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IF やがてニナ達は、1年間の真実を知ってしまう 俯瞰視点(2)
しおりを挟む「なるほど……! 仰る通りです……っ! 確かに、最高のネタですね……っっ!」
3階建ての本社の、2階。応接スペースの一角でヴィクトー達は所謂『持ち込み』を行い、細い眼鏡をかけた痩せ型の中年男性――エクスポジション社の社長マーリック・ゴスハルは、前のめりになって大きく頷きました。
はじめに3人の対応をしたのは、編集員の1人。ですが飛び出したのはあのリュカの話題だったため、大慌てでトップが登場していました。
「そうでしょう、そうでしょう……! ゴスハル殿、いかがですかな?」
「是非、弊社で出版させていただく思います。ヴィクトー・スアフ様、この場でのご契約は……」
「ええ。もちろん、可能ですぞ。そのつもりで来ておりますからな」
「っ、ありがとうございます! 少々お待ちくださいませ!!」
これは格好の『金の生る木』であり、出版社は他にも存在する――他社に流れてしまうと、売り上げ的にも知名度的にも大きな損失となってしまいます。そういった理由でマーリックはとにかく契約を急ぎ、そのため取り分も最大限に譲歩。印税は破格かつ異例となる30%で、しかもスアフ家側の執筆は一切不要――ゴーストライターありという条件で、締結されました。
「構成などを含め、諸々は弊社が行わせていただきます。ですのでこれより、仰られていた1年間の日々について、我々に詳しくお聞かせください」
「ええ、全てお伝えしましょう。ミエラ、ニナ。久し振りに、9年前を思い出そうじゃないか」
「そうね、あなた。ゴスハルさん、お任せください」
「あたしは記憶力もよくて、しっかりと覚えています。それに今日は、物証も用意しているんです。あの頃の毎日を、全てお伝えしますね」
3人は下卑た笑みを浮かべ、5人に――マーリックおよび彼が呼んだ編集者とライター達に、次々とリュカとの日々を明かしていきました。
両家の事情で婚約者が変わり、やがてニナに恋心が移った事――。
毛髪を採取しようとしていた事――。ニナのリボンを破顔で受け取った事――。
ピクニックの行った事――。度肝を抜かれたニナクイズの事――。
などなど。
ニナが中心となり、たっぷり3時間かけて。あの1年間を丸ごと、包み隠さず暴露したのでした。
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