婚約破棄ですか? ありがとうございます!

柚木ゆず

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第15話(2)

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「お待たせいたしました。本日のドルチェ、ペッシェ・メルバでございます」

 桃のコンポートにバニラのアイスを重ね、ラズベリーソースを添えたお洒落な一品。目の前に置かれたデザートを見ながら、あたしは心の中で何度も首を傾げていた。

((……おかしい……。ガーネ様は、全然アルフレッドの話をしない……))

 アミューズの時もスープの時も、肉料理を食べている時も、一度もなし。ずーっと上機嫌で、発したのは『ここのお店は一番のお気に入りで、何度も足を運んでいますの』や『あの時は失礼しました』といった言葉だけなんだよね。
 これ……。どうなってるの……?

「まあ美味しいっ。サートルさんも、早く召し上がってみてください」
「は、はい……。そう、します……。いただき、ます……」

 戸惑いながら口へと運び、うん。ちっとも落ち着かなくって、ちゃんと味を感じられない。
 甘くて冷たくて、程よく酸味がある。抱いた感想は以上で、『締め』となるコーヒーと焼き菓子も、ほろ苦いや甘い、このくらいしか感じなかった。

「いつも通り、パーフェクトでした。サートルさんは如何でしたか?」
「え、ええ、とても美味しかったです。…………あ、あの。アルフレッドに関するお話は……。どうなっているのでしょうか……?」

 一向に始まる気配がなく、こちらから話題を出してみた。
 食事が終わったら、さっきの待ち合わせ場所に戻って解散となっている。まさかそんな大事な話を、歩きながら行うの……?

「あっ、うっかりしてました。そうでしたね。今夜の来店の目的は、アルフレッド様について一対一で話す場を設ける為。そういう事にしていた・・・・・・・・・・のだと、つい忘れていましたわぁ」

 にやり。まるで悪魔のような笑みが生まれて、あっという間に背筋が凍る。
 そういう事にしていた。それって……っ。

「そう、ぜーんぶ嘘。ここに来た理由は、もっとも~っと楽しいことをするためっ。リル・サートル、お前を殺すためよ!!」

 その大声を合図に周りのお客さん達が一斉に立ち上がり、髭を蓄えた小太りの中年男性が――店のオーナーがやって来て、彼女にフォークを手渡した。
 叫んでいる相手に凶器を渡して、18人いたお客さん達はこの席をグルっと囲んでいる――あたしが、逃げられないようにしている……。

 嘘みたいけど、嘘じゃない。

 この建物にいる、全員が……。この人の、協力者なんだ……。

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