13 / 28
第9話 過去の出来事 俯瞰視点
しおりを挟む
((……あ、ぁぁ……))
母シャンタルの実家こと『カウトルッテ家』が所有する建物の、中。そこには血の海ができており、その中央で独りの女性が倒れていました。
彼女の名前は、ミア―ネット。
ピエールに強制された挙句責任を押し付けられ、シャンタルによって刺されてしまった、アリスの実母です。
((……だ、め……。こえが、でない……。だれも、よべ、ない……))
自分のようにこれから娘も殺されてしまう。自分はもう無理だから、誰かに代わりに守ってもらいたい。
そう伝えたいのに、いくら力を入れても声が出ない。
どんなに必死になっても一言さえも出てくれず、ミア―ネットの瞳からは涙がこぼれました。
((いや……。いや……。いや……))
元気に泣いて元気に笑ってくれたあの子が死ぬのは、嫌。でも自分はこんな有様で、周囲はシャンタルの関係者のみ。遠くにいる誰かに助けを求めることは、絶対にできない。
でも。
それでも。
諦めることは、できませんでした。
((……おねがい……。だれか……。だれでも、いいから……。むすめを、たすけて、ください……。おねがい、します……。おねがい、します……!! だ、だれか……))「だれかぁ、娘を、助けて、ください!!!!!!!!!!」
最後の力を振り絞って、大絶叫。死の間際に声を出すことに成功し、残念ながらその声は第三者に届くことはありませんでしたが――。
人ではない存在には、届くこととなりました。
――カワイソウ――。
――カワイソウ――。
――ユルセナイ――。
これまでの歴史の中で、ミア―ネットのような出来事によって命を落とした女性たち。その無念によって生まれた、悪霊と呼ばれる存在。
そんな者達がその声を拾って、動き出すも――
〇〇
「シャンタル、ピエール君も。これをつけておきなさい」
「お父様? こちらは……?」
「守護の宝石を埋め込んだ、おまもりだ。……この手のものは怨念が多く生まれ、憑りつかれることもままあるらしい。霊なんて迷信だと思ってはおるが、念のため肌身離さずつけておくように」
強力な守護の力によって、手を出せずにいました。
ですが今回、連行の際にネックレスが外れたことによって――
母シャンタルの実家こと『カウトルッテ家』が所有する建物の、中。そこには血の海ができており、その中央で独りの女性が倒れていました。
彼女の名前は、ミア―ネット。
ピエールに強制された挙句責任を押し付けられ、シャンタルによって刺されてしまった、アリスの実母です。
((……だ、め……。こえが、でない……。だれも、よべ、ない……))
自分のようにこれから娘も殺されてしまう。自分はもう無理だから、誰かに代わりに守ってもらいたい。
そう伝えたいのに、いくら力を入れても声が出ない。
どんなに必死になっても一言さえも出てくれず、ミア―ネットの瞳からは涙がこぼれました。
((いや……。いや……。いや……))
元気に泣いて元気に笑ってくれたあの子が死ぬのは、嫌。でも自分はこんな有様で、周囲はシャンタルの関係者のみ。遠くにいる誰かに助けを求めることは、絶対にできない。
でも。
それでも。
諦めることは、できませんでした。
((……おねがい……。だれか……。だれでも、いいから……。むすめを、たすけて、ください……。おねがい、します……。おねがい、します……!! だ、だれか……))「だれかぁ、娘を、助けて、ください!!!!!!!!!!」
最後の力を振り絞って、大絶叫。死の間際に声を出すことに成功し、残念ながらその声は第三者に届くことはありませんでしたが――。
人ではない存在には、届くこととなりました。
――カワイソウ――。
――カワイソウ――。
――ユルセナイ――。
これまでの歴史の中で、ミア―ネットのような出来事によって命を落とした女性たち。その無念によって生まれた、悪霊と呼ばれる存在。
そんな者達がその声を拾って、動き出すも――
〇〇
「シャンタル、ピエール君も。これをつけておきなさい」
「お父様? こちらは……?」
「守護の宝石を埋め込んだ、おまもりだ。……この手のものは怨念が多く生まれ、憑りつかれることもままあるらしい。霊なんて迷信だと思ってはおるが、念のため肌身離さずつけておくように」
強力な守護の力によって、手を出せずにいました。
ですが今回、連行の際にネックレスが外れたことによって――
55
あなたにおすすめの小説
犬猿の仲だと思っていたのに、なぜか幼なじみの公爵令息が世話を焼いてくる
風見ゆうみ
恋愛
元伯爵令嬢だった私、ビアラ・ミゼライトにはホーリル・フェルナンディという子爵令息の婚約者がいる。とある事情で両親を亡くした私は、フェルナンディ子爵家から支援を受けて、貴族が多く通う学園ではあるけれど、成績次第では平民でも通える学園に通っていた。
ある日、ホーリルから呼び出された私は、彼から婚約を破棄し学費や寮費援助を打ち切ると告げられてしまう。
しかも、彼の新しいお相手は私の腐れ縁の相手、ディラン・ミーグス公爵令息の婚約者だった。
その場に居たミーグスと私は婚約破棄を了承する。でも、馬鹿な元婚約者たちが相手では、それだけで終わるはずもなかった――
※完結保証です。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法も存在します。
※誤字脱字など見直して気をつけているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです
【完結】さっさと婚約破棄が皆のお望みです
井名可乃子
恋愛
年頃のセレーナに降って湧いた縁談を周囲は歓迎しなかった。引く手あまたの伯爵がなぜ見ず知らずの子爵令嬢に求婚の手紙を書いたのか。幼い頃から番犬のように傍を離れない年上の幼馴染アンドリューがこの結婚を認めるはずもなかった。
「婚約破棄されてこい」
セレーナは未来の夫を試す為に自らフラれにいくという、アンドリューの世にも馬鹿げた作戦を遂行することとなる。子爵家の一人娘なんだからと屁理屈を並べながら伯爵に敵意丸出しの幼馴染に、呆れながらも内心ほっとしたのがセレーナの本音だった。
伯爵家との婚約発表の日を迎えても二人の関係は変わらないはずだった。アンドリューに寄り添う知らない女性を見るまでは……。
犠牲になるのは、妹である私
木山楽斗
恋愛
男爵家の令嬢であるソフィーナは、父親から冷遇されていた。彼女は溺愛されている双子の姉の陰とみなされており、個人として認められていなかったのだ。
ソフィーナはある時、姉に代わって悪名高きボルガン公爵の元に嫁ぐことになった。
好色家として有名な彼は、離婚を繰り返しており隠し子もいる。そんな彼の元に嫁げば幸せなどないとわかっていつつも、彼女は家のために犠牲になると決めたのだった。
婚約者となってボルガン公爵家の屋敷に赴いたソフィーナだったが、彼女はそこでとある騒ぎに巻き込まれることになった。
ボルガン公爵の子供達は、彼の横暴な振る舞いに耐えかねて、公爵家の改革に取り掛かっていたのである。
結果として、ボルガン公爵はその力を失った。ソフィーナは彼に弄ばれることなく、彼の子供達と良好な関係を築くことに成功したのである。
さらにソフィーナの実家でも、同じように改革が起こっていた。彼女を冷遇する父親が、その力を失っていたのである。
好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
蝋燭
悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。
それは、祝福の鐘だ。
今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。
カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。
彼女は勇者の恋人だった。
あの日、勇者が記憶を失うまでは……
王子様の花嫁選抜
ひづき
恋愛
王妃の意向で花嫁の選抜会を開くことになった。
花嫁候補の一人に選ばれた他国の王女フェリシアは、王太子を見て一年前の邂逅を思い出す。
花嫁に選ばれたくないな、と、フェリシアは思った。
アンジェリーヌは一人じゃない
れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。
メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。
そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。
まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。
実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。
それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。
新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。
アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。
果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。
*タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*)
(なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる