悪役令嬢だったわたしは

柚木ゆず

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第9話 実行 俯瞰視点(3)

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「ジョゼット様とルルトス様にも、お礼をお伝えしないといけませんね」

 たっぷりと抱き合って、お互い嬉し涙を拭ったあと。アリシアの瞳に、改めて感謝の意思が浮かびました。

「ご協力してくださっているということは、ご報告もありますよね? その際に、私も御一緒してもよろしいでしょうか~?」
「もちろんでございますっ。ジョゼット様もルルトス様も、喜ばれますよっ」
「よかったです。ご報告は、いつになりますか~?」
「このあとすぐです。ジョゼット様もルルトス様も、お屋敷の外で待機してくださっているんですよ」

 失敗したら、すぐ別の作戦を練らないといけない――。万が一を考慮して、ふたりは即座に動けるような態勢を取っていました。

「アリシア様解放計画が終わり次第、お二人がいらっしゃる馬車に戻って状況をお伝えするお約束になっているんです。ジョゼット様もルルトス様も、お近くで成功とアリシア様の安全を願ってくださっていたんですよ」
「そうだったのですね~! わざわざお越しいただいていただなんて~。精一杯をお礼をさせていただきましょう」

 お時間があればお屋敷にご招待しましょう~。もし来ていただけたなら、ディナーを召し上がっていただきたいですね~。ちょうど珍しいお野菜があったんですよね~。
 アリシアは声を弾ませながら恩返し計画を口にしていき、「ぁ」っと小さな声を出しながら両手で自分の口を押さえました。

「ついひとりでお喋りをしてしまいました~。ジョゼット様達も心配してくださっているでしょうし、急がないといけませんね」
「わたくしも同様の喜びを抱いておりまして、そのお気持ち分かります。それではご案内をさせていただきますね」
「はい~。よろしくお願い致します」

 ふたりは満面の笑みを浮かべながら応接室をあとにして、廊下を進み――


「あ、いけない。忘れ物をしてしまいました。すぐ戻りますね~」
 ――アリシアのみ途中で引き返し、パタパタと小走りで戻って応接室に入りました。そうして彼女は、ゆっくりと部屋の扉を閉め――


「……ようやく理解したわ。そういうことだったのね」


 ――その瞬間笑顔が跡形もなく消え去り、優しげな印象を受ける口から大きな舌打ちが出たのでした。





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