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第1話 来訪 アンブル視点(2)
「面積は――数字で言っても分かりにくいかな。君も知っている筆頭公爵家の屋敷レベルのお屋敷と、『特別名誉顧問』という地位を創設してあるんだ」
二階建てで構成された、大きな庭とプールと使用人30人つきの大豪邸。
王族にも直接意見できる、大公クラスのポジション。
お詫びとして、それらを用意してあるそうです。
「その他にも、君の希望があれば出来る限り実現させてもらいたいと思っているんだ。……アンブル、あの時は本当に申し訳ありませんでした。戻って来てくれませんか?」
みたび頭を、深く深く下げるザルース殿下。そんな彼に向って、わたくしは――
「お断りいたします」
――即座に、かぶりを振りました。
「そ、そんな……。どうしてなんだい……?」
「今が充実しているから。今以上に、幸せな日々なんてないと思っているからでございます」
ドファールくん、ルーゴお父様、メリアお母様。優しく温かい方々に囲まれて、そんな人達と同じ方向を目指して走り続けて行ける。
これに勝る幸せなど、あるはずがありません。
「え……? 大きくて豪華なお屋敷と、素晴らしいポジジョンがあるんだよ……? それ以上の幸せなんて、ないよ……?」
「いいえ、ございます。わたくし、それらには興味がありません。まったく魅力を感じてはおりませんよ」
「……う、うそ、だよね? 冗談を言っているんだよね……?」
「本心です。……殿下。殿下や皆様がなさったことは、許します。お気になさらずお引き取りください」
過去の出来事はもう、水に流します。
貴方がたからいただくものなど、何一つありません。
「殿下、まだまだやるべきことがございます。失礼致します」
「まっ、待ってくれ!! 何かしないとこの気持ちが収まらないんだ!! お詫びをさせておくれ! させてください!!」
「先ほど申し上げましたように、結構でございます」
「頼むよ!! この通りだ!! 僕達に機会をおくれよ! オサゾックに戻って来てください!!」
「…………はっきり言わせていただきますが、非常に迷惑でございます。おかえりいただけないようでしたら、こちらが去らせていただきます。ドファールくん、まいりましょう」
「そうだね。僕達の屋敷に戻ろう」
このまま続けても平行線をたどるだけでしょうし、仕方がありません。殿下はなおも食い下がりますが揃って一礼を行い、ルーマック家所有の馬車に乗り込んだのでした。
そうしてわたくし達は、殿下から離れてゆき――
「……アンブルちゃん」
「ええ。妙な臭いがしますね」
――対面にあるドファールくんの神妙な面持ちに、頷きを返したのでした。
二階建てで構成された、大きな庭とプールと使用人30人つきの大豪邸。
王族にも直接意見できる、大公クラスのポジション。
お詫びとして、それらを用意してあるそうです。
「その他にも、君の希望があれば出来る限り実現させてもらいたいと思っているんだ。……アンブル、あの時は本当に申し訳ありませんでした。戻って来てくれませんか?」
みたび頭を、深く深く下げるザルース殿下。そんな彼に向って、わたくしは――
「お断りいたします」
――即座に、かぶりを振りました。
「そ、そんな……。どうしてなんだい……?」
「今が充実しているから。今以上に、幸せな日々なんてないと思っているからでございます」
ドファールくん、ルーゴお父様、メリアお母様。優しく温かい方々に囲まれて、そんな人達と同じ方向を目指して走り続けて行ける。
これに勝る幸せなど、あるはずがありません。
「え……? 大きくて豪華なお屋敷と、素晴らしいポジジョンがあるんだよ……? それ以上の幸せなんて、ないよ……?」
「いいえ、ございます。わたくし、それらには興味がありません。まったく魅力を感じてはおりませんよ」
「……う、うそ、だよね? 冗談を言っているんだよね……?」
「本心です。……殿下。殿下や皆様がなさったことは、許します。お気になさらずお引き取りください」
過去の出来事はもう、水に流します。
貴方がたからいただくものなど、何一つありません。
「殿下、まだまだやるべきことがございます。失礼致します」
「まっ、待ってくれ!! 何かしないとこの気持ちが収まらないんだ!! お詫びをさせておくれ! させてください!!」
「先ほど申し上げましたように、結構でございます」
「頼むよ!! この通りだ!! 僕達に機会をおくれよ! オサゾックに戻って来てください!!」
「…………はっきり言わせていただきますが、非常に迷惑でございます。おかえりいただけないようでしたら、こちらが去らせていただきます。ドファールくん、まいりましょう」
「そうだね。僕達の屋敷に戻ろう」
このまま続けても平行線をたどるだけでしょうし、仕方がありません。殿下はなおも食い下がりますが揃って一礼を行い、ルーマック家所有の馬車に乗り込んだのでした。
そうしてわたくし達は、殿下から離れてゆき――
「……アンブルちゃん」
「ええ。妙な臭いがしますね」
――対面にあるドファールくんの神妙な面持ちに、頷きを返したのでした。
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