悪役令嬢のお姉様が、今日追放されます。ざまぁ――え? 追放されるのは、あたし?

柚木ゆず

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1話(1)

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「どっ、どういうこと!? なんあたしが罰を受けるようになってるの!?」

 作法や礼儀を守ってる場合じゃない。あたしは声を荒げて男性に詰め寄り、ものすごい速度で姉さんを指さした。

「追放されるのは、悪さをしたあっちですよねっ!? なぜそうなるんですか!?」
「エステル。レビン王太子殿下が、私を助けてくれたのよ」

 更にトーンを上げていたら、指をさされた姉さんがほくそ笑んだ。
 え? 王太子殿下が助けた?

「殿下はなんと狡猾な女が好みで、私の本性を知ったら更に興味を持ってくださったの。不幸な偶然・・・・・によって国王にバレてしまったけれど、あの方はそれまでの『擬態』を評価してくださったのよね」
「そして殿下とマリナは秘密裏に接触し、その結果レビン殿下はマリナを選んでくださった。マリナを妻とすると決めてくださったのだよ」

 は? は……?

「でも、王太子妃になる私が犯罪者だと、困るでしょう? そこで殿下が国王の弱みを使って――『王太子妃候補に手を出していたと暴露する』と脅して各所に圧力をかけさせて、私の罪をなかった事にしてくださったの」
「幸い露見したのは、捜査の関係者と王族のみだったからね。被害者と捜査関係者を潰しておけば、どうとでもできるのよ」
「とはいえマリナが脅迫状を送った相手の中には、姉が他国の有力貴族に嫁いだ――圧力をかけきれない者もいた。だから、エステル。お前がマリナの罪を被るのだ」
「『姉さんが王太子になれば、第2王子や第3王子と繋がれるかもしれない』。こういう理由で何度も姉を脅して動かしていた、という事になっているのよね」

 姉さん、お母さん、お父さん、そしてもう一度姉さんがニヤリと口元を緩め、男性は大きく頷いた。
 嘘みたいでバカみたいな話だけど、実際にあたしが罪に問われてるんだから事実。罪を知って王太子が意識するようになり、狂人と狂人がゴールインすることになって、クズ姉を潔白にするためあたしに押し付けられたんだ。

「これからお前は姓を剥奪され、永久的に国外追放となる。短い間だったが、今思えば楽しい日々だったぞ」
「次は男の子が欲しかったから、貴女が産まれてきた時は本当に腹が立ったけれど――。終わりよければ全てよし。最後に盛大に役立ってくれたのだから、感謝してるわ」
「私の代わりをしてくれて、ありがと。じゃあバイバイ」

 3人が悪魔のような笑顔を振り撒き、男性があたしを拘束しようと近づいてくる。
 コイツらは次女になんの興味も持っていないし、コイツは買収済み。どうやっても説得が無理だから、とにかく逃げるしかない!

「そんなの、大人しく受け入れるわけないでしょっ。アンタ達の思い通りにはいかないってのっ!」

 こき使われてたせいで動きに自信があるあたしは、男の脇をすり抜けて門へと走る。
 ここで捕まったら、待っているのは理不尽な地獄だもん。一先ず逃げて隠れなきゃっ。

「ちぃっ! 止まれエステル! 逃走は罪を重ねるだけだぞっ!!」
「ありもしない罪から逃げてるんだから、関係ない話よっ! あたしは、このまま逃げ切る……っ」

 外に出てしまえば、簡単には見つからない。落ち着ける場所を見つけたら、反撃できる方法を探して――

「ぇ……? ぁれ……?」

 門を目指していたら、突然視界が歪み始めた。
 しかも、異常はそれだけじゃない。全身に力が入らなくなって、あたしは膝から崩れ落ちてしまった。
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