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第11話 理由 エリザベット視点

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「――そういったことがあり、僕は直後よりアプローチを始めましてね。本日、受け入れていただいていたのですよ」

 いつの間にか、婚約解消が成立した直後のことでした。父と母は微塵も悪びれることはなく、それどころか――。新たな繋がりを得るため再び婚約相手を見つけようとしていて、それを知った叔父様と叔母様の怒りが、ついに爆発します。


「兄さんも義姉さんもいい加減にしろ!! エリザベットは物じゃないんだぞ!!」
「「い、家の発展や、傾きを直すには必要で――」」
「度が過ぎているわ!! 発展のためなら、なにをしてもいいというの!? 貴方たちの中に『常識』『人権』という文字はないの!?」
「そもそもその傾きは、二人が招いたものだろう!! ……我慢の限界だ。これ以上は看過できない」
「お父様は有事に備え、『兄妹(きょうだい)全員が反対』すれば家督を剥奪できる遺言を残してくださっている。お兄様、わたし達はそれを発動させるわ」


 各方面への影響を鑑みて当主は引き続き父となっていますが、実権を握っているのは叔父様。そんな叔父様は私を我が子のように可愛がってくださっていて、「遅くなってすまなかった」「気晴らしいに旅をするといい。とても気に入っている絶景があるんだよ」と仰ってくださり、そうして私はフェリネス国内でジュスタン様にお会いしたのです。
 そして、

「エリザベット・ニーエイル様。僕は貴方の優しさに触れ、貴方という女性に恋をしています。よろしければ、僕を知る機会を作ってはいただけないでしょうか?」

 帰国後そういったお言葉をいただき、元々ジュスタン様は、人格者として有名な方でした。貴族としても人としても、素晴らしい方だと存じ上げておりました。
 ですのでジュスタン様との関係が始まり、今日――僅か8時間前に、婚約者となっていたのです。

「………………そ、そんな……。冗談、です、よね……? わたくしをビックリさせるための、冗談、ですよね……?」
「貴方を驚かせる意味など、ありませんよ。こちらは紛れもない事実でして、それによって先程の推理は大間違いとなるのですよ」
「先ほどの、推理……? な、なん、なのでしょう……?」
「どうやら――ショックによって、ご自身の発言をお忘れになれているようですね。『わたくしが侯爵夫人となるから悔しがっているのでしょう?』、というものですよ」

 石のように固まって、パクパクと口を動かし続ける。そんなミレネア様に対して肩を竦められ、ジュスタン様はこう続けられたのでした。

「元々この方は地位云々で感情が動く人はありませんが、なにより――。エリザベット様はやがて、公爵夫人となります。ですので侯爵夫人を羨み、悔しがる理由がどこにもないのですよ」

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