大切な人のためにできること

柚木ゆず

文字の大きさ
22 / 28

第13話 残った愚者たちの末路 俯瞰視点(2)

しおりを挟む
「「シャンタルとピエールが!? マリオンも!?」」

「「ピエールとシャンタルが!? マリオンもっ!?」」

 国内にある、2つのお屋敷。その中ではほぼ同じタイミングで、合わせて4人の男女が絶叫していました。
 彼らはシャンタルの両親と、ピエールの両親。リシャールの実の祖父母であり、

 ミア―ネット殺害に加担した者達です。

「…………なんてことだ……」
「…………あの子たちが、そうなるなら……」

「…………とんでもないことになってしまった……」
「…………次は、わたくし達だわ……」

 発覚後のミア―ネットへの暴言や暴力、実家への口封じの脅迫を行った。など。
 息子の強要を知りながら、証拠の隠滅や死体の処理を命じた。など。
 どちらも大きな罪を犯しており、4人の身体から瞬く間に血の気が引いてゆきました。

「…………おわり、だ……」
「…………だめ……」

「…………もう、むりだ……」
「…………にげ、られないわ……」

 守護のお守りを渡していていたのに・・・・・・・・・・・・・・、そんなことになってしまった。シャンタルとピエールだけならまだしも、マリオンまで壊れてしまった。
 防ぎようがないと、マリオン以上に関与している自分達が逃れられるはずがないと、全員その場にへたり込んでしまいました。

「う、うああ……。どう、なるんだ……?」
「……どう、なるの……?」

「なにが……起きるのだ……?」
「どう、なってしまうの……?」

 怖い。怖い怖い怖い怖い怖い。今すぐこの恐怖から逃れたい!! 早く楽になりたい!
 抵抗する力を失った4人の脳内にはそんな感情が溢れて、ひとしく『自害』という選択肢が浮かび上がります。
 ですが――

 怖くてできない。
 死にたくない。

 そんな理由で自ら終止符を打てず、同時に誰かに頼むことさえもできませんでした。

「ひ、ひぃぃぃぃ……!!」
「ひぃぃぃぃぃ……!!」

「う、ぁあああああ……!」
「ぁぁああああぁぁ……!」

 ゆえに、流れに身を任せることしかできない。

 現状から逃げたいけど逃げられない。
 逃げられないから、来て欲しくないけど待つしかない。

 終わって欲しいけど、終わりたくない。
 大量の恐怖の中でそんな矛盾と向き合う羽目となり、当然、ソレがもたらす影響は非常に大きなものとなりました。

「………………」
「………………」

「………………」
「………………」

 僅か1日。たった24時間で喋れなくなってしまい、

((……歯が……!?))
((肌が……!?))

((爪が……!?))
((髪が……!?))

 更に1日後。48時間後には歯がポロポロと抜け落ち、肌はまるで砂漠のようになり、爪は干からび、髪はすべてスルリと抜け落ちてしまったのです。

((……ぁ、ぁぁ……。次は……死だ……))
((魂を抜かれる……))

((ピエール達のように、なってしまう……))
((とら、れる……))

 すっかりミイラのようになった4人は失禁どころか脱糞しながら震え上がりますが、彼らは怨霊たちのターゲットではありませんでした。そのため魂がどうこうなる時が訪れることはなく、恐怖の時間はまだまだ終わりません。

((いつ……? いつ……!?))
((いつ、なの……!?))

((楽になりたい……。でも、死にたくない……!!))
((どうすれば……。どうしたらいいのぉ……!?))

 寿命が尽きるのを、待つしかない。
 ですので4人はその後死ぬまで朝昼晩と恐怖に怯え続けることとなり、それは嬉しい出来事なのでしょうか? それとも悪い出来事だったのでしょうか?

 そんな4人はそのあと、およそ40年間も――120歳になるまで、生き続けたそうです。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

犬猿の仲だと思っていたのに、なぜか幼なじみの公爵令息が世話を焼いてくる

風見ゆうみ
恋愛
元伯爵令嬢だった私、ビアラ・ミゼライトにはホーリル・フェルナンディという子爵令息の婚約者がいる。とある事情で両親を亡くした私は、フェルナンディ子爵家から支援を受けて、貴族が多く通う学園ではあるけれど、成績次第では平民でも通える学園に通っていた。 ある日、ホーリルから呼び出された私は、彼から婚約を破棄し学費や寮費援助を打ち切ると告げられてしまう。 しかも、彼の新しいお相手は私の腐れ縁の相手、ディラン・ミーグス公爵令息の婚約者だった。 その場に居たミーグスと私は婚約破棄を了承する。でも、馬鹿な元婚約者たちが相手では、それだけで終わるはずもなかった―― ※完結保証です。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法も存在します。 ※誤字脱字など見直して気をつけているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです

【完結】さっさと婚約破棄が皆のお望みです

井名可乃子
恋愛
年頃のセレーナに降って湧いた縁談を周囲は歓迎しなかった。引く手あまたの伯爵がなぜ見ず知らずの子爵令嬢に求婚の手紙を書いたのか。幼い頃から番犬のように傍を離れない年上の幼馴染アンドリューがこの結婚を認めるはずもなかった。 「婚約破棄されてこい」 セレーナは未来の夫を試す為に自らフラれにいくという、アンドリューの世にも馬鹿げた作戦を遂行することとなる。子爵家の一人娘なんだからと屁理屈を並べながら伯爵に敵意丸出しの幼馴染に、呆れながらも内心ほっとしたのがセレーナの本音だった。 伯爵家との婚約発表の日を迎えても二人の関係は変わらないはずだった。アンドリューに寄り添う知らない女性を見るまでは……。

犠牲になるのは、妹である私

木山楽斗
恋愛
男爵家の令嬢であるソフィーナは、父親から冷遇されていた。彼女は溺愛されている双子の姉の陰とみなされており、個人として認められていなかったのだ。 ソフィーナはある時、姉に代わって悪名高きボルガン公爵の元に嫁ぐことになった。 好色家として有名な彼は、離婚を繰り返しており隠し子もいる。そんな彼の元に嫁げば幸せなどないとわかっていつつも、彼女は家のために犠牲になると決めたのだった。 婚約者となってボルガン公爵家の屋敷に赴いたソフィーナだったが、彼女はそこでとある騒ぎに巻き込まれることになった。 ボルガン公爵の子供達は、彼の横暴な振る舞いに耐えかねて、公爵家の改革に取り掛かっていたのである。 結果として、ボルガン公爵はその力を失った。ソフィーナは彼に弄ばれることなく、彼の子供達と良好な関係を築くことに成功したのである。 さらにソフィーナの実家でも、同じように改革が起こっていた。彼女を冷遇する父親が、その力を失っていたのである。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

蝋燭

悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。 それは、祝福の鐘だ。 今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。 カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。 彼女は勇者の恋人だった。 あの日、勇者が記憶を失うまでは……

王子様の花嫁選抜

ひづき
恋愛
王妃の意向で花嫁の選抜会を開くことになった。 花嫁候補の一人に選ばれた他国の王女フェリシアは、王太子を見て一年前の邂逅を思い出す。 花嫁に選ばれたくないな、と、フェリシアは思った。

[きみを愛することはない」祭りが開催されました~祭りのあと2

吉田ルネ
恋愛
出奔したサーシャのその後 元気かな~。だいじょうぶかな~。

アンジェリーヌは一人じゃない

れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。 メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。 そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。 まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。 実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。 それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。 新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。 アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。 果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。 *タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*) (なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)

処理中です...