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第8話 その後のソリーヌ 俯瞰視点
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「……どうしたものかな……」
テトロア家のお屋敷から、ソリ―ヌがいなくなってから2日後。ソリ―ヌの父ルーカッソは、執務室で天井を仰ぎました。
彼の頭を悩ませているのは、ソリーヌ。『どうすれば改心させられるか』について、あの日からずっと考えていたのです。
「人は変われる可能性があると、信じているが……。ううむ……。あの性質が生来のものならば、難しいか……?」
ルーカッソはこれまで数多くの人間と関わって来て、良い変化をした者を見てきました。しかしながらその者達は『成功』によって変わってしまった――途中から変わってしまったのであって、元々は歪んではいませんでした。
ソリーヌは稀に見る問題児で、そうであるが故にルーカッソの眉間に再び皺が刻み込まれました。
「……あんなことがあったというのに……。反省しているのは、うわべだけだったしな……」
『いやだああああああああああああああああああああああああああああ!! なっ、なんでもしますからああああああああああああああああああああああああ!! ゆるしてぇええええええええええええええええええええええええええ――え……?』
『このご恩は一生忘れません……!! 絶対に心を入れ替えます……!』
喉元を過ぎればなんとやら。
聞き耳を立てられていると気付かないソリーヌは、『なんでわたくしばっかりこんな目に遭うのよ……!』『いつもいつもアリアンばかり優遇されている……!』『不公平よ……!』などと愚痴っており、すでに逆恨みを始めていたのです。
「……わたしが引き取ってしまったせいで、ますます増長させてしまったか……? わたし以外に引き取られていたら、ここまで悪化はしていなかったか……? …………今は、そんなことを考えても仕方がない、か」
2度かぶりを振り、天井に向けてため息を吐きます。
「振り返っても意味はない。とにかく、だ。今やれることを全部やって――」
『旦那様! 緊急のご連絡でございます!』
両頬をパンと叩いているとノックと大声が聞こえてきて、促すとその男は――所謂軟禁班のリーダーである男・ラオンは、大慌てで部屋に入ってきました。
「どうした? ソリーヌに何かあったのか?」
「は、はい。ソリーヌお嬢様が、旦那様と二人きりでお話しをしたいと仰っております」
「……僅か数日……。反省したフリをして、軟禁から逃れようとしているのだな。本心を偽る者に会うつもりはない、そう伝えてくれ」
「そ、それが……」
「? ん?」
ラオンも『対話』の意図を把握した上で報告をしており、すぐさまイエスが返ってくると思っていました。しかしながら予想外の反応があり、ルーカッソの頭の中に疑問符が浮かび上がったのでした。
テトロア家のお屋敷から、ソリ―ヌがいなくなってから2日後。ソリ―ヌの父ルーカッソは、執務室で天井を仰ぎました。
彼の頭を悩ませているのは、ソリーヌ。『どうすれば改心させられるか』について、あの日からずっと考えていたのです。
「人は変われる可能性があると、信じているが……。ううむ……。あの性質が生来のものならば、難しいか……?」
ルーカッソはこれまで数多くの人間と関わって来て、良い変化をした者を見てきました。しかしながらその者達は『成功』によって変わってしまった――途中から変わってしまったのであって、元々は歪んではいませんでした。
ソリーヌは稀に見る問題児で、そうであるが故にルーカッソの眉間に再び皺が刻み込まれました。
「……あんなことがあったというのに……。反省しているのは、うわべだけだったしな……」
『いやだああああああああああああああああああああああああああああ!! なっ、なんでもしますからああああああああああああああああああああああああ!! ゆるしてぇええええええええええええええええええええええええええ――え……?』
『このご恩は一生忘れません……!! 絶対に心を入れ替えます……!』
喉元を過ぎればなんとやら。
聞き耳を立てられていると気付かないソリーヌは、『なんでわたくしばっかりこんな目に遭うのよ……!』『いつもいつもアリアンばかり優遇されている……!』『不公平よ……!』などと愚痴っており、すでに逆恨みを始めていたのです。
「……わたしが引き取ってしまったせいで、ますます増長させてしまったか……? わたし以外に引き取られていたら、ここまで悪化はしていなかったか……? …………今は、そんなことを考えても仕方がない、か」
2度かぶりを振り、天井に向けてため息を吐きます。
「振り返っても意味はない。とにかく、だ。今やれることを全部やって――」
『旦那様! 緊急のご連絡でございます!』
両頬をパンと叩いているとノックと大声が聞こえてきて、促すとその男は――所謂軟禁班のリーダーである男・ラオンは、大慌てで部屋に入ってきました。
「どうした? ソリーヌに何かあったのか?」
「は、はい。ソリーヌお嬢様が、旦那様と二人きりでお話しをしたいと仰っております」
「……僅か数日……。反省したフリをして、軟禁から逃れようとしているのだな。本心を偽る者に会うつもりはない、そう伝えてくれ」
「そ、それが……」
「? ん?」
ラオンも『対話』の意図を把握した上で報告をしており、すぐさまイエスが返ってくると思っていました。しかしながら予想外の反応があり、ルーカッソの頭の中に疑問符が浮かび上がったのでした。
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