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プロローグ アンブル・ルーマック視点
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「……もう、一年になるんですね。あっという間に感じます」
カーンカーンと、穏やかに鳴り響く鐘の音色。午後の5時を知らせる音を聴いていると、自然とそんな言葉が零れました。
「去年のちょうど今、アンブルちゃんがウチに来てくれたんだよね。あの時は、まさかこんな風になるとは夢にも思わなかったよ」
「聖女と呼ばれたわたくしが隣国『ラズロール』に居て、ドファールくんと共に農作業に精を出している。1年前のわたくしに伝えたら、ビックリするでしょうね」
1年前まで――15歳から18歳の頃まで、わたくしは祖国『オサゾック』で聖女を務めていました。
ですが昨年の7月13日に地球と呼ばれる異世界から女性が突然現れ、その方がより高い適性を持っていると判明したことで状況が一変。わたくしはお払い箱になってしまい、聖女を剥奪されてしまったのでした。
『お前はもう聖女じゃないだろう。ここは、ただの男爵令嬢が居ていい場所じゃないんだ。今すぐ消えろ』
『急いで新聖女様をお迎えする準備をせねばな。……いつまでここにいるのだ? ザルースの声が聞こえなかったのか。早々に立ち去れ』
『お前がもっと高い適性を持っていれば……!』
『わが家(いえ)の売りがなくなったじゃないのよ! この役立たず!!』
『本当に、使えないお姉様……! ゴミ以下ですわね……!!』
それからの手のひら返しは、もう笑ってしまうほどでした。
わたくしが元々、歴史の浅い男爵家の娘だということもあったのでしょう。王太子殿下や陛下など周りに居た人達は全員が急に冷たくなって神殿を追い出され、実家に戻ると今度は両親と妹から罵倒を浴びせられてお屋敷を追い出されてしまったのでした。
『……一瞬で、全てがなくなってしまいましたね。これからどうしましょう……』
そんなわたくしを救ってくれたのが、今お隣に居るドファールくん。
彼は、男爵令嬢時代に知り合ったお友達――隣国ラズロールに属するルーマック男爵家の嫡男で、聖女になったあとも定期的に会いに来てくれていました。ちょうどそのタイミングが一致したことでドファールくんはわたくしの状況を把握できて、
『ウチで一緒に暮らそうよ。僕は大歓迎だし、父上母上もアンブルちゃんなら快諾するからさ!』
『……よろしい、のですか……?』
『困ってる友達を放ってなんておけないよ。さ、乗って!』
笑顔で手を差し伸べてくれて、新しい居場所をくれたのでした。
そうしてわたくしはルーマック男爵家の一員となり、温かな人達に囲まれながら第2の人生を謳歌させてもらっているのです。
「でも、同時に喜ぶでしょうね。ドファールくんと一緒に畑に立つ、はわたくしの夢の一つでしたから」
かつての実家もルーマック家も『農業』に関する功績で爵位を得た過去のある家で、その影響でどちらも幼い頃から農業の勉強をしてきました。そんなわたくし達は二国間の農業交流会で出会って意気投合し、互いに相手の農業に対する考えや姿勢に感銘を受け、いつか協力して農業に関する『なにか』を行いたいと願っていたんです。
とはいえ他国の貴族と共同で行うことは難しく、更にはわたくしは聖女に選ばれたことで叶わないと諦めていたのですが――。聖女を剥奪されルーマック家の一員となったことで、実現したのです。
「一年前の僕に伝えても、大喜びすると思うよ。なにせ、敬意を抱いてる人と毎日議論を交わせるんだから――……。どういう、ことだ……?」
「? ドファールくん? どうしたので――……。そういうことですか」
突然わたくしからわたくしの背後へと視線が移動をして、穏やかだった瞳が鋭くなる。彼の目線を追って振り返ってみると、その理由が理解できました。
なぜ、こんなことになったのかと言うと――
「アンブル、久しぶりだね。今日は大事な話をしに来たんだ」
ザルース王太子殿下が――わたくしを追い出した人達の一人が、停車した豪奢な馬車から降りてきたからです。
カーンカーンと、穏やかに鳴り響く鐘の音色。午後の5時を知らせる音を聴いていると、自然とそんな言葉が零れました。
「去年のちょうど今、アンブルちゃんがウチに来てくれたんだよね。あの時は、まさかこんな風になるとは夢にも思わなかったよ」
「聖女と呼ばれたわたくしが隣国『ラズロール』に居て、ドファールくんと共に農作業に精を出している。1年前のわたくしに伝えたら、ビックリするでしょうね」
1年前まで――15歳から18歳の頃まで、わたくしは祖国『オサゾック』で聖女を務めていました。
ですが昨年の7月13日に地球と呼ばれる異世界から女性が突然現れ、その方がより高い適性を持っていると判明したことで状況が一変。わたくしはお払い箱になってしまい、聖女を剥奪されてしまったのでした。
『お前はもう聖女じゃないだろう。ここは、ただの男爵令嬢が居ていい場所じゃないんだ。今すぐ消えろ』
『急いで新聖女様をお迎えする準備をせねばな。……いつまでここにいるのだ? ザルースの声が聞こえなかったのか。早々に立ち去れ』
『お前がもっと高い適性を持っていれば……!』
『わが家(いえ)の売りがなくなったじゃないのよ! この役立たず!!』
『本当に、使えないお姉様……! ゴミ以下ですわね……!!』
それからの手のひら返しは、もう笑ってしまうほどでした。
わたくしが元々、歴史の浅い男爵家の娘だということもあったのでしょう。王太子殿下や陛下など周りに居た人達は全員が急に冷たくなって神殿を追い出され、実家に戻ると今度は両親と妹から罵倒を浴びせられてお屋敷を追い出されてしまったのでした。
『……一瞬で、全てがなくなってしまいましたね。これからどうしましょう……』
そんなわたくしを救ってくれたのが、今お隣に居るドファールくん。
彼は、男爵令嬢時代に知り合ったお友達――隣国ラズロールに属するルーマック男爵家の嫡男で、聖女になったあとも定期的に会いに来てくれていました。ちょうどそのタイミングが一致したことでドファールくんはわたくしの状況を把握できて、
『ウチで一緒に暮らそうよ。僕は大歓迎だし、父上母上もアンブルちゃんなら快諾するからさ!』
『……よろしい、のですか……?』
『困ってる友達を放ってなんておけないよ。さ、乗って!』
笑顔で手を差し伸べてくれて、新しい居場所をくれたのでした。
そうしてわたくしはルーマック男爵家の一員となり、温かな人達に囲まれながら第2の人生を謳歌させてもらっているのです。
「でも、同時に喜ぶでしょうね。ドファールくんと一緒に畑に立つ、はわたくしの夢の一つでしたから」
かつての実家もルーマック家も『農業』に関する功績で爵位を得た過去のある家で、その影響でどちらも幼い頃から農業の勉強をしてきました。そんなわたくし達は二国間の農業交流会で出会って意気投合し、互いに相手の農業に対する考えや姿勢に感銘を受け、いつか協力して農業に関する『なにか』を行いたいと願っていたんです。
とはいえ他国の貴族と共同で行うことは難しく、更にはわたくしは聖女に選ばれたことで叶わないと諦めていたのですが――。聖女を剥奪されルーマック家の一員となったことで、実現したのです。
「一年前の僕に伝えても、大喜びすると思うよ。なにせ、敬意を抱いてる人と毎日議論を交わせるんだから――……。どういう、ことだ……?」
「? ドファールくん? どうしたので――……。そういうことですか」
突然わたくしからわたくしの背後へと視線が移動をして、穏やかだった瞳が鋭くなる。彼の目線を追って振り返ってみると、その理由が理解できました。
なぜ、こんなことになったのかと言うと――
「アンブル、久しぶりだね。今日は大事な話をしに来たんだ」
ザルース王太子殿下が――わたくしを追い出した人達の一人が、停車した豪奢な馬車から降りてきたからです。
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