わたくしを追い出した王太子殿下が、一年後に謝罪に来ました

柚木ゆず

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第3話 予想外は突然に 俯瞰視点

「殿下ぁ~! 新しい宝石が欲しくなっちゃいました。ダメ、ですかぁ?」
「いいよ、買ってあげよう。明日には宝石商を呼ぼうじゃないか」
「わぁっ、ありがとうございますっ。大好きです~っ。殿下カッコいいっ!」
「はっはっは! そうかそうか! はっはっはっはっは!」

 18歳には見えない幼げな顔と、ソレに似合わないスタイルの良い肢体。甘え上手な性格。
 それらによってザルースは美兎をいたく気に入り、近々婚約を結ぶほどの関係となっていました。そのため今日も今日とて最愛の人のワガママを聞き入れ、楽しい時間を過ごしていました。

「そういえば、もうすぐ君と出会って1年になるんだな。よし! その記念の意味も込めて、今まで以上に豪華なものをプレゼントするよ」
「ホントですかっ!? うわぁ~。ドキドキしちゃいます~!」
「楽しみにしておくといい。他にも、記念日に向けて色々としようじゃないか。当日は、ビックリの連続になるだろ――なわ!?」

 だらしなく緩んでいたザルースの目は、一変して大きく見開かれることとなりました。なぜならば、

「? どうしたんですかぁ? わたしに何か――きゃあああ!? からだっ、わたしの身体がっ!?」

 美兎の肉体が、透明になり始めたからです。

「なっ、なんだ!? どうなってるんだ!? 聖女の力が関係しているのか!?」
「ちっ、ちが! 多分違う!! これえっ、不思議な穴に触った時と同じ!! まさかまた転移しちゃうの!?」

 その予想は、正解。美兎の身体は、地球――日本の埼玉に戻ろうとしていたのです。

「なんだって!? とっ、とまれ! とまれ!!」
「いやあ!! いやああ!! わたしはずっとここに居たい!! あんなつまらない毎日になんて戻りたくな」
「……あ、ぁぁ……。ぁぁぁぁぁ……」

 美兎もザルースも懸命に抗おうとしたものの、意味はない。やがて美兎は消えてしまい、ザルースはその場にへたり込みました。

「……俺の天使が、消えてしまった……。いなくなってしまった……。最悪だ……」

 大粒の涙を流しながら、天を仰ぐ。
 喜びが一転して絶望に襲われるザルースでしたが、残念ながら落ち込んでいる暇などありませんでした。このままだと、大地の浄化ができなくなってしまうからです。

「ザルースっ、話は聞いたぞ! 泣いている場合ではない! 早くアンブルを連れ戻さねば!!」

 美兎の次に適応能力が高いのはアンブルで、アンブルは生きているため、浄化に必要な『浄化の杖』を扱えるのは彼女だけ。アンブルを再び聖女に据えなければ、オサゾックは滅んでしまうのです。

「……浄化は、3週までなら耐えられる。それまでに探し出せたら、間に合うはずだ」
「それはそうですが、父上……。アンブルは応じると思いますか……?」
「……邪険にした我々の退陣、それに近いものを条件にしてくるだろうな……」
「それは困ります!!」
「当然だ。私も同じだ」

 選民意識が非常に強い、自己中心的、常に損得勘定で動く、自分達より目立つことが許せない。それが、王族と上層部の人々の人間性です。

 そうアンブルが言っていたように、王族には『国民のために』という思いは微塵もありませんでした。
 そのためアンブルの捜索を命じながら、王族たちは相談を行い――

「……まずは反省したと伝え、お詫びを提示して連れ戻して……。ギリギリで美兎が居なくなったと伝えて、浄化させる……。ええ、いけると思いますよ。これでいきましょう」

 ――王太子ザルース一番アンブルに冷たく当たった人間が代表となって赴き、あの接触が行われていたのでした。

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