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第3話 魔王城 アリアル視点(1)
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「到着だ。アリアルにとっては二度目の訪問だな?」
「そ、そうですね。ですがこちらは……本当に、あの魔王城なのですか?」
私が降り立ったのは、品のある煌びやかさに溢れた空間――まるで王城のような場所。かつて足を踏み入れた魔王城は漆黒を基調とした禍々しい場所で、その頃の面影がどこにもありませんでした。
「この魔王城には、二種類の形態があるんだ。あの時は内部の損壊が自動で修復される『戦場形態』で、こちらは生活するための機能が備わった『通常形態』なんだ」
「な、なるほど、普段はこちら。私達のような環境で生活しているのですね」
「初代勇者とつるんだ影響で人の暮らしが気に入ってしまってな、封印されるまでアリアルのような日々を過ごしていたぞ。魔王に飲食は必要ないがパンやワインを三食喰らうし、チェスや庭仕事もするようになった」
「そ、そうなんですね。あの魔王が、まさかそんな――待ってください! 勇者と仲が良い時期があったのですか!?」
つるんでいた、は敵対している相手には使わない。はず。
「アイツ――ケヴィンも同じく大地の守り神に選ばれ勇者としてやって来たが、剣を交えている間にな、不思議なことに意気投合してしまったんだ」
面白いヤツだ――。そう感じてお互いに対話をしてみたくなり、言葉のキャッチボールをしてみた結果本格的に意気投合。
なんと親友になり、不可侵条約を結んで帰ったそう。
「ふ、不可侵……!? そんな記録はありませんでしたよっ!」
「次の代の勇者か国王が魔王であり魔族を信じられなかったのか、はたまた武勲をあげて後世に名を刻みたかったのか。魔王が封印されずこの世界に存在している場合は、勇者と聖女が死ぬと新たな勇者と聖女が誕生するんだが――。新たな勇者と聖女が挨拶に来たと見せかけて不意討ちを狙い、不可侵条約は破られてしまったんだよ」
そんなことが……。全然、知らなかった……。
「不可侵条約の記載が残っていたら、その者達は逆に大戦犯になってしまう。保身でなかったことにしたんだろうさ」
「……遥か昔に、歴史は改竄されていただなんて……」
「最初のうちはまあ、以降の勇者に説得を試みてもみたんだがな。誰も俺の言葉を信用しやしない。結局、戦うしかなくなって――ここで勇者と聖女を迎え撃つようになったってワケだ」
「あ、あの。どうして、攻めてこなかったのですか?」
侵攻がないのは、何かしらの理由があるのだとずっと思っていた。でもその言い方だと、違う。
「アイツと、約束したからな。こっちから攻めないって言った以上、攻めるつもりはない」
「人間は反故にして、攻撃して来ているのに……。記録によると、運よく隙をつけて封印に持ち込めた――何百年も封印されたのに、ですか……?」
「アイツは、反故にしてないだろ? 反故にしたのは次の世代のヤツらで、俺達の約束は続いたままだ。破る理由がない」
彼はそう、あっさりと言った。
「もっとも歴代の勇者たちは、お帰りいただくために毎度ズタボロにしちまってる。そこはまあ、大目に見てもらおうかね」
「………………」
「そんなところかな。さて、いつまでもエントランスで立ち話をしていてはな。城内と部屋の案内をしよう」
「そ、そうですね。ですがこちらは……本当に、あの魔王城なのですか?」
私が降り立ったのは、品のある煌びやかさに溢れた空間――まるで王城のような場所。かつて足を踏み入れた魔王城は漆黒を基調とした禍々しい場所で、その頃の面影がどこにもありませんでした。
「この魔王城には、二種類の形態があるんだ。あの時は内部の損壊が自動で修復される『戦場形態』で、こちらは生活するための機能が備わった『通常形態』なんだ」
「な、なるほど、普段はこちら。私達のような環境で生活しているのですね」
「初代勇者とつるんだ影響で人の暮らしが気に入ってしまってな、封印されるまでアリアルのような日々を過ごしていたぞ。魔王に飲食は必要ないがパンやワインを三食喰らうし、チェスや庭仕事もするようになった」
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つるんでいた、は敵対している相手には使わない。はず。
「アイツ――ケヴィンも同じく大地の守り神に選ばれ勇者としてやって来たが、剣を交えている間にな、不思議なことに意気投合してしまったんだ」
面白いヤツだ――。そう感じてお互いに対話をしてみたくなり、言葉のキャッチボールをしてみた結果本格的に意気投合。
なんと親友になり、不可侵条約を結んで帰ったそう。
「ふ、不可侵……!? そんな記録はありませんでしたよっ!」
「次の代の勇者か国王が魔王であり魔族を信じられなかったのか、はたまた武勲をあげて後世に名を刻みたかったのか。魔王が封印されずこの世界に存在している場合は、勇者と聖女が死ぬと新たな勇者と聖女が誕生するんだが――。新たな勇者と聖女が挨拶に来たと見せかけて不意討ちを狙い、不可侵条約は破られてしまったんだよ」
そんなことが……。全然、知らなかった……。
「不可侵条約の記載が残っていたら、その者達は逆に大戦犯になってしまう。保身でなかったことにしたんだろうさ」
「……遥か昔に、歴史は改竄されていただなんて……」
「最初のうちはまあ、以降の勇者に説得を試みてもみたんだがな。誰も俺の言葉を信用しやしない。結局、戦うしかなくなって――ここで勇者と聖女を迎え撃つようになったってワケだ」
「あ、あの。どうして、攻めてこなかったのですか?」
侵攻がないのは、何かしらの理由があるのだとずっと思っていた。でもその言い方だと、違う。
「アイツと、約束したからな。こっちから攻めないって言った以上、攻めるつもりはない」
「人間は反故にして、攻撃して来ているのに……。記録によると、運よく隙をつけて封印に持ち込めた――何百年も封印されたのに、ですか……?」
「アイツは、反故にしてないだろ? 反故にしたのは次の世代のヤツらで、俺達の約束は続いたままだ。破る理由がない」
彼はそう、あっさりと言った。
「もっとも歴代の勇者たちは、お帰りいただくために毎度ズタボロにしちまってる。そこはまあ、大目に見てもらおうかね」
「………………」
「そんなところかな。さて、いつまでもエントランスで立ち話をしていてはな。城内と部屋の案内をしよう」
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