罪されるも、再び婚約する気はありません
黒木 楓
恋愛
子爵令嬢パトリシアは、カルスに婚約破棄を言い渡されていた。
激務だった私は婚約破棄になったことに内心喜びながら、家に帰っていた。
婚約破棄はカルスとカルスの家族だけで決めたらしく、他の人は何も知らない。
婚約破棄したことを報告すると大騒ぎになり、私の協力によって領地が繁栄していたことをカルスは知る。
翌日――カルスは謝罪して再び婚約して欲しいと頼み込んでくるけど、婚約する気はありません。
婚約破棄を謝っても、許す気はありません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私カルラは、ザノーク王子に婚約破棄を言い渡されてしまう。
ザノークの親友ルドノが、成績が上の私を憎み仕組んだようだ。
私が不正をしたという嘘を信じて婚約を破棄した後、ザノークとルドノは私を虐げてくる。
それを耐えながら準備した私の反撃を受けて、ザノークは今までのことを謝ろうとしていた。
わたしを捨てた騎士様の末路
夜桜
恋愛
令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。
ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。
※連載
良いものは全部ヒトのもの
猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。
ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。
翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。
一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。
『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』
憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。
自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。
幸運を織る令嬢は、もうあなたを愛さない
法華
恋愛
婚約者の侯爵子息に「灰色の人形」と蔑まれ、趣味の刺繍まで笑いものにされる伯爵令嬢エリアーナ。しかし、彼女が織りなす古代の紋様には、やがて社交界、ひいては王家さえも魅了するほどの価値が秘められていた。
ある日、自らの才能を見出してくれた支援者たちと共に、エリアーナは虐げられた過去に決別を告げる。
これは、一人の気弱な令嬢が自らの手で運命を切り開き、真実の愛と幸せを掴むまでの逆転の物語。彼女が「幸運を織る令嬢」として輝く時、彼女を見下した者たちは、自らの愚かさに打ちひしがれることになる。