見える私と聞こえる転校生

第２話 幽霊！？ 真鈴視点（１）

「………………」
「………………」
「………………」

　周りを見たら、みんなポカンと口を開けていた。
　私も、もちろんおんなじ。こんなことを言い出す人がいるなんて思わなかった。

「僕はふざけてはいません、本気なんです。この中に、幽霊が見える人はいませんか？」

　彼――水前寺くんがふざけていないのは、雰囲気とかで分かる。だからこそクラスのみんなは唖然となっていて、『おかしな人』だと思いはじめてしまった。

（（そりゃあ、そうなっちゃうよね））

　そういうことって結構デリケートで、真面目に語り出したら異常に感じる人が殆ど。だから、『霊感があるよ』なんて言っちゃうと――

『……なに言ってるの、真鈴ちゃん。きもちわるい……』
『そんな人、いるはずないよ……。ごめん、そのお話聞きたくない』

　――こんな風になっちゃう。
　小学３年生の時に仲の良い友達が２人いて、親友に隠し事はしたくなかったから勇気を出して言ってみたんだよね。そしたら２人はあっという間に私から距離を取るようになってしまって、しかもそのあと学校中に言いふらされちゃって。偶然お父さんの転勤がなかったら、地獄みたいな学校生活になっていたと思う。

「いらっしゃいませんかっ？」
（（ここにいるよ。いるけど、ごめん。手は挙げないよ））

　だってそんなことしたら、わたしも『おかしな人』になっちゃうんだもん。卒業まで平和な中学生活を送りたいから、危険なことには関わらない。

「見えている人が居たら、どうしてもお話ししたいことがあるんです。いらっしゃいませんか？」
「い、いないみたいね。あらっ！　もうこんな時間になってしまったわっ。さ水前寺君、席についてください」
（（先生、ナイス。……みんな、転校生をヘンな目で見てる。あとでコッソリ忠告でもしときますか））

　なにか理由があるのかもしれないけど、これ以上続けてたら誰も近寄ってこなくなる。１回しかない中学生の３年間が最悪になっちゃわないように、『もう言わない方がいいよ』と伝えておこう。

（（次の休み時間――は移動教室で、次は体育で、その次は小テストの勉強をギリギリまでしたいから……。声をかけるのは、お昼休みだね））

　できたらすぐしたいけど、しょうがない。わたしはお昼休みになるまで待って、

（（お節介を焼きに行きますか））

　お弁当を食べ終えると、席を立ったのでした。