26 / 28
エピローグその1 家族の絆 リシャール視点(2)
しおりを挟む
「お父さんお母さん、お久しぶり。ミネットとリシャールさんにお会いするには、初めてよね? わたしはミアーネット、あなたのお母さんよ」
柔らかく優しい春の日差しのような雰囲気を持つ、ほんわかとした美しい女性。そんな半透明な人が――ミアーネットさんの霊、魂が現れたのだった。
「殺されてからずっとわたしは、その場所で眠っていたの。真っ暗で冷たくて静かな場所で、ずっとひとりだった」
「「「「…………」」」」
「でもそんな時、ミネット、リシャールさん、お父さん、お母さんの声が、ぼんやりと聞こえてきたの。そしてその声は、どんとん大きくなっていて。冷たかった身体がだんだん温かくなって、だんだん明るくなってきて。気が付いたら、ここに居たの」
そういうこと、でしたか。
よかった。予想が当たって、本当によかった。
「ミネット、リシャールさん、お父さん、お母さん、ありがとう。わたし、昇れるみたい」
ひとりひとりに丁寧にお辞儀をしてくださった、ミア―ネットさん。頭が上がるとふわりと移動をしてミネットの前に立ち、そっと抱き締めた。
「ずっと、こうしたかった。……大きくなったわね。もう話すことはできないと思っていたから……。とっても幸せ」
「わたしも、ですっ。お母様とお会いすることもっ、お話しすることもできないと思っていました! ぬくもりもっ、感じられないと思っていましたっ! 幸せです……!」
ミネットも応じて親子の間で抱擁が交わされ、2人の頬を幸せの涙がつたう。
その姿を見ていたら俺の瞳からも自然と涙が零れ、この場にいる全員が喜びの涙を流した。
「貴方と話したかったことは沢山あるし、もっと触れてもいたい。けれど、続けては居られないみたい」
ミア―ネットさんの身体が、キラキラと輝き出した。
これは……。魂が天に昇る合図なのだろう。
「でも、悲しみはないわ。だって『上』で待つことができて、いずれまた喋ることも触れることもできるんですもの。これからは空の上から、貴方の人生を見守ることができるんですもの。寂しくないし、寂しくないわよね?」
「はいっ! お母様とまた会えますし、見守っていただけるのですから! 寂しくありませんっ!」
一緒に居られた時間は少ないけれど、親子の絆なのだろう。ミア―ネットさんはミネットの思いが分かるようで、ウィンクすると明るい頷きが返って来た。
「その時を、楽しみにしてるわ。……お父さん、お母さん、心配をかけてごめんなさい。今日は時間がないから、じっくり話すのはまた今度にしてね」
「うむ。どうせ近いうちにそっちに行くだろうしな。その時にしよう」
「そうしましょう。ちょっとだけお別れね、ミア―ネット」
ローグ殿とミニアス殿とは握手を交わし、なんと俺のもとにもいらっしゃった。
「リシャールさん、貴方のおかげでこの子は助かったんですよね? ありがとうございます。この子を、そしてわたしを救ってくださり、感謝しております」
「こちらこそ――いえ、なんでもありません。ありがたく頂戴いたします」
ここで母や父の謝罪をするのは違う。俺はそのお言葉を素直に受けとらせていただき、しっかりと握手を交わさせてもらった。
「リシャールさんとも、是非今度お話しをさせてくださいね」
「喜んで。楽しみにしております」
「……この子のお兄さんが貴方で、本当によかった。本当に、ありがとうございます」
もう一度ぎゅっと、しかしながら柔らかく手を両手で握ってくださったミアーネットさんは、ミネットのもとへと戻った。
「ドタバタしちゃってごめんなさいね。そろそろ行くわ。一旦、バイバイ」
「はいっ! 一旦バイバイですっ! またお会いしましょうっ、お母様!!」
「うん、また会いましょうね。ふふ。終わりよければすべてよし、わたしの人生は大満足の人生でした」
まぶしい。まるで、太陽のような笑顔。
ミア―ネットさんは心からの笑みを浮かべながら透明になってゆき、幸せそうに消えたのだった――天へと昇られたのだった。
柔らかく優しい春の日差しのような雰囲気を持つ、ほんわかとした美しい女性。そんな半透明な人が――ミアーネットさんの霊、魂が現れたのだった。
「殺されてからずっとわたしは、その場所で眠っていたの。真っ暗で冷たくて静かな場所で、ずっとひとりだった」
「「「「…………」」」」
「でもそんな時、ミネット、リシャールさん、お父さん、お母さんの声が、ぼんやりと聞こえてきたの。そしてその声は、どんとん大きくなっていて。冷たかった身体がだんだん温かくなって、だんだん明るくなってきて。気が付いたら、ここに居たの」
そういうこと、でしたか。
よかった。予想が当たって、本当によかった。
「ミネット、リシャールさん、お父さん、お母さん、ありがとう。わたし、昇れるみたい」
ひとりひとりに丁寧にお辞儀をしてくださった、ミア―ネットさん。頭が上がるとふわりと移動をしてミネットの前に立ち、そっと抱き締めた。
「ずっと、こうしたかった。……大きくなったわね。もう話すことはできないと思っていたから……。とっても幸せ」
「わたしも、ですっ。お母様とお会いすることもっ、お話しすることもできないと思っていました! ぬくもりもっ、感じられないと思っていましたっ! 幸せです……!」
ミネットも応じて親子の間で抱擁が交わされ、2人の頬を幸せの涙がつたう。
その姿を見ていたら俺の瞳からも自然と涙が零れ、この場にいる全員が喜びの涙を流した。
「貴方と話したかったことは沢山あるし、もっと触れてもいたい。けれど、続けては居られないみたい」
ミア―ネットさんの身体が、キラキラと輝き出した。
これは……。魂が天に昇る合図なのだろう。
「でも、悲しみはないわ。だって『上』で待つことができて、いずれまた喋ることも触れることもできるんですもの。これからは空の上から、貴方の人生を見守ることができるんですもの。寂しくないし、寂しくないわよね?」
「はいっ! お母様とまた会えますし、見守っていただけるのですから! 寂しくありませんっ!」
一緒に居られた時間は少ないけれど、親子の絆なのだろう。ミア―ネットさんはミネットの思いが分かるようで、ウィンクすると明るい頷きが返って来た。
「その時を、楽しみにしてるわ。……お父さん、お母さん、心配をかけてごめんなさい。今日は時間がないから、じっくり話すのはまた今度にしてね」
「うむ。どうせ近いうちにそっちに行くだろうしな。その時にしよう」
「そうしましょう。ちょっとだけお別れね、ミア―ネット」
ローグ殿とミニアス殿とは握手を交わし、なんと俺のもとにもいらっしゃった。
「リシャールさん、貴方のおかげでこの子は助かったんですよね? ありがとうございます。この子を、そしてわたしを救ってくださり、感謝しております」
「こちらこそ――いえ、なんでもありません。ありがたく頂戴いたします」
ここで母や父の謝罪をするのは違う。俺はそのお言葉を素直に受けとらせていただき、しっかりと握手を交わさせてもらった。
「リシャールさんとも、是非今度お話しをさせてくださいね」
「喜んで。楽しみにしております」
「……この子のお兄さんが貴方で、本当によかった。本当に、ありがとうございます」
もう一度ぎゅっと、しかしながら柔らかく手を両手で握ってくださったミアーネットさんは、ミネットのもとへと戻った。
「ドタバタしちゃってごめんなさいね。そろそろ行くわ。一旦、バイバイ」
「はいっ! 一旦バイバイですっ! またお会いしましょうっ、お母様!!」
「うん、また会いましょうね。ふふ。終わりよければすべてよし、わたしの人生は大満足の人生でした」
まぶしい。まるで、太陽のような笑顔。
ミア―ネットさんは心からの笑みを浮かべながら透明になってゆき、幸せそうに消えたのだった――天へと昇られたのだった。
36
あなたにおすすめの小説
犬猿の仲だと思っていたのに、なぜか幼なじみの公爵令息が世話を焼いてくる
風見ゆうみ
恋愛
元伯爵令嬢だった私、ビアラ・ミゼライトにはホーリル・フェルナンディという子爵令息の婚約者がいる。とある事情で両親を亡くした私は、フェルナンディ子爵家から支援を受けて、貴族が多く通う学園ではあるけれど、成績次第では平民でも通える学園に通っていた。
ある日、ホーリルから呼び出された私は、彼から婚約を破棄し学費や寮費援助を打ち切ると告げられてしまう。
しかも、彼の新しいお相手は私の腐れ縁の相手、ディラン・ミーグス公爵令息の婚約者だった。
その場に居たミーグスと私は婚約破棄を了承する。でも、馬鹿な元婚約者たちが相手では、それだけで終わるはずもなかった――
※完結保証です。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法も存在します。
※誤字脱字など見直して気をつけているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです
【完結】さっさと婚約破棄が皆のお望みです
井名可乃子
恋愛
年頃のセレーナに降って湧いた縁談を周囲は歓迎しなかった。引く手あまたの伯爵がなぜ見ず知らずの子爵令嬢に求婚の手紙を書いたのか。幼い頃から番犬のように傍を離れない年上の幼馴染アンドリューがこの結婚を認めるはずもなかった。
「婚約破棄されてこい」
セレーナは未来の夫を試す為に自らフラれにいくという、アンドリューの世にも馬鹿げた作戦を遂行することとなる。子爵家の一人娘なんだからと屁理屈を並べながら伯爵に敵意丸出しの幼馴染に、呆れながらも内心ほっとしたのがセレーナの本音だった。
伯爵家との婚約発表の日を迎えても二人の関係は変わらないはずだった。アンドリューに寄り添う知らない女性を見るまでは……。
犠牲になるのは、妹である私
木山楽斗
恋愛
男爵家の令嬢であるソフィーナは、父親から冷遇されていた。彼女は溺愛されている双子の姉の陰とみなされており、個人として認められていなかったのだ。
ソフィーナはある時、姉に代わって悪名高きボルガン公爵の元に嫁ぐことになった。
好色家として有名な彼は、離婚を繰り返しており隠し子もいる。そんな彼の元に嫁げば幸せなどないとわかっていつつも、彼女は家のために犠牲になると決めたのだった。
婚約者となってボルガン公爵家の屋敷に赴いたソフィーナだったが、彼女はそこでとある騒ぎに巻き込まれることになった。
ボルガン公爵の子供達は、彼の横暴な振る舞いに耐えかねて、公爵家の改革に取り掛かっていたのである。
結果として、ボルガン公爵はその力を失った。ソフィーナは彼に弄ばれることなく、彼の子供達と良好な関係を築くことに成功したのである。
さらにソフィーナの実家でも、同じように改革が起こっていた。彼女を冷遇する父親が、その力を失っていたのである。
好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
蝋燭
悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。
それは、祝福の鐘だ。
今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。
カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。
彼女は勇者の恋人だった。
あの日、勇者が記憶を失うまでは……
王子様の花嫁選抜
ひづき
恋愛
王妃の意向で花嫁の選抜会を開くことになった。
花嫁候補の一人に選ばれた他国の王女フェリシアは、王太子を見て一年前の邂逅を思い出す。
花嫁に選ばれたくないな、と、フェリシアは思った。
アンジェリーヌは一人じゃない
れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。
メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。
そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。
まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。
実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。
それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。
新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。
アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。
果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。
*タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*)
(なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる