9年ぶりに再会した幼馴染に「幸せに暮らしています」と伝えたら、突然怒り出しました

柚木ゆず

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第7話 裏側 俯瞰視点

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「ローバルン様の仰った通りでしたね」

 部屋を出て、10秒ほど廊下を進んだ頃――ソリーヌから充分に距離が取れたタイミングで、ルーカッソが後方を一瞥しました。

「あのような性格の持ち主は極限まで追い詰められないと、大嫌いな相手のためになることはしない。悲しいかな貴族は人格に問題がある人間が多く、自然と詳しくなってしまったのですよ」

 ソリーヌに向けたティトゥアンの言葉には複数の嘘が含まれていて、元々殺害をするつもりはありませんでした。

『その結果はやはり、変わらず。引き続き強い恨みの感情を抱いているのであれば、放置できません。したがってライナスさんから当主殿へ連絡していただき、排除――抹消することにしたのですよ』

『寿命が尽きるまでお父様の子どもでいたいんです! 助けてくださいっ! お父様とずっと一緒にいさせてください!!』
『……すまんな、お前の願いは聞けない。交渉だってするつもりはないよ』
『お父様!? なぜですかっ!?』
『お前の本心であり、本性を知ってしまったからだよ……』

 ティトゥアンが剣を持ったのもルーカッソが娘を跳ねつけたのも、すべて台本。ティトゥアンの指示のもと行動してたのです。
 お願い、を聞かせるために。

「これがあればきっと、アリアンさんのショックも和らぐ。偽りを生むのは気が引けますが、吐いていい嘘もあるでしょう。今回は許していただきましょう」
「改めて貴方様に、心からの敬意を抱いております」
「そんな大したことではありませんよ。それに、こちらも貴方様に敬意を抱いております」

 ソリーヌの悪事を伝えた際、ルーカッソは顔を真っ赤にして怒(いか)り――同時に、ソリ―ヌの本心に気付かなかった上に正しく導けなかった自身を責めていました。
 そんな姿を見てティトゥアンは、自身ではなくルーカッソの監視下での軟禁を決めたのでした。

「お金、地位、信頼。多くのものを得ても変わらぬその御心、感服いたしました。わたくし自身も生涯そうでありたいと思います」
「勿体なきお言葉。痛み入ります」
「そんな方の思いと想いが届けばいいのですが――。ああいった性質を持つ者は、どんなに良い刺激を受けてもなかなか心に響きません。長い戦いになると思いますが、影ながら応援しております」
「心より感謝を申し上げます。……もう行(ゆ)かれるのでございますか?」
「ディナーのご提案はありがたいのですが、あいにくと今日はやることが多いのですよ。お気持ちはまた別の機会にいただきます」

 微苦笑を浮かべて、深々と腰を折り曲げる。丁寧な会釈を済ませたティトゥアンは『お願い』によって得たものを懐に仕舞い、馬車に乗り込んだのでした。

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