1 / 5
プロローグ ミファレア・リールゾンド視点(1)
「ミファレア様、改めてお誕生日おめでとう。これが本物のプレゼントだよ」
「お手数をおかけしてしまい、申し訳ございません。ありがたく頂戴します」
リールゾンド子爵邸内にあるサロンの中。婚約者であるガレイアル子爵家の嫡男ルーカッソ様から蝶を模したネックレスをいただき、わたくしは感謝をしながらルーカッソ様にお返ししました。
「喜んでもらえて、何よりです。こちらは、結婚するまで預かっておくね」
人目がない場所でプレゼントをこっそりいただかないといけなくて、せっかくプレゼントをいただいたのに即座にお返ししないといけない。その理由は、18歳実姉エミーリラお姉様にありました。
『リーナ様がつけているイヤリング、素敵でしたわ。……欲しい』
『マリア様の胸元で輝いているネックレス、素敵でしたわ。……欲しい』
エミーリラお姉様は昔から『他者』が身に着けている物が良く見えてしまい、自分のものにしたくなる性質をお持ちでした。
しかしながら当然、他の方の所有物が手に入るはずがありません。そこで――
『ミファレア、そのネックレスなかなか素敵ね。……リーナ様のものと比べると80点くらいだけど、前に私がいただいた物よりずっと素敵なんだもの。私に渡しなさい』
わたくしの所有物で、妥協しようとする。
今は亡きおじい様やおばあ様からのプレゼント、ご友人からのプレゼント、バイオリンや絵画の先生からのプレゼント、などなど。良いと感じたら即座に、なんの罪悪感もいだくことなく、手を差し出してくるのです。
しかも――
『お姉様、こちらは先生がくださったものです。お渡しできません……』
『ミファレア、そんなことは関係ない。エミーリラに渡しなさい』
『それに、エミーリラの方が似合っているわ。より良い人に身に着けてもらった方が、先生もアクセサリーも喜ぶわよ』
――お父様もお母様も、初子であるお姉様が可愛くて仕方がない。どんな時でもお姉様の味方となり、どんなワガママでも叶えてあげてしまうのです。
そのためこれまで数えきれないほど姉様に奪われてしまい、ルーカッソ様から一昨日いただいた偽のお誕生日プレゼントも、すでにお姉様のものとなっているのでした。
「よろしくお願い致します。……重ね重ね、申し訳ございません」
「ミファレア様が謝罪されることではないよ。あと7か月したらエミーリラ様は嫁がれるし、およそ1年後にはこのお屋敷から出られる。あと少しの辛抱だ」
「そうですね。1年後が楽しみです」
お姉様が戻って来て奪われる心配も、おかしな両親に悩まさせる心配もなくなる。それになにより、大好きな方と結婚できる。
光り輝く未来を想像しながら、わたくしは頷きをお返ししました。
「もちろん、それまでも苦しいことばかりじゃない。できる限り楽しい時間をお届けするから、楽しみにしていてね」
「はい、そうさせていただきます。……ルーカッソ様。わたくしは本当に、貴方様に救われていて――……? 急に、騒がしくなりましたね……?」
「そう、だね」
扉の向こう側から、お父様とお母様の大声や大きな足音が聞こえてくるようになりました。
お父様は五月蠅いことを特に嫌うため、平常時は絶対にこのようになりません。何か、あったみたいです。
「お手数をおかけしてしまい、申し訳ございません。ありがたく頂戴します」
リールゾンド子爵邸内にあるサロンの中。婚約者であるガレイアル子爵家の嫡男ルーカッソ様から蝶を模したネックレスをいただき、わたくしは感謝をしながらルーカッソ様にお返ししました。
「喜んでもらえて、何よりです。こちらは、結婚するまで預かっておくね」
人目がない場所でプレゼントをこっそりいただかないといけなくて、せっかくプレゼントをいただいたのに即座にお返ししないといけない。その理由は、18歳実姉エミーリラお姉様にありました。
『リーナ様がつけているイヤリング、素敵でしたわ。……欲しい』
『マリア様の胸元で輝いているネックレス、素敵でしたわ。……欲しい』
エミーリラお姉様は昔から『他者』が身に着けている物が良く見えてしまい、自分のものにしたくなる性質をお持ちでした。
しかしながら当然、他の方の所有物が手に入るはずがありません。そこで――
『ミファレア、そのネックレスなかなか素敵ね。……リーナ様のものと比べると80点くらいだけど、前に私がいただいた物よりずっと素敵なんだもの。私に渡しなさい』
わたくしの所有物で、妥協しようとする。
今は亡きおじい様やおばあ様からのプレゼント、ご友人からのプレゼント、バイオリンや絵画の先生からのプレゼント、などなど。良いと感じたら即座に、なんの罪悪感もいだくことなく、手を差し出してくるのです。
しかも――
『お姉様、こちらは先生がくださったものです。お渡しできません……』
『ミファレア、そんなことは関係ない。エミーリラに渡しなさい』
『それに、エミーリラの方が似合っているわ。より良い人に身に着けてもらった方が、先生もアクセサリーも喜ぶわよ』
――お父様もお母様も、初子であるお姉様が可愛くて仕方がない。どんな時でもお姉様の味方となり、どんなワガママでも叶えてあげてしまうのです。
そのためこれまで数えきれないほど姉様に奪われてしまい、ルーカッソ様から一昨日いただいた偽のお誕生日プレゼントも、すでにお姉様のものとなっているのでした。
「よろしくお願い致します。……重ね重ね、申し訳ございません」
「ミファレア様が謝罪されることではないよ。あと7か月したらエミーリラ様は嫁がれるし、およそ1年後にはこのお屋敷から出られる。あと少しの辛抱だ」
「そうですね。1年後が楽しみです」
お姉様が戻って来て奪われる心配も、おかしな両親に悩まさせる心配もなくなる。それになにより、大好きな方と結婚できる。
光り輝く未来を想像しながら、わたくしは頷きをお返ししました。
「もちろん、それまでも苦しいことばかりじゃない。できる限り楽しい時間をお届けするから、楽しみにしていてね」
「はい、そうさせていただきます。……ルーカッソ様。わたくしは本当に、貴方様に救われていて――……? 急に、騒がしくなりましたね……?」
「そう、だね」
扉の向こう側から、お父様とお母様の大声や大きな足音が聞こえてくるようになりました。
お父様は五月蠅いことを特に嫌うため、平常時は絶対にこのようになりません。何か、あったみたいです。
あなたにおすすめの小説
元の世界に帰らせていただきます!
にゃみ3
恋愛
淡い夢物語のように、望む全てが叶うとは限らない。
そう分かっていたとしても、私は敵ばかりの世界で妬まれ、嫌われ、疎まれることに、耐えられなかったの。
「ごめんね、バイバイ……」
限界なので、元いた世界に帰らせてもらいます。
・・・
数話で完結します、ハピエン!
「幸せになりなさい」と言われたので、そうしました
はな
恋愛
「幸せになりなさい」と言われて育った令嬢は、
その通りに生きてきただけだった。
王子の婚約者として政務を完璧にこなしていたリリアーヌ。
だが婚約は、義妹のためにあっさりと解消される。
――それでも彼女は困らなかった。
「本が読めるので、幸せですから」
彼女がいなくなった王宮は崩れ始め、周囲は初めてその存在の大きさに気づく。
けれど彼女はもう戻らない。
“従順だったはずの令嬢”が選んだ、本当の幸せとは――
*10時と20時配信・・義妹、王子、義母、父視点も更新していきます。
*一部A Iの表現もあり
共に過ごした時間は愛にはならなかった、ただそれだけ
木蓮
恋愛
セデルにはこれまでの記憶がない。
婚約者に再び恋をしたが彼は双子の妹に夢中で、セデルを「これまでの君とは違う」と遠ざける。
記憶を取り戻した時。セデルはかつての自分の想いを知り、婚約者に別れを告げた。
婚約者の母に十年虐げられた私、結婚直前で破談にして冷酷公爵に嫁ぎます〜今さら後悔されても遅いです〜
まさき
恋愛
侯爵令嬢レイナは、幼い頃からの婚約を守るため、十年ものあいだ婚約者の母からの侮辱に耐え続けてきた。
だが結婚直前――婚約者は一度も彼女を庇わなかった。
「もう十分です」
そう言い残し、レイナは婚約を破棄。
以前から縁談のあった“冷酷公爵”へと嫁ぐことを決める。
感情を見せないはずの公爵は、誰よりも静かに彼女の尊厳を守る男だった。
一方、失って初めて価値に気づいた元婚約者は後悔するが――
その頃にはもう、彼女の居場所は完全に変わっていた。
ようやく自由にしてくださって感謝いたします
一ノ瀬和葉
恋愛
華やかな舞踏会の夜、突然告げられた婚約破棄。
誰もが涙と屈辱を予想する中、令嬢の唇からこぼれたのは――思いがけない一言だった。
その瞬間から、運命は静かに、しかし決定的に動き出す。
※ご都合です、小説家になろう様でも投稿しています。
だって悪女ですもの。
とうこ
恋愛
初恋を諦め、十六歳の若さで侯爵の後妻となったルイーズ。
幼馴染にはきつい言葉を投げつけられ、かれを好きな少女たちからは悪女と噂される。
だが四年後、ルイーズの里帰りと共に訪れる大きな転機。
彼女の選択は。
小説家になろう様にも掲載予定です。